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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
148/621

episode 148 「コロシアム」

勢いよくコロシアムに転げ落ちるケイト。一斉にこちらに注目が集まる。


「ぎゃぁぁぁぁ」

「おかあさぁぁあん!」

「死にたくないよぉ」


悲鳴がコロシアムにこだまする。


久しく感じていなかった死の臭い。複数の殺意が入り交じり、突き刺さる。木の枝や石など、およそ武器とは言えない物を使って繰り広げられる死闘。そこにケイトも降り立ったのだ。


ケイトに気がついた子供が襲いかかってくる。



「まって、やめて!」

「じゃあ死んでよ!」



ケイトの言葉など意に介さず襲いかかってくる子供たち。相手は素人の子供。避けるのは簡単だが、いかんせん数が多すぎる。そして何よりも目の前で行われている惨劇に心がすり減らされていく。


それでもケイトにできることは自分に襲いかかってくる子供を避け続けることだけだった。


次第に子供の数は減っていく。それとは逆に死体の数はどんどん増えていく。



「そろそろ大詰めだな」



外から戦況を見つめるエクシル。


ケイトを含め、生き残った子供は既に十人を下回っていた。さすがにここまで生き残っただけのことはあり、むやみやたらに突っ込む者はおらず膠着状態が続く。



「おねぇちゃんさあ、全然攻撃してこないけど殺る気あんの?」



一人の子供がケイトに声をかけてくる。最初に襲いかかってきた子供だ。その子供から放たれる殺気は既に素人のものではなく、目付きも殺し屋のそれだった。



「もうやめよう! 回りを見て! こんなことしてなんになる!」


ケイトの言葉を聞いて回りを見渡す子供。そして突然笑い出す。


「うはははは! すごい、すごいよ! これ僕が殺したんだ! そして僕は生きている!」



それが仇となったか、その隙を他の子供につかれてしまう。次の瞬間後ろから石で殴打され崩れ落ちる子供。


一度隙を見せたらそれで終わりだ。あっという間に見るも無惨な姿に変えられてしまった。



「次」



その子供の服は元が何色だか分からなくなるほど返り血を浴びていた。



「ほぅ、いい目をしているじゃないか。残虐性も申し分ない。もう彼に決めてしまおう」


エクシルがパチンと指を鳴らす。するとコロシアムの扉が開き、数人の影が現れる。


現れた影は何の躊躇もなく子供たちの死体を踏みつけながら向かってくる。



「ゲイリープロトタイプだ。やつほど強くはないが、やつほど自由が聞かなくもない」



ゲイリープロトタイプは残った子供を排除すべく襲いかかってくる。しかし子供たちは慌てふためかず、叫ばない。


(何、あれ。私じゃとても敵わない)


ケイトはゲイリーの強さを肌で感じとり、立ち向かうのをやめて距離をとる。子供たちも様子をうかがっているようだ。


「ほらほら、ゲイリーを倒した者は無条件で合格だ! 行け!」


しびれを切らしたエクシルがさけぶが、子供たちはケイト同様に逃げるばかりで立ち向かおうとはしない。



「フン、さすがに勘のいいガキどもだ。だが気に食わん」



エクシルは手元のスイッチを押す。するとゲイリーは今までの統率されたような動きをやめ、各々自由に子供たちを襲い始める。


(こうなると制御が効かない。せいぜい命の徒花を咲かせて見せろ)


当初の目的を完全に忘れ、目の前のショーを楽しむエクシル。その姿は組織の司令塔ではなく、完全に一人の残虐な男と化していた。


予測できないゲイリーの動きに次第に対応できなくなる子供たち。


(このままじゃ、やられちゃう! 敵は四人、私たちは八人。協力すれば勝てるかも知れない……)


ケイトは子供たちを一人一人見つめる。ほとんどはケイトよりも年上だろうが、年下の者もいる。



(でも……)



ケイトを除いた七人はみなここまで生き残っている。それはつまり殺し続けてきたということである。自分以外は敵、そんな状況で果たして協力などできるのだろうか。



だがやらなければ殺られてしまう。ケイトは勇気を出して子供たちの方へと駆け出した。




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