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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
199/621

episode 199 「新しい友達」

イルベルト、パーシアス、リラの三人はハウエリス郊外に飛ばされていた。イルベルト自身は組織本部へ飛ぶ予定だったのだが、心の乱れと焦りで目標を見誤ってしまったのだ。


「だがら言っただろう。元帥に勝てるものか」


一足先に飛ばされていたパーシアスがあとから来た二人を見るなり呟く。


「あれは化け物だ。加護を無効化され、傷をつけても癒される」


イルベルトの顔が恐怖にひきつっている。リラは何も語れないほど震えている。



「で、どうするのだ? 本部に戻るか?」



パーシアスの問いかけにイルベルトは以外な答えを返す。


「逃げよう」

「は?」


口が開くパーシアス。


「エクシルは圧倒的に不利だと感じたから我々にマークとリザベルトを捕らえるように命令を下した。結果は失敗。そして我々に再び彼らを捕らえようとする意思はない。仮に捕らえられたとしても、敵にはあの元帥がいる。組織は……終わりだ」


あれほどたよりになったイルベルトの顔は、絶望に支配されていた。パーシアスもそれに反論できるほど自惚れてもいなかった。


「逃げ切れると思うのか?」

「逃げる? 誰からだ? 帝国軍からか? だとしたら無理だ。だが俺の力を使えば少しは生き残る可能性が上がる。一緒に来るか?」


イルベルトの力である空間移動は逃走にはもってこいの力だった。


「無論だ。俺もまだ死ぬわけにはいかない」

「決まりだな。リラ、お前はどうする?」


イルベルトの問いかけにリラは震えるだけだった。


「時間がかかるな、まずはゆっくり休息をとるとしよう。どこか遠くでな」


三人は何処かへ消えていった。そして戻ることは二度となかった。





シオンはリザベルトの服を脱いだ。これ以上マークに血を噴かせるわけにはいかないからだ。使用人に用意してもらったメイド服に身を包む。


目を覚ましたマークは頭に氷を当てながら、己の失態にうなだれていた。


(何てことだ……よりにもよってシオンの目の前で)


「あなた、シオンさんが好きなんですの?」

「ごふ!」


マークを看病していたセシルの一言に思わず吹き出してしまうマーク。


「な、な、何を! 彼女は仲間であり、部下であり、恋愛対象ではない! それに俺の好みともかけ離れている!」


必死に反論するマーク。それを扉越しに聞いてしまったシオン。


「そうなんだ、私って魅力ないのかなぁ」

「し、シオン! 違っ!」


扉を開けて入ってきたシオンのメイド服姿をみてすぐさま目を反らすマーク。


「どうしてこっちを見てくれないの? やっぱり私のこと嫌いなんだ」

「ち、違っ!」


(まずい! 可愛い! しかし、ここで目を合わせてしまってはまた血が!)


マークは口元に手を当て、目をつぶって必死に己の欲望と戦う。それを冷ややかな目で見るセシル。


「どんだけ分かりやすいんですの?」


洗濯していたシオンの軍服が乾き、ようやくマークはシオンの事を直視できるようになった。そしてリザベルトも目を覚まし、三人のもとにやって来た。


「リズちゃん! もう大丈夫なの?」

「世話をかけました。戦いはどうなったのだ?」


マークは事の全てをリザベルトに伝える。イシュタルの名前が出てきたところで安心と屈辱の表情を見せるリザベルト。


「そうですか、またしても元帥に助けられたのですか。情けないです」


拳を握りしめるリザベルト。


「全くだ。ゼクス、ライズ、ロイの三人は依然として行方不明、生死も不明だ。まあゼクスがそう簡単に死ぬとは思えんが」


複雑な表情のマーク。嫌な思い出がよみがえってくる。


「で、我々は姉上の援護に向かえということか」

「そうだ。またセルフィシーに行くことになるとはな」

「またクレア君とサラちゃんに会えるかな」


マークとシオンとリザベルトはセルフィシー王国王子、クレア・セルフィシーと共に行動したことがあり、セルフィシーでの任務は適任だとイシュタルは判断したのかもしれない。



「行っちゃうんですのね」


寂しそうに声をかけてくるセシル。また置いていかれることに敏感になってしまっていた。


「セシルちゃん。もう私たちは友達なの。だがら必ず戻ってくる。もちろん、みんな一緒にね!」


にっこり笑ってセシルに抱きつくシオン。


「約束ですわよ!」

「うん!」


涙をこらえるセシル。


「あなたもあまり無理しすぎはよくありませんわよ」

「ありがとう。家を頼むよ」


リザベルトと握手をするセシル。


何か言わなくてはと焦るマークの裾を引っ張るセシル。


「な、何だ?」

「あなたがシオンさんを好きになる気持ち、わたくしにも少しわかりましたわ」

「へ?」


三人に手をふり、ニコニコしながら見送るセシル。



「また友達が増えましたわ!」



三人がいなくなった客室でルンルンスキップをするセシル。待つ楽しみが一つ増えた。






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