episode 195 「亜空間」
ゼクスたちの目の前に現れる亜空間。ゼクスの作ったミニブラックホールはこの空間へと吸い込まれたようだ。
「空間操作? そんな加護聞いたこと無いな。貴様、何者だ」
空間を閉じ、ライズの質問に答えるイルベルト。
「何度も言わせるなよ。それとも別の表現がほしいのか? 俺は組織のエージェント、イルベルト。十闘神ネスから力を受け取った」
ポンポンポンとイルベルトの周りに小さな黒い空間が現れる。空間はイルベルトだけではなく、リラの近くにも現れる。
「何これ!」
驚くシオン。
「リラ!」
「ええ。わかった」
リラはシオンに砕かれた岩の欠片をその空間に向かって飛ばす。するとイルベルトの周りの空間からその欠片が現れ、ゼクスたちを襲う。
「クソ! うざってぇ!」
ゼクスたちにダメージを与えるほどの威力はないが、イルベルトに近づくこともできない。
「はぁああ!」
シオンがリラに殴りかかる。空間への欠片の補給を中断し、シオンに向かって欠片を飛ばす。だがこの程度の欠片ではシオンの歩みを止めることはできない。
『氷牙!』
氷を纏った拳をリラにぶつけようとするが、リラの力によってシオンの拳は止まってしまう。体がおかしな方向にねじ曲げられ、激痛がはしるシオン。
「うぅ!」
「あら、ダンスが上手なのね」
体に力を込めて必死に逃れようとするが、体が折られないように抵抗するのがやっとのシオン。
「あなたはそこで苦しんでいて。私は任務を遂行するわ」
「ダメ!」
シオンの叫び虚しく、硬直するシオンの横を通りすぎ、気絶するリザベルトに近づくリラ。リザベルトに手をかけようとしたその時、リラの後ろから冷気がやって来る。
「冷たい……でもだから何?」
体に違和感を覚えながらも構わずリザベルトに手を伸ばすリラ。リザベルトの腕をつかむも、次の瞬間体が動かなくなる。
「か……あ」
体の中にまで冷気が入り込み、呼吸すら困難になるリラ。必然的にシオンを縛る力も無くなる。
「氷牙拳法、肆の形!」
体をガチガチにしながらも何とか後ろを振り返るリラ。シオンが走りよって来るのがわかる。
(動かない……! 岩を砕く威力、このままじゃ……)
『氷連脚!』
シオンの足がリラぶつかる瞬間、リラの足元に穴があき、そこに吸い込まれていく。
「わっ!」
シオンの蹴りは空をきる。勢い余って地面に激突し、辺り一面を吹き飛ばす。
イルベルトのもとへと飛ばされたリラ。
「助かったわ、イルベルト」
そう言いながら吐血するリラ。脇腹に目をやると肉がえぐれ、血が吹き出していた。
(かすっただけで、この威力……)
「リラ、しっかりしろ。まだやれるな?」
「ええ……」
イルベルトは亜空間から包帯を取り寄せ、リラに応急処置を施す。
石の欠片が止んだため、ようやくイルベルトに近づくことができるゼクスたち。
まず先頭をきったのはライズだった。軽快な足取りでイルベルトに近づき、負傷しているリラに向かって攻撃を繰り出す。
「卑怯だな」
ライズの目の前に亜空間を出現させるイルベルト。ライズの拳は空間にのまれ、彼の後方から現れた空間から出てくる。自らの拳で自らの後頭部を殴り付けるライズ。
「ぐっ!」
ふらついた隙に再び出現した亜空間に飲み込まれ、どこかへと消えるライズ。
「大佐! ライズが消えタ!」
ロイが叫ぶ。
「うるせぇ! 見りゃわかる! 警戒しろ!」
ゼクスが叫び返すが、ロイからの返事はない。姿かたちもない。
「テメェ!」
「事情が変わった。望み通り相手をして殺る」
イルベルトの頭上に今までに無いほど大きな空間が開く。その中にはゼクスたちが攻撃してきたものが蓄積されていた。
「クソが!」
「これは返してやる。死ね」
すべての攻撃がゼクス目掛けて放たれた。




