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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
202/621

episode 202 「最強VS訓練生」

まず始めに仕掛けたのはバルトだった。レミィの制止を振り切り、ゼロに向かって殴りかかる。激しく鋭い拳だったが、相手がゼロでは命中させるのは容易ではない。


「遅いな。止まって見えるぞ」

「はっ!」


拳を避け、バルトのこめかみに銃を突きつけるゼロ。あとは引き金を引くだけでバルトの命を奪える。


「ならこれはどうだ?」


その声と同時にイバルの剣がゼロの顔をかすめる。体制を崩しながらもなんとか避けるゼロ。ゼロに生まれた僅かな隙をイバルは見逃さない。


「レミィ! 今だ!」


レミィは覚悟を決め、ゼロの後ろから襲いかかる。


「その体勢で避けることは不可能! くたばれ最強!」


イバルが勝利を確信して叫び声を上げる。だがゼロはいたって冷静に対処する。地面に向かって銃を放ち、その反動によってレミィの攻撃を回避する。そしてその跳弾によってバルトを攻撃する。


「うっ!」


弾はバルトの左足に直撃し、彼の機動力を奪い去る。


「バルト! 大丈夫? イバル、バルトが撃たれた!」


攻撃を外したレミィは冷静さをかき、バルトが撃たれたことで更に取り乱す。


「落ち着けレミィ。足をかすめただけだ」


本当は弾は足を貫通しており、立ち上がることすら困難だったが、バルトはレミィが落ち着くようにあえて嘘をつく。そして安心させるために、血を撒き散らしながら無理やり立ち上がる。


「な?」


歯をくいしばって必死に痛みに耐えるバルト。それに気がついたイバルはバルトのもとへと駆け寄り、彼に肩をかす。


「無茶をするな、相手はゼロだ」

「無茶だってするさ、相手はゼロだ」


顔を合わせる二人に容赦なく銃を向けるゼロ。


「殺しはしない。俺はもう殺し屋ではないからな。だが喋りたくなるまで痛め付けてやろう」


ゼロは劇鉄を上げ、銃を二人から移動してレミィに向ける。レミィはゼロの殺気にあてられ、金縛りにあったように身動きがとれなくなっている。


「待ってくれよ! あんた最強なんだろ!? 俺たちみたいな小物はほっといてくれよ、頼むよ!」


バルトが足を引きずりながらゼロに近づいて足元で膝まづく。


「貴様らは俺の事を知っているようだが、組織の関係者なのか? 」


ゼロは一切気を緩めずに尋ねる。


「そうだ。俺たちは組織の訓練生、ティーチ教官の教え子だ」


イバルが答える。


「ティーチ……組織の教育係か。俺の目的は組織の壊滅だ。ティーチもこの島に居るのだろう? 貴様らには悪いがティーチは殺す。だが貴様らは別だ。貴様らの言うとおり、貴様らはのような小物に興味はない。大人しくティーチを差し出せば命は助けてやる」


組織は所詮、希薄な集団。彼らが命を張ってまでティーチを庇うとは思えない。この状態でこう言えば簡単に居所を聞き出せると考えていたゼロだったが、三人の顔は依然として曇ったままだった。


「それは……出来ない」


イバルが始めに答える。


「そうか、ならば始めにこの女を殺す。次はそこの男だ。最後に貴様を殺し、自力で探すとしよう」


ゼロは違和感を感じつつも脅し続ける。


「教官は死んだ。帝国軍によって殺されたんだ」


バルトが答える。目には涙を浮かべ、とても嘘をついているようには思えない。そもそもこの命のかかった状況で嘘をつくにはあまりに危険すぎる。


「それが本当だとするなら貴様らはここで何をしている? 直ぐに本部へ帰り、この一件をエクシルに報告すべきではないのか?」

「それは出来ない。仲間が一人目覚めていない。このまま戻るのは危険だ」


イバルが答えるが、ますますわからなくなるゼロ。質問を繰り返す。


「どういうことだ? なぜ危険が及ぶ? この島で待つより組織の医療施設を利用すべきではないのか?」

「それは出来ないわ。いざとなったら敵対するかもしれないから」


ゼロの警戒が弱まったため、ようやく口を開くことができたレミィ。



「詳しく聞かせろ。内容によっては俺たちは協力し合える」



レミィは語り出す。ティーチの事、自分たちの事、ケイトの事を。


黙って聞いていたゼロだったが、話が終わるなり、再びレミィに銃を突きつける。


「ケイトをさらったのは貴様らか。それだけではなく、レイアたちにも危害を加えていたとはな。貴様らは無事ではすまんぞ」


先程までとは比べ物にならない殺気に三人とも身動きがとれなくなってしまう。


「あ、う……」


必死に謝罪をしようとするレミィだが、口がうまく動かない。イバルとバルトは死を覚悟したのか、目をつぶっている。




「ゼロ、落ち着くんだ」

「ワルターか……」


ワルターが後ろから声をかける。


「なかなか戻ってこないから気になってね。話は聞かせてもらったよ。ここで殺しあってもしょうがない。俺も妹を襲われている。気持ちはわかるけど落ち着こう」


ゼロは少し考え、苦い顔をして銃をしまう。短時間ではあるが本気でゼロに殺意をあてられた三人は、全力疾走したあとのように息を切らしていた。


「立て。貴様らの話を信じる。目覚めない仲間とやらのもとに案内しろ」

「……ああ」


イバルはゼロとワルターを島の中へと案内する。




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