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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
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episode 161 「ワルターVSシアン」

モルガント帝国の兵士たちは疲れきっていた。セルフィシー王国との戦争、レイリーの一件、ついこの間のティーチ率いる組織訓練生の襲来。シアンたちの進行を止めるだけの戦力は残されてはいなかった。


国民はシアンたちを恐れ、散り散りになって逃げ惑う。その様子を見て浮かない顔をするパステル。


「シアン、これじゃ私たちが悪者みたい」

「パステル、これは俺たちに与えられた正当な権利なんだ。決して悪なんかじゃないよ」


シアンはにっこりパステルに微笑みかけながら町を破壊していく。


兵士たちが度々シアンたちを止めにやって来るが、ことごとく返り討ちにあってしまう。


その騒ぎはヴァルキリア邸のワルターたちの耳にも入る。



「オイゲン、ニコル。俺は町へ行く」


ワルターは二人にそう伝えて剣の手入れを始める。


「何を言っている。お嬢様たちを助けに行くのだろう」


オイゲンは町へ向かおうとするワルターの前に立ちふさがる。


「オイゲン、救出には君たち二人で行ってくれ。こちらが片付き次第に俺も向かう。俺はこの国を守る兵士なんだ」


オイゲンを無理やり押し退け、町へと走っていくワルター。


「くそが! 早くしなければお嬢様が!」

「なら私たちも加勢に行きましょう。早く片付けたいのならね」


怒りに震えるオイゲンに力を使い、半ば強引に連れ出すニコル。ワルターの後を追いかける。



ワルターが町に到着した頃には至るところで火の手が上がっていた。


「随分とやってくれたね。君たち」


侵略者たちが子供な事に驚きつつも、敵として向き合うワルター。



「へえ、あんたワルターっていうんだ。強そうだね。その剣にも何か秘密があるのか?」


いきなりシアンに心を読まれるワルター。


「驚いたね。心が読めるのかい?」

「そのわりにはあまり驚いた様子はないけど」

「そうだね。まったく、驚きなれてしまったかな?」


シアンに斬りかかるワルター。しかし完全に攻撃を読んでいるシアンに刃は届かない。おお振りした剣は空を切り裂き、大きな隙が生じる。その隙をフォリッジに突かれてしまう。



「うお!」



突風が吹き荒れ、ワルターの体を切り裂く。しかし威力が低いのか、服を痛める程度のダメージしか与えられない。


「なんだい、君も加護を受けているのかい? でも弱いね。ラティックに比べればそよ風だ」


ダメージがないことがわかると、フォリッジはすぐさまシアンの後ろに隠れてしまう。


「フォリッジ、お前はまだ無理だ。それにこの男はかなりのやり手だぞ」



シアンの言葉にフォリッジはうなずき、一番後ろまで下がる。それと同時にほかのメンバーが前に出る。


「お察しの通り俺たち全員加護を受けてる。あんた個人に恨みは無いけど、あんたら軍には恨みだらけなんだ。死んでくれよ」



シアンの合図でメンバーは一斉に行動を起こす。まずエクリュが口に何かを咥え、思い切り息を吐く。するとそこから大量のシャボン玉が現れ、ワルターめがけてぷかぷかと進んでいく。


「なんだい? これは」

「私特製のシャボン玉! 触ると爆発するよ!」

「へぇ、すごいね。でもこんなに遅かったら避けるのは簡単さ」


軽快な身のこなしでシャボン玉を避けていくワルター。しかし、地面に落ちるシャボ玉が爆発し、その爆風によってシャボン玉が予測不能な動きを見せる。おまけにひょっこり顔を覗かせたフォリッジの力でさらにシャボン玉は動きを変える。人体にダメージを与えられるほどの風ではないが、シャボン玉を動かすことなど造作もない。


「これはまずいね」

「ああ、まずいな。おや、剣を使うか? やってみるといい。触れた瞬間爆発だ」


剣に手を触れる前にシアンに心を読まれてしまう。


「ああ。使うさ。もうわかっていると思うけど、この剣は十闘神スサノオの愛刀である雷電丸の破片が埋め込まれている。微弱だけど電気を発生させる事ができるのさ。それに俺はこの剣を実戦で使ったことが無いんだ。だから君がこの剣について知ることは出来ないし、もし出来たとしても……」



剣をひとふりするワルター。すると目にも止まらぬ速さで剣から電流が発生し、シャボン玉を一つのこらず破壊する。


「対応することは出来ないだろう?」



凄まじい爆音が辺りに響き渡る。その音を聞きつけ、周囲を警備していた兵士たちがどんどん集まってくる。集まってきた兵士たちはワルターの姿を見て希望にみち溢れた顔で侵入者であるシアンたちに剣を向ける。



「フェンサー大佐! 来てくださったのですね! あなたがいれば百人力です!」

「済まない、もっと早く来ていれば犠牲を出さずにすんだ」


ワルターは辺りに横たわる兵士の亡骸に目をやる。見知った顔はないが、皆若い兵士たちだった。




「悲しいか?」




シアンが口を開く。集まってきたワルターをはじめ、大勢の兵士たちに囲まれたこの状態でシアンはまだ怒りと敵意を剥き出しにしている。




「俺たちの悲しみは、それ以上だ!」




ムクッと兵士の死体が動き出す。



「なっ!」



シアンがわざわざ心を読まずとも、ワルターの同様は手に取るようにわかる。


シアンの後ろから一人の子供が顔をあらわす。白髪で薄ら笑いを浮かべる焦点の定まっていない男、クロムだ。



「ねぇ、人って死ぬとどうなると思う? ぼくのおもちゃになるんだよ」



クロムが両手をあげる。それを合図に兵士の死体が立ち上がる。



「下衆が!」



ワルターの怒りが顔にあらわれる。ワルターの気持ちなどお構いなしに死体はワルターたち兵士に向かって突っ込んで来た。





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