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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
175/621

episode 175 「アテナ」

アンに憎しみを抱き、殺意をもって剣を振り下ろすリース。命を狙われているというのにアンは臆するようすも無く、リースを睨み付ける。


キン!


リースの剣はアンの体に到達することはなく、現れたリザベルトによって受け止められる。リースの剣をはじいたリザベルトはすぐさまアンの首もとに打撃を加える。


「がっ!」


アンは声をあげ、意識を閉ざす。うろたえているリースに語りかけるリザベルト。



「リース、今この女を殺そうとしたな?」

「す、済みません」


リザベルトはリースの頭をコツンと殴る。


「この女には聞かなければならないことが山ほどある。だからこそ姉上は身柄を引き受けたのだ。お前はそれを無駄にする気か?」

「……」


口を閉ざすリース。剣をしまい、リザベルトに頭を下げて部屋を出ていく。


リザベルトは気絶している全身傷だらけのアンを見つめる。



(この女、年はリースと変わらないだろうに何て顔をしているんだ。この年で何度修羅場を潜り抜けてきたんだ)


体を拘束され、全身怪我だらけの圧倒的不利な状況で命を省みずリースを挑発する目の前の少女に驚きを隠せないリザベルト。アンを柱に縛り付け、部屋を出ていく。



しばらくして目を覚ましたアン。体を動かそうとするが、激しい痛みが襲ってくる。


(くっ! また骨が折れましたね。あの女、容赦ないですね。これでは動けません)


立ち上がることすら出来ないアンは仕方なく再び目をつぶる。


(教官、あなたは死んだんですよね。もう居ないんですよね)


にっこり笑うアン。


「大丈夫です。敵はとりますから」


アンは殺意であふれていた。体の内側から黒く染まっていく。すると部屋のなかも黒くなっていく。


「な、何ですか?」


驚くアンの元に一人の女性が近づいてくる。体が動かないアンは精一杯の殺意で対抗するが、その女性は何事も無いように近づいてくる。



「何のために力を求めるのですか?」



女性が口を開くとアンの殺意がどこかに吹き飛ぶ。それほどまでに女性は気高く、犯しがたい姿をしていた。


「あ、あ」


アンはまともに言葉を発せられなかった。


「自己紹介がまだでしたね。私はアテナ」

「あ、アテナ? まさか十闘神ですか?」


気がつくとアンのからだの痛みはすっかり消えていた。


「それは人の決めた呼び方です。ですがそうですね。私はあなた方の言うところの神です」


とうとう私も死んだか。そう思うアン。


「私に何のようでしょうか?」

「質問しているのは私です。なぜ力が欲しいのですか?」


アンは立ち上がる。


「そんなの決まってます。敵を殺すためですよ」


まっすぐとアテナの目を見て答えるアン。その言葉に嘘偽りがないことがわかると、アテナはアンの胸の中心に手を当てる。


「……なんですか?」

「あなたに私の力を一部貸し与えましょう。人の言うところの加護というやつです。これであなたは死ぬまで戦える」



アンの体に何かが流れ込んでくる。そのまま気を失うアン。目を覚ましたときにはアテナの姿はどこにもなかった。


「夢、ですか。縁起のいい夢を見ました」


そこでアンは体の異変に気付く。あれほど全身ボロボロだったというのに、今はまったく痛みを感じない。


(おかしいですね。傷はまだ治っていないのに、体が麻痺しているのでしょうか? でもこれで動けます)


体はおかしな音をたてるが、構わず立ち上がるアン。縛り付けられているロープを引きちぎり、窓から宿屋の外へと脱出する。


(痛みはないですが、傷口が開いてしまいました。しばらくは体を休ませる必要がありますね)



アンは闇の中へと消えていった。


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