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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
205/621

episode 205 「決戦の前」

組織と帝国軍が死線を繰り広げている島まではそう遠くはない 。今日中には着きそうだ。スパーダはすっかり機嫌を直し、むしろ彼らエージェントたちと一緒の船に乗っている事に興奮しっぱなしだった。中でもジャックには非常になついていた。


「ジャック様! 俺にも銃の扱い方を教えて下さいよ!」


スパーダは極度の先端恐怖症で、剣を突きつけられると動きが止まってしまう。自分で扱うことも出来ないので、普段は拳で戦っていた。以前は銃に手を出したこともあったが、あまりの下手さに断念していた。


そんなスパーダにとって、銃の扱いに長けたゼロやジャックは憧れの的だった。


「気持ちはわかるけどよ、そんな付け焼き刃じゃ、かえって危険だぜ?」


若干めんどくさいジャックは、それっぽい事を言ってスパーダを拒絶する。


「それもそうかもしれませんが……ゼロ様!」


ジャックから断られたスパーダ。めげずに今度はゼロに声をかける。


「……様はやめろと言っている。俺は人に教える気はない。ジャックの言うとおり自分に合った戦い方をしろ」

「はい! 了解です。ゼロ様、ジャック様!」


二人から言われたスパーダは素直に言うことを聞く。



イバル、バルト、レミィの三人はワルターの軍服を見つめていた。


「なんだい? 俺に何か用でもあるのかい?」


それに気がついたワルターが三人に尋ねる。どうやらあまりいい感情は向けられてはいないようだ。


「その服、あなた軍人よね? 本当に組織の人間なのかしら?」


彼女ら訓練生にとってワルターの身に付けている軍服はまさに悪魔の衣装だった。


「ああ。そうさ。もっとも今は裏切り者だけどね。君たちはこの服に見覚えがあるのかい?」


ワルターの言葉に、忘れたはずのティーチの顔が浮かぶ三人。


「ええ、嫌というほど」


うつむくレミィに何かを察したのか、すぐさま謝罪するワルター。


「すまなかったね。仲間が君たちに迷惑をかけたようだ。でもわかってほしい、彼らには国を守るという仕事があるんだ」

「ええ、そうね。わかっているわ」


そう答えるレミィだが、顔はうつ向いたままだ。イバルとバルトは何も答えない。


「そうかい? 君たちには申し訳ないけど俺はこの服は脱がないよ。俺は兵士としても組織を壊滅させたい。国を守りたい」


ワルターはレミィたちの気持ちを知りつつも、自分の意思は貫き通す。


「いいわ。私たちもあなたたちの友人を傷つけてしまっていることだし」



フェンリーとゼロとクイーンは甲板で水平線を見つめていた。


「ワルターから聞いたがよ、お前よく耐えたな。レイアを傷つけられたんだろ?」


フェンリーは一服しながらゼロに話しかける。


「レイア? 誰それ?」


クイーンが興味ありげに話に乗っかってくる。


「お前には関係のない話だ、クイーン」


ゼロは素っ気ない態度をとる。怒ってはいるようだ。


「なによ、私だけ仲間外れにしようってわけ?」

「ゼロのコレだ」


ふてくされるクイーンに、小指を立ててみせるフェンリー。


「あら」


小バカにしたような態度を見せるクイーンを睨み付けるゼロ。


「そんなものではない。ただ、俺はレイアに笑っていて欲しいだけだ」

「そう、片思いってわけね」


よりいっそうクイーンを睨み付けるゼロ。


「あーこわいこわい。私は退散させてもらうわ」


そう言ってクイーンは船室へと入っていく。



遠くを見つめるフェンリー。ふとゼロに語りかける。


「……怖くねぇのか? 組織の連中と戦うことが」

「怖いさ。レイアを失うことがな」



思わず吹き出すフェンリー。


「はは! そうでなきゃな!」



水平線の彼方に島がうっすら見えてくる。


「よっしゃ! 気合い入れてこうぜ!」


手を上げるフェンリー。ハイタッチをしようとしているようだ。


「……届かんぞ」


そう言って通りすぎていくゼロ。その口元は戦いの前だというのに明らかに緩んでいた。




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