episode 151 「反抗」
流されるままシアンたちに付いていくケイト。
「待って、復讐なんて……」
「確かにケイト。君には関係の無いことだ。俺たちに付き合う必要はない。だけど君一人であの連中から逃げきれるのか?」
シアンの言うとおりだった。過程はどうであれ組織の施設から逃げ出すことができたのは彼らのお陰だ。ここで別行動をとるのは得策ではない。モヤモヤしながらも付いていくケイト。
そのケイトを救出すべく行動をするレイアたちはティーチの指示で海に出ていた。
ティーチを柱に縛り付け、甲板に出て話し合いをする。
「奴の話、信用できるか?」
リザベルトが不信な顔をして、横目でティーチを睨み付ける。
「常識的に考えて罠でしょうね」
リースも疑いを持つ。
「そうですわね。どんな敵が待ち受けているかわかりませんわ」
セシルは既に恐怖で身を震わせている。
レイアは縛り付けられているティーチのもとへ足を運ぶ。
「本当なのですか? ケイトちゃんが組織の島へ運ばれたというのは」
「ああ、本当さ。そもそも俺はケイトを連れ戻すために行動したんだ。何もおかしい点は無いだろう?」
確かに。そう思うレイア。だが、たとえその話が本当だとしても敵の本拠地に乗り込むなど到底出来ない。こちらの全滅は目に見えていた。
「どうするんだ、レイア? 乗り込むと言うなら私は命を懸けて君たちを守る」
リザベルトは見えてきた小島に向けて剣を突き出す。
「すこし、考えさせてください」
レイアは頭を抱える。
(ケイトちゃんはあそこに居るのかもしれない。しかも立場的には裏切り者……きっとまともな扱いは受けていないでしょう。ですが敵の巣窟にわたくしたちだけで乗り込むなんて自殺行為。そもそもあそこは本当に組織の施設なのでしょうか? 見たところそれほど大きなからだが島には見えませんが……)
頭をフル回転させて考えるレイアだが、答えは見つからない。
「レイア、考えても仕方ありませんわ」
追い詰められたレイアの表情を見てセシルが声をかけてくる。
「たとえあそこにケイトちゃんがいらしたとしても、わたくしたちだけでは助け出せませんわ。無理に乗り込めば助けられるものも助けられません。一度ヴァルキリア邸に戻るのがよろしいかと思います」
「ですがケイトちゃんが!」
そこまで言って言葉を詰まらせるレイア。セシルの体はとても震えていた。もちろん恐怖もあるのだろう。レミィたちと交戦し、組織の恐ろしさを身に感じたセシルにとってあの場所がどれ程恐ろしいかは想像がつく。ただそれだけではないだろう。ケイトと共に行動していながら守れなかった、自分より年下の女の子をみすみす拐われてしまった。自分自身の不甲斐なさに腹をたてているようだった。
「引き返しましょう。ケイトちゃんの居場所はわかりました。準備を整えてから改めて乗り込みましょう」
レイアの提案に賛成する一同。しかしそれを聞いて黙っていない男が一人。
「いいのか? ケイトを救うチャンスだぞ?」
ティーチから不適な笑みが消え去り、敵意だけがむき出しになる。
「ええ。ここでわたくしたちが全滅するわけにはいきませんから」
「そうか、なら俺もやるべき事をやらねばな」
そういうとティーチは拘束を無理やり引きちぎる。
「な! 貴様、部下たちがどうなってもいいのか!」
急いで剣を構えるリザベルトとリース。
「良くはない。ここで全滅してもらおうと思ったが、引き返してあの女でも呼ばれたら事だ。俺も覚悟を決めるとしよう」
ティーチは拳を構える。急いで逃げようとするレイアだったが、ティーチに捕らえられ人質にされてしまう。
「動くな! ここから先は言わなくてもわかるな?」
ティーチはレイアの首に手をかける。
「何が望みだ……」
リザベルトが剣を構えたまま尋ねる。
「帝国軍の収容所へ向かえ。イバルたちはそこにいるんだろう?」
まさかの発言に驚くリザベルト。
「何だと? 何の根拠があってそんなことを言っている」
困っている様子のリザベルトを見て確信するティーチ。
「レミィたちがヴァルキリア邸に向かったはずだ。イバルたちがそこにいて、なおかつ奪還に成功したのなら何かしらのアクションを起こしているはずだ。それがないということは奪還に失敗したか、そもそもそこにイバルたちは居なかったということだ」
得意気に話すティーチ。
「収容所に居るという根拠にはならない。我が屋敷に捕らえられているかも知れないだろう!」
「俺ならいつまでも屋敷に置いておいたりはしない。それに何よりお前のその態度が正解だと言っている」
「っ!」
リザベルトを鼻で笑うティーチ。
「さぁお前たちに拒否権はない。すぐに向かえ」
素直に従うリザベルト。船はモルガント帝国重要施設の一つ、モルガント収容所へと向かって進み出した。




