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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
176/621

episode 176 「シオン」

宿へと戻ったローズをリザベルトは深々と頭を下げて出迎える。


「どうしたリザベルト?」

「申し訳ございません!」


何かを感じ取ったローズは急いでアンを探す。しかしアンの姿はどこにも見当たらない。


「バカな、あの怪我で逃げ出せるはずが……」

「手引きした者がいるのでしょう。ですが私は侵入者にまったく気がつかず、みすみすアンを逃がしてしまいました」


再びリザベルトは頭を下げる。


ローズの顔がどんどん青ざめていく。


「……事態は思った以上に深刻だ。死刑囚を野に放ってしまったのだからな。私は勿論、お前たちの首まで危ない。もともと逃がす目的で引き取ったととられるかもしれない」

「そんな! 悪いのは私です! 責任は私が!」

「お前に責任がとれるのか! 中尉!」


ローズはリザベルトを怒鳴り付ける。リザベルトは下を向いてしまう。そんなことはリザベルト自身もわかっていた。


「もうしわけ……」


リザベルトは途中で言葉を失ってしまう。ローズが抱きついてきたからだ。


「だが案ずるな。お前たちは必ず私が守って見せる。責任をとるのが私の仕事だ」


ローズは再び宿屋を出ていく。リザベルトはその場に崩れ落ち、涙を浮かべる。


「情けない情けない情けない。私は責任をとることすら出来ないのか……」


その様子を影から見ていたレイアたち。リザベルトにかける言葉が見つからず、もどかしさを感じていた。



ローズはイシュタルに頭を下げていた。


「元帥殿! 実は私が護送していました死刑囚が逃げ出しました。至急確保する必要があります。ですので援軍を……」


話の途中で剣をローズの顔に突きつけるイシュタル。


「それは貴様がわざわざ引き取ったという組織の人間だな?」

「は、はい」


ローズに緊張がはしる。


「貴様は貴様の一存でそやつを引き取り、そして逃がした。貴様の判断ひとつで軍に危険が及ぼうとしているわけだ。先程の惨劇を見ただろう。あれをまた繰り返すつもりか?」


ローズは町で見たシアンたちに殺された死体を思い出す。


「おっしゃっていることはわかっています。全責任は私にあります」

「人は派遣してやる。その命をとして捜索に当たれ。もしそやつを見つけるよりも先に我が帝国に被害が及ぶようなら貴様の戻る席は無いと思え」

「……承知しました」


イシュタルは剣を収め、どこかに連絡をとり始める。すると直ぐに数人の兵士たちが駆けつけてきた。


「お、お呼びでしょうか! 元帥さん、じゃなかった元帥殿!」


先頭の水色の髪をした少女がイシュタルに敬礼をする。イシュタルは少女を睨み付け、指令を言い渡す。


「ナルス少佐。貴様のような小娘には荷が重すぎるやも知れんが、これは重大な任務だ。しくじれば帝国に確実なる被害が及ぶ。ローズと協力し、賊の確保に向かえ」

「ハ! 了解です!」


ナルス少佐は元気よく返事をする。イシュタルはやや複雑な表情を残して軍本部へと戻っていく。




少佐はしばらく元帥を見送ったあと、思い出したように振り返り、ローズに挨拶をする。


「あ、申し遅れました。私はシオン、シオン・ナルス少佐です。ローズさんの事はリザベルトやマークから聞いてました!」


まるで向こう側が透けて見えるような白い肌の少女はローズに手を差し出す。その手をとったローズはその手の冷たさに驚く。


「あ、ごめんなさいローズさん。私生まれつきこうなんです」


シオンが木に息を吐くと木が凍りつく。


「驚いたな。氷の加護か」

「あまり良いものでは無いですよ」


悲しげな顔を見せるシオン。シオンはこの力の制御が利かなかった幼少期、両親をはじめ色々な人々から化物扱いを受けていた。軍に入らなければ今ごろは組織の殺し屋になっていたかもしれない。



「この話はおしまいです! さあその殺し屋さんを探しにいきましょう!」


シオンは元気よく腕を天に突き上げる。


「そうだな。この国は我々の手にかかっている」


ローズとシオンは数人の部下と共にアンの捜索へと乗り出した。




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