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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
172/621

episode 172 「次の標的」

「ちょっと待って!」


ニコルがオイゲンの前に飛び出す。ニコルの眼前で剣を止めるイシュタル。


「貴様、どこかで見た顔だな。この賊の連れか?」

「お久しぶりね、おじいちゃん。私はニコル。確かにこの男は私の仲間よ。だけどあなたの敵は私たちじゃないわ。他にいる」


ニコルはイシュタルの殺気に耐えながら何とか答える。


「貴様らの話を信じろと? この惨劇を見てそこまで儂は冷静ではないぞ」


そこらじゅうに転がっている兵士の亡骸を見ながらイシュタルが冷たく言い放つ。アーノルトとの一戦の後ということもあり、イシュタルは非常に気が立っていた。




「元帥殿、彼らの言うとおりです。侵入者は七人、現在帝国軍本部へ向けて進行中だと思われます」



何とか縄を抜け出した兵士が元帥の足元で報告する。


「その話が本当ならなぜ貴様らはそうしている?」

「ハ! 申し訳ありません!」


兵士は深々と頭を下げる。



「加護よ。それも全員」


ニコルが兵士の代わりに答える。イシュタルは兵士を両断しようとした剣をしまう。



「なぜ我らが神はいたずらに力を与えてしまうのか……」


イシュタルは切断したオイゲンの腕を右手で拾い上げ、オイゲン本人に押し当てる。


「がっ! 何の真似だ……」

「黙っていろ」


痛みに悶えるオイゲン。が、次第に痛みが引いていく。痛みが引くどころかちぎれた腕がくっつき始めた。


「これは……」

「済まなかったな。人違いだ」


しばらくすると腕は完全に元通りになった。人違いで切りつけられて本来なら激怒するところだが、圧倒的な力の差と目の前で起きた光景に目を奪われ、それどころではなかった。


イシュタルは帝国軍本部のある方向へと歩いていく。


オイゲンは腕の調子をしばらく確かめていたが、問題ないことがわかるとニコルに頭を下げる。


「申し訳なかった。頭に血が昇ってしまっていた。お前のお陰で助かった。礼を言う」

「いいわよ。私もなんだか記憶が混同しているの。何かしらの攻撃を受けたのかもしれないわ」


あれほど子供達を救いたいとかんがえていたのに、今では何の感情も浮かばなかった。




その頃シアンたちは帝国軍本部ではなく、海へと出ていた。


「シアン、乗り込まなくて良かったの?」


エクリュがシアンに尋ねる。


「ああ。考えてもみればモルガントは勝利国だ。戦力は明らかにセルフィシーより上のはず。今の俺たちで挑むのは危険すぎたんだ」


シアンはワルターやオイゲンの事を思い出す。彼らのような強者がうようよいる帝国軍本部への襲撃は自分たちの加護の力を持ったとしても危険すぎると判断したのだ。


「そだね。どっちにしろ両方滅ぼすんだからどっちからでもいいよね」

「そうだな。まずは敗戦国であるセルフィシーを狙うとしよう」


シアンたちはモルガント帝国によって壊滅させられたセルフィシー王国へと進み出した。


「待っていろ王族ども。貴様らが私利私欲のために起こした戦争で俺たちがどんなめにあったか、思い知らせてやる」


彼らは一丸となって復讐を誓う。



兵士たちがオイゲンとニコルの手によって拘束を解かれた頃、レイアたちを連れたローズも港に到着した。


レイアはうなだれていた。結局ケイトを取り戻すことができずにまたこの国に戻ってきてしまったからだ。


ティーチの話によるとケイトは組織本部の小島に連れていかれたらしい。ローズは部隊を編成して助けにいくと約束してくれたが、正直不安でいっぱいだった。


以前港にレイリーがやって来た際、彼一人に何十人もの兵士が一方的に虐殺された。ローズでさえレイリーには敵わず、結局ジャンヌが来るまでは防戦一方だったのだ。いくら部隊を編成するとしても並大抵の兵力では返り討ちにあうのがオチだ。下手をすれば組織とモルガント帝国との戦争にも成りかねない。


「心配するな。私が付いている」


レイアの事を案じて声をかけてくるローズ。レイアは微笑み返すことしか出来ない。


ゼロたちはどうしているのだろう? 無事なのだろうか。ケイトのことも心配だが、ゼロの事も気になって仕方がないレイアだった。







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