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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
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episode 157 「暴露」

ハウエリス、トエフ。工学の発達しているハウエリスにおいても特に名が知れているのがこのトエフである。そのお陰で人々の生活水準も高い。


しかしその一方で孤児が多いのもトエフの特徴である。生活水準が高いが故にここを目指して旅してくる孤児もいるくらいだ。


両親を戦争で失い、弟と二人で暮らしてきたクイーン。生活はとても苦しく、弟を養うことは難しかった。


その二人に組織の魔の手が忍び寄る。シアンたち同様の孤児狩りだ。そこで生き残ったクイーンと弟のサン。サンの安全を保証する代わりに、クイーンは組織の一員となった。


組織のエージェントとなってからはお金に困ることはなくなった。任務をこなせばこなすほど、人を殺せば殺すほど懐は潤い、心は汚れていった。それでもサンに不自由な思いをさせないため、孤児院へ仕送りをし続けた。




孤児院が組織の施設とも知らずに。




孤児院は年端のいかない子供たちを少しずつ洗脳するために作られた。ここである程度の年齢まで育て、組織本部まで送るのだ。



「ええ。クイーンはジャックに始末されたわ。弟は私が管理している。いつでも殺せるわ」


組織の一員、孤児院のママ、マザーイブがエクシルに電話でクイーンの最期を伝える。


「そうか、ジャックはどうした?」


エクシルが尋ねる。ジャックとクイーンが幼馴染みなことはもちろんエクシルも知っていた。単独行動が目立ち、過去にゼロと接触していながらも始末しなかったジャックにもエクシルは疑いの念を抱いていた。今回の指令で使えるかどうか判断したかったのだ。


「虚ろな表情で現れたわ。クイーンの血塗られた弓を抱えていたわ」

「そうか、ならいい」


イブの連絡を受けてもエクシルは不安を感じていた。ジャックからの連絡がないのだ。自由気ままな男だが、指令はきちんとこなしてきた。故に任務が完了していながら連絡してこないのが不安で仕方なかった。



現にジャックはクイーンを生かし、あろうことかゼロたちと引き合わせようとしている。



「こっちだ。俺がクイーンを撃ったのは」



ジャックは暗い顔でその場所を案内する。その場所には既にクイーンの姿はなかった。


ジャックは心の中でクイーンがきちんと生きていたことに安堵する。


クイーンが歩いたであろう血の跡を追うジャック。血の跡は洞窟へと続いていた。


クイーンは洞窟の中で服を脱ぎ、ジャックに撃たれた傷の具合を確かめていた。


目が合うクイーンとジャック。


「ジャック!」

「よう、また会ったな。しかし、お前昔と比べて随分……」


ジャックの目線が下に移動する。


「ななななな!」


クイーンはとっさに岩の後ろに隠れる。


「なにしに来たのよ!」


ジャックはクイーンから目を逸らす。裸が気まずいからではない、ジャックが撃った傷が目に入ったからだ。


「本当はよ、もう会うつもりは無かったんだ。でもお前にどうしても会いたいってやつがいてさ」

「何?」


ゼロとワルターが姿を現す。


「げ、あんたたちこんなとこまで追いかけてきたの!? ただのストーカーじゃない! 帰って! 絶対に嫌! アーノルトと戦うなんて!」

「とりあえず服を着たらどうだい?」


ワルターの言葉に顔を赤くするクイーン。



「出てってよ!」



仕方なく洞窟の外で待機するゼロたち。その時、僅に草が揺れた。


「ジャック、気づいたか?」


ゼロが声をかけたときには既にジャックは行動を起こしていた。



(はぁ、はぁ、ジャックはやはり裏切っていた! おまけにゼロやオイゲン、ニコルにワルターまで居るなんて……それにアーノルトと戦うですって!? 早くエクシルに報告を……)


草の揺れる正体はマザーイブだった。念のためジャックとクイーンが入っていった林を確認しにいったのだが、そこでまさかのゼロたちの姿を目撃し、後をつけていたのだ。とんでもない情報を手にいれたイブはエクシルに報告するため、孤児院へ急いでいた。



「なんだ、マザーじゃないか。どうしたんだ? こんなところで」

「ジャック!」


あっという間にマザーイブに追い付いたジャックが声をかける。マザーは大量の冷や汗をかいている。


「夕食に必要な山菜を採りに来ていたのよ。急がなくっちゃ、もうこんな時間だわ」


何とかこの場を乗り切ろうと芝居をうつイブ。


「ふーん。でもなんであんた俺の名前しってんだ? あんたに名乗ったことねぇけど」


ジャックはイブにかまをかける。もちろん初めて会ったときに名乗っているのだが、極限状態にあるイブにプレッシャーをかけるには充分だった。


追い付かれてしまうとわかっていてもジャックから逃れようと駆け出すイブ。



「それが答えってわけだな」



必死で逃げるイブをとらえるジャック。


「見たんだな? 俺たちの事を。聞いたんだな? 俺たちの会話を。知ったんだな? 俺たちの目的を。観念しろ。お前を生かしておくわけにはいかない」


ジャックはイブに銃を突き付ける。しかしイブは怯えもせず、笑い始める。


「なんだ? 壊れちまったか?」


イヴの手には端末が握られていた。そしてそこにはエクシルの文字が。



「全部わかったよジャック」



端末からエクシルの声が聞こえる。


「エクシルっ! くそっ!」


ジャックは端末をイブから取り上げ、撃ち抜くが、既に遅かった。


ワルター、ニコルの裏切り。クイーンの存命。ジャックの行動。すべてがエクシルに伝わってしまった。


「くっそ! おいっ! お前も組織の一員なのか!」


ジャックはイブに問いただすが、イブは奥歯に仕込んだ毒を噛み砕き、既に絶命していた。



「くそ!! やられた! まずい、まずいぞ! エクシルの話じゃアーノルトはとなり町のグリフィーに居るらしいじゃねぇか。ヤベェ、早いとこ逃げねぇと全員殺されちまう!」




アーノルトはヒエロの屋敷でエクシルから連絡を受ける。


「愚かだな。組織を裏切るということがどういうことなのか、わかっていないなら教えてやる。この手でな」



アーノルトはヒエロの屋敷を出る。そしてトエフへ向かって進み出した。







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