episode 200 「復活のA」
ゲイリーによって殺された兵士を埋葬するジャンヌたち。
「ごめんなさい。戦いが終わったら国に持ち帰るからね」
簡易的に兵士を埋め、先へと歩を進める。幾度となく道中で訓練生らしき者たちに襲われたが、怒らせた彼らを止められるものはどこにも存在しなかった。
島中を巡り歩いた彼らだったが、どこにも施設のようなものを発見できずにいた。今さらになって襲ってきた者たちを全て倒してしまったことに後悔するが、ジャンヌたちの強さを知った今、訓練生が襲ってくることはもう無かった。
「どこかに隠し通路があるはずだ。皆で探すぞ」
ガイアが部下たちに声をかける。ここで見つかりませんでしたと帰るわけにはいかない。
「准将、その必要は無いようです」
ガイアの側近であるロナン・ジミニー大佐が指を差す。その指の先には奇妙な笑顔を浮かべた女性の姿があった。
「ふふふふふはは。やっぱりきた!」
「何者だ?」
女性は手足がおかしな方向に曲がっており、首もぐらぐらとふらついている。それもそのはず、首と胴体は糸でむちゃくちゃに繋ぎ止められており、なぜ生きていられるのか不思議なほど全身傷だらけだった。
「こんにちは! 私はアンです! あなた方と殺し合いをするためにやって来ました! よろしくお願いします!」
そこに居たのは組織の教育係、ティーチの教え子アンだった。かつてジャンヌに敗北し、ローズによって捕らえられ、シオンとの共闘によって殺された彼女は確かに目の前にたっていた。
「あなた、見るからにつよそうですね!」
アンはそういうなり目の前にいたガイアに切りかかる。奇声をあげながら突っ込んでくるアンだが、剣の腕は明らかにガイアの方が格上、難なく斬り捨てるガイア。アンの腕は剣ごと吹き飛ばされる。だがアンは全く怯むことなく、続けざまにガイアにきりかかる。
「きききゃはは! 痛くない! 痛くないですよ! なんでだろ、とっても気分がいいです! ん、んんん!?」
アンは斬り飛ばされた腕を拾い上げる。そして一人の兵士の姿をみて、更に表情が変化する。
「あなたは屋敷に居た人ですね! よかった、もう戦えないかと残念に思っていたんです!」
「あら、覚えててくれたの」
先程まで戦っていたガイアのことはもう頭に無いようで、目の前にいるジャンヌに向かっていくアン。だが当然歯が立たず、下半身と上半身に分けられてしまう。
「ぎゃぁぁぁ!」
絶叫しながら倒れるアン。
「ヴァルキリア中将、殺してしまっては敵の居所が……」
「あら、ガイア。あなたにはこの娘が会話が成り立つ人間に見えるのかしら? 一応そうは思えないから殺したのだけれど」
「それはそうですが……」
だがそれでもアンは死んではいなかった。
「けほっ! どこいくんですかぁ!?」
聞こえるはずのない声に振り返る二人。アンはピンピンしていた。これにはさすがにジャンヌも驚き、口をあんぐりと開ける。
「え? あなた死なないの?」
「死ねませんよ! まだまだ殺したりないですから!」
アンの断面から糸のようなものが伸び、体と体を無理やりくっ付ける。
「何かの加護を受けているな……死なないのだとしたら非常に厄介だ。俺では倒す手段が無い。中将、あなたはどうですか?」
ガイアはお手上げといった感じでジャンヌに問いかける。ジャンヌも回答に困った様子だ。
「一応私も死なない人間と戦ったことは無いわ。どうしましょう?」
帝国の尖鋭ジャンヌとガイアは、十闘神第四神アテナによって加護を受けた一人の不死の少女を前に頭を悩ませていた。
「さあ! 死ぬまで殺し合いましょう!」
アンは実に愉しそうに笑顔を浮かべてそう言った。




