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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
144/621

episode 144 「仲間」

ローズは目の前の年端もいかぬ少女の剣術に度肝を抜かれていた。


(驚いたな。見たところまだ十代じゃないか。組織とやらの育成力、認めざるを得んな)


「あなた、なかなか強いですね。正直面倒です。屋敷の他の人に手は出しませんので死んでくれませんか?」


アンはめんどくさそうに頭に手を当てる。


(人間性は欠落しているがな)




レミィとバルトは屋敷をくまなく探索する。しかし怯えた使用人たちが隠れているのみで、イバルたちの姿はどこにも見当たらない。


「居ないわね……もう別の所に移されたのかも。いや、そもそも捕らえられてさえ居ないのかもしれないわね」


レミィが空き部屋のベッドに腰掛けながら話す。


「そうだな、憂さ晴らしにこの屋敷の連中皆殺しにでもするか?」

「バカ言ってるんじゃないわよ。アンが相手してたあの女、あいつもかなりのやり手よ。返り討ちにあうのが落ちよ」


部屋においてあったお菓子をむさぼりながら軽口をたたくバルトを咎めるレミィ。



「だけどよ、俺たちここまでコケにされてるんだぜ? おまけに仲間まで捕らえられたかもしれないんだ。黙って去れってのか?」

「私だって悔しいわよ。でもこの世は実力がすべて。教官がいつも口を酸っぱくして言っていたでしょ? 私たちのやることは二人を救出すること。ここに居ないのだとするなら探す場所を変えましょう」



そう言うレミィだったが、実際は不安で押し潰されそうだった。信頼していたティーチは捕らえられ身動きがとれず、まとめ役のイバルは行方不明。五人の中で最高の戦力を誇るアンは制御が効かない。そのアンでさえ苦戦する敵が複数人存在する現状。


(私たちはもう終わりかもね)


そんなことさえ思い始めていた。



うつむくレミィの肩に手をおくバルト。


「しっかりしろや。俺はバカだけどお前は違うだろ? だから俺はお前を信じて進む。頼んだぜ?」

「バルト……」


バルトはベッドに座るレミィに手を差しのべる。その手をとって気持ちを引き締めるレミィ。



「まさかあなたに励まされるとはね。わかったわ。まずはアンと合流してここから抜け出しましょう」

「あいつが素直に従うかね?」


アンの性格はいやと言うほど思い知っているバルト。アンは邪魔をされることを何よりも嫌う。



「そうね、でも私たちの目的達成にはアンの力が必要よ。ここで置いていくことは出来ないわ」

「そうだな。あいつつえーからな! もしかしたらもう倒しちまってるかもな!」


淡い希望を抱きながらアンのもとへと急ぐ二人を待っていたのは、一方的に打ちのめされて地面を這いつくばるアンの姿だった。



「く、くそぉぉ」


アンは自らの血で床を汚しながら、それでもなおローズのいる方へと這っていく。


「五年、いや三年後なら勝負は分からなかったかもしれない。それゆえに残念だ。お前はここで終わる」


ジャンヌは向かってくるアンに向けて剣を振り上げる。


(足が、動かない。負けるのか、また負けるのか私は!)


ジャンヌに引き続き、ローズにもまったく歯が立たず、敗北感を感じるアン。


(教官、すみません。あなたを救えません……)


緊張の糸が切れたのか、急にティーチの顔が脳裏に浮かぶアン。自分の力のなさとふがいなさと寂しさに涙が溢れ落ちる。突如現れた年相応の少女の顔に一瞬ためらうローズ。とても僅かな時間だったが、その時間がなければアンの体は両断されていただろう。


「レミィ! バルト!」


間一髪でローズの剣を受けるレミィとバルト。


「何してるんですか! 手だしはしないでと……」

「うるせぇ! 黙ってろガキが!」


アンに向かって怒鳴るバルト。



「邪魔して悪いけどよ、文句言うなら後にしてくれよな」

「そう言うこと。まずはこの女を何とかしましょう」


ローズは二人から距離をとる。明らかに一人一人の力はローズに劣る。力を合わせたとしても難なく切り抜けられるだろう。しかしローズは距離をとらざるを得なかった。驚異、そう思わせるだけの覚悟がレミィとバルトから感じられたからだ。



「いい目をしているな。殺し屋にしておくのは勿体ないくらいだ。私はローズ。お前たちの名は?」


ローズは二人を敵として認める。


「光栄ね。私はレミィ。ティーチ教官の為、あなたには死んでもらうわ」

「俺はバルト。そういうこった、恨みはねぇけど殺らせてもらうぜ」


アンも二人の姿を見て感化されたのか、再び立ち上がる。


「まったく、足を引っ張らないでくださいね!」



三人は初めて協力し、強敵に立ち向かう。


「見ててください! 教官!」






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