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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
166/621

episode 166 「ヌル」

ワルターはシアンに言われた通りケイトを探してハウエリスに到着した。そこでワルターは重大な問題に気がついた。



「しまった! ハウエリスのどこだということを聞き忘れているじゃないか!」


頭を抱えるワルター。


「困ったねどうも。仕方がない、とりあえずゼロたちと合流することにしよう。まだあの洞窟に居るかな? というか生きているかな?」


不吉な事を言いつつ、ワルターは洞窟のあるトエフ方向へと進み始めた。



時を同じくしてクイーンとジャックはクイーンの弟であるサンを連れてハウエリスの山道を走っていた。ジャックに撃たれたクイーンの傷は癒えてはおらず、ジャックが肩を貸しつつ走り続ける。



「おねぇちゃん、これからどこへ行くの?」



不安そうにサンが尋ねる。無理もない、見たこともない追い詰められた形相でやって来たクイーンにいきなり施設から連れ出されたのだ。しかも銃で撃たれた傷までできていた。


「こめんね、サン。あんたは必ず守るから」


マザーが死に、施設の子供たちはどうなるのだろう。クイーンにはそんなことを考えている余裕も無かった。アーノルトから逃れるためになるべくトエフから離れようと必死だった。



「はぁ、これで俺もお尋ね者か」


ジャックが深いため息をつく。エクシルから指令を受けてからずいぶん経つ。もう裏切ったか、返り討ちにされたかそのどちらかだと思われているだろう。わざわざクイーンの死を偽装したというのに、それも全く意味の無いことになってしまった。その意味の無い行為でできたら傷に未だクイーンは苦しめられている。ジャックは罪の意識に苛まされていた。



「あーあ。これじゃキスでもしてもらわなきゃわりにあわねーや」


ブッと吹き出しクイーン。


「バッ! サンの前で何て事言ってんのよ!」

「きすってなあに?」


無邪気な顔でクイーンを見つめるサン。


「こっち見ちゃダメ!」


真っ赤になった顔をサンに見られないように反らすクイーン。ジャックはそれを見てケタケタと笑う。



「もちろんそれ以上でもいいぜ?」

「バカ! 死ね!」




クイーンとジャックの痴話喧嘩が繰り広げられている一方で、ゼロの脳内でも生き残りをかけた熾烈な殺し合いが続いていた。



「諦めて死ね! 戦いを諦めたんなら全部諦めろ!」


ヌルがゼロの息の根を止めようと必殺の一撃を何発も仕掛けてくる。


「俺はもう諦めない。お前が諦めろ」


ヌルの攻撃はとてつもなく重い。ゼロと同じ身体能力のヌルは、ゼロが普段かけているリミットを外し、ゼロの最大出力で攻撃を仕掛けてくる。レイアの事が頭に入っていなければあっという間に殺されてしまうだろう。



ゼロが脳内でヌルと戦っている間、本物のヌルは最強のエージェント、アーノルト・レバーと血肉を撒き散らし戦っていた。


「おいおいおいおい、ここまでかよ! イシュタル様に届きえるんじゃねぇか!? アーノルトさんよぉ!」


ヌルは傷の痛みのよりアーノルトとの戦いの興奮に浸っていた。


林の中で木々を飛び移りながら戦う二人。肉を削ぎ、肉を削がれる。二人の移動した場所が撒き散らされる血によって明らかになる。


アーノルトは驚きを隠せなかった。ゼロの人格変貌もそうだが、その強さは明らかに全盛期のゼロだった。


(いったいゼロの身に何があった。フェンリーの死が枷を外したか)


しかしそんな強さも長くは続かない。力にはリスクが付き物だ。


ゼロのスマートで無駄の無い戦いかたと異なり、ヌルの戦いかたは大技を惜しげもなく繰り出す大胆なものだ。そんな急激な変化に体が付いていけていないのだ。


ゼロは決して筋肉質ではない。その細い手足ではヌルの攻撃スタイルに合っていないのだ。次第にヌルの手足は悲鳴を上げ始める。だがヌルは戦いに集中しすぎて自分の限界が近づいていることに気がついていない。



そしてその時は突然訪れた。



ヌルの体がブチブチと音をあげる。


「いっ!」


ヌルの動きが一瞬止まる。時間にして一秒にも満たない僅かな時間だったが、相手がアーノルトともなればその隙は致命的だった。身体中に手裏剣を浴び、吹き飛ばされるヌル。痛みを感じる暇もなく追撃のクナイを繰り出すアーノルト。しかし、何かを察知し後ろへ下がるアーノルト。


バチバチバチ


飛び込んでいれば直撃していただろう。雷撃が空を割く。



「流石だね。君、雷よりも速く動けるのかい?」

「まさか。殺気が駄々漏れだ」



隻腕の剣士ワルター・フェンサーは、ついに最強の男を眼前にとらえる。



「そろそろ越えさせてもらうよ」



ワルターは、雷剣とともに最強へ挑む。




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