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スティールスマイル  作者: ガブ
第一章 ゼロとレイア
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episode 17 「開戦」

大勢の執事、もとい組織の殺し屋たちに囲まれながらも、ゼロは平静を保っていた。


「貴様の姉兄はムースとレイリーか?」


迫り来る執事たちを簡単にあしらいながら、レイアと共に震えているエレナに訪ねるゼロ。エレナは震えながら首を縦にふる。


「そうか、ではもう一つ聞く。貴様は敵か?」


ゼロの言葉に、エレナより早くレイアは必死に首を横にふる。エレナはそれを見て、ゼロに訴えかける。


「私は組織の人間。でもレイアの友達! 友達とは戦わない!」

「そうか、ならお前の執事と姉兄を叩きのめしたあと文句はないな」


エレナの言葉をしっかりと聞き届け、ゼロは執事の群れの中心に飛び込む。そして今までのは遊びだとでも言うように、執事たちを次々に叩きのめす。二十人は居たであろう執事はゼロに一撃も加えられないまま、全員倒されてしまった。


「……凄い」


エレナは圧倒的な強さを見せるゼロに魅せられていた。と、同時に言動1つでこの男を敵に回してしまうことに恐怖を感じる。また震えだすエレナの肩をやさしく抱き寄せるレイア。


「大丈夫ですよ。ゼロさんはわたくしの友達を傷付けたりしません」


だが、エレナの不安は収まらない。彼女の懸念はゼロだけではないからだ。むしろ本当に恐ろしいのは彼女の姉と兄だ。


「例えそうだとしても、戦わない私を御姉様は許さない。どっちにしろ私は助からない!」


エレナはムースが恐ろしくて仕方なかった。幼い頃から表面上は優しく優雅な姉。しかしその本性は残忍で冷酷。メル家に敵対するものは容赦なく殺す。ただ殺すだけでなく、痛め付け、苦しめ、自ら死を望むほどにまで追い詰めてから殺す。

兄のレイリーも基本的に紳士だが、死に対する倫理観が欠如しており、死者を弄ぶ。


そんな二人が組織のエージェントに成るのに時間はかからなかった。それからというものエレナの人生は地獄に変わった。毎日のように血の臭いをさせ、満面の笑みで帰宅するムース。そして殺した相手を持ち帰り、部屋に飾る満足そうなレイリー。それを当たり前のように出迎える執事たち。おかしいのはあの人たちではなく、私なのではないのか?何度も気が狂いそうになった。


キィィィ


屋敷の扉が開く。恐れた事態がすぐそこまで来てしまった。メル家の当主が帰って来た。


「ああゼロ君、レイア、お久しぶりね」

「……ムース」


到着したムースはゼロに妖しい笑顔を向けると、転がっている執事たちに目を通す。ボロボロの執事たちは助けを求めムースの元に近づくが、その執事たち目掛けてナイフが飛んでくる。ナイフは彼らの首をかっきり、執事たちは血飛沫あげる。


絶叫するレイアとエレナ。


「指令を守らず、勝手にゼロに戦いを挑んだあげく無様に敗北。そしてあろうことかねぇさんに助けを求めるなど、全くもって美しくない。人形にする価値もない」


ムースの後ろからレイリーが残忍な表情で現れた。


「やぁゼロ。よくも人の家で好き勝手に暴れてくれたね。お陰でこんなにも無駄な死人が出た」


レイリーは先程自分が殺した執事たちをゼロの方に蹴飛ばす。力無く執事たちの死体は転がり、屋敷の大理石の床に赤い線を作り出す。


レイアはショックを受けていた。もちろんムースもレイリーもエレナ同様に幼い頃から知っていた。エレナほど付き合いは無かったが、こんなことをする人たちには思えなかった。今現れた2人は偽者なのではないかと疑うほどだ。


「エレナ、このゴミを片付けなさい」


ムースが執事たちの片付けをエレナに命令する。だがエレナは完全に体が硬直して動けない。固まっているエレナを見て楽しそうに嗤うムース。


「愉快ねぇ、あなたのそのお間抜けな顔! 本当にそそられる」


泣きそうなエレナ。それを見て怒りに震えるレイア。


「あなたたち! わたくしを騙して、エレナを虐めて、何がそんなに楽しいのですか! なぜそんな事で笑えるのですか!」


レイアにとって姉妹とは、家族とは常に助け合い、支え合うものだ。笑い合い、慰め合うものだ。蔑み、挫き、辱しめるものでは決して無い。エレナに対するムースの行いは、レイアにとって許しがたいものだった。しかしそんな思いは当然ムースには届かない。レイアの必死の問いかけも全く気に止めず笑い続けるムース。


「ごめんなさいねぇ、レイア。騙すつもりは無かったのよ。ただあなたが私たちの事を知らなすぎただけ。ハハ、それにしてもあなたもなかなかいい顔をしているわねぇ。歪ませたくなっちゃうじゃない」


レイアを震え上がらせるいびつな顔で嗤うムースの前を、一発の弾丸が通過する。


「どうでもいいがまずはその薄気味悪い顔をやめろ」


ゼロの冷たい殺意のこもった視線を向けられたムースは、より一層にやつく。


「あらあら、放っておかれて嫉妬しちゃったのかしら。勿論あなたのことは忘れてなんかいないわよ。ただお楽しみは最後にとっておくものじゃない? 私はこれからレイアとエレナにお話があるの。あなたはレイリーとでも男の友情を育んでいるといいわ」


そういうとムースはレイアとエレナの方に向かってスキップしていく。止めようと追いかけるゼロの前に立ち塞がるレイリー。


「ゼロ。お前のことは前から気にくわなかったんだ。ねぇさんはお前のにご執心でね、組織を抜けたと聞いたときはひどく落ち込んでいたよ。お前の始末を任されたときはすごく喜んでいたけどね。その時のねぇさんの顔はとても美しかったよ。思わず永遠に保存したくなるほどにね」

「どけ」


嬉しそうに姉の事を語るレイリーに対し、ただ一言返すゼロ。レイリーの話になど心底興味など無く、いち早くレイアのもとに向かいたい。


「お前はさっきそのねぇさんの顔を傷つけようとした。断じて許せない。今すぐ死ね、死んで償え。死んでもなお痛め続けてやる」


レイリーは両手にナイフを握りながら臨戦態勢に入る。どうやら衝突は避けられないらしい。


「やってみろ」


ゼロはレイリーに銃口を向けた。

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