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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
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episode 149 「戦争孤児」

ゲイリーから逃げ惑う子供たち。力の差は明らかだ。一度捕まってしまえば二度と逃れることはできない。倒すためには力を合わせ、一体ずつ倒していくしかない。ケイトは皆に聞こえるように大きな声で叫ぶ。



「皆聞いて! 私はケイト! この人たちを倒すには力を合わせるしかない! 私に力を貸して!」



ケイトの声は聞こえているはずだ。だが誰もケイトの方に振り向こうとはせず、反応も示さない。



(ケイト、何を企もうとも無駄だ。このガキどもはセルフィシー王国とモルガント帝国との間の戦争に巻き込まれた小さな国の出身だ。その国は戦場となり、僅か1日で焼け野原と化した。この世の地獄を見たのさ。やつらは他人に心を開かない)



子供たちに次第に疲れが見えてくる。それに対してゲイリーは機械だ。衰えを知らない。



「皆! このままじゃやられちゃう! 話を聞いて!」


ケイトは諦めずに叫び続ける。



七人の子供たちにの内の一人、ケイトと話していた子供を殴殺した少年だ。外見は十五ほどだろうか、青い髪を持ったその少年は一人の少女をかばって戦っているようだった。


青髪少年の髪はは返り血で所々赤みを帯びているが、少年の後ろの少女は一切血を浴びておらず、傷一つついていない。


だが少女は両腕がなかった。戦争で両親と共に失ったのだ。


青髪の少年にはまだゲイリーを避け続けるだけの体力は残されていたが、少女にはそれがなかった。庇いながら避け続けるのには限界がある。


「協力しないと!」


ケイトの叫びにイライラし始める少年。


「……さいんだよ」

「え?」

「うるっさいんだよ! よそ者のガキが話しかけてくるな! とっととぶっ殺されちまえ!」



ゲイリーから目を離し、ケイトを怒鳴り付ける少年。目の前の敵に集中しなければどうなるかは分かっているはずだった。


ゲイリーの容赦ない一撃が少年を襲う、寸前のところで気付き、避ける少年。だがそのゲイリーの拳の先には少女の姿が。


「しまっ!」

「あぶない!」


とっさに助けに入るケイト。少女はケイトに突き飛ばされ、少年によって受け止められる。だがケイトはゲイリーの拳をもろにくらってしまう。


鈍い音がして吹き飛ばされるケイト。



「何で……」



少年は気を失っている小さな少女を不思議そうな顔で見つめる。他で逃げまとう子供たちもこちらに気がついたようだ。



「放っておけば生き残れたかもしれないのに……」



ゲイリーは気を失っているケイトの方へと進んでいく。


「バカなやつだ」


見て見ぬふりをする少年の体にぶつかる両手のない少女。


「シアン……いいの?」


シアンと呼ばれる青髪の少年はその言葉をうけてケイトの方へと顔を向ける。


「パステル、だがアイツは敵だよ?」

「敵は命を救ってくれないよ?」


パステルと呼ばれた少女を見つめるシアン。



「いいの? 友達になれるかもしれないのに……」



次の瞬間にはシアンは石をつかみ、ゲイリーに向かって投げつけていた。



「こっちだデカブツ! かかってこい!」



石と声に反応してゲイリーはシアンの方へと走ってくる。シアンは逃げながら他の子供たちに向かって叫ぶ。


「フォーン! クロム! エクリュ! フォリッジ! ヘレン! 殺し合いは一時休戦だ! まずはこのデカブツどもを片付ける! あの子供を守れ!」


ケイトを指差しながら叫ぶシアンに耳を傾ける子供たち。ケイトの時とは違い、子供たちはシアンの話を聞き入れる。


「これで満足か? パステル」

「うん!」


嬉しそうに笑うパステル。


「来るぞ! ちゃんと後ろに隠れていろよ!」



ゲイリーたちが迫り来る。



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