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スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
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episode 141 「アン」

ティーチは屋敷を出てからずっと不適な笑みを浮かべていた。リザベルトとセシルはティーチと目を合わせないよう、戦闘を歩く。リザベルトの足はまだ芳しくなく、時々セシルの手を借りながら引きずって歩く。


「済まないセシル。君に迷惑をかけてしまって」


申し訳なさそうにするリザベルト。


「気にしないで。謝る必要はありませんわ。悪いのはあのおじさんですのよ?」


リザベルトと接する機会が増え、距離が短くなったことに少し喜びを感じるセシル。



リースとレイアはティーチの後ろを歩き、ティーチを監視している。今のところジャンヌの念押しもあって妙なそぶりは見せてはいないが、相手は組織の殺し屋だ。信用ならない。一瞬の気の緩みが全滅を招くことになるかもしれない。



「そう怖い顔をするな。お前たちを陥れたりはしない。こちらにも譲れないものがあるからな。しばらくは協力してやる」


ジャンヌの顔がちらつくティーチ。


(あれは相当人を殺してきた者の顔だ。おそらく俺たち殺し屋以上にな。でなければあの若さであそこまでの目が出来るはずがない)


そのジャンヌにイバルとスパーダの身柄を拘束されている以上、下手な行動にはでられなかった。


ティーチの案内で港へとやって来たレイアたち。そこにはレミィ、バルト、アンの姿があった。



バルトとレミィは未だにジャンヌとの戦いの傷が癒えてはおらず衰弱ぎみだったが、比較的元気なアンがティーチに気付き、声をかけてくる。



「教官! 生きていらしたんですか! よかった!」



駆け寄ってくるアンに警戒し、剣を抜くリザベルトとリース。それに気がついたのか歩みを止め、同様に剣を抜くアン。


「あなた方は屋敷に居た……教官に何をしているんですか?」

「まだ居たのか……姉上が戻る前にとっとと消え失せることだな」


一触即発のアンとリザベルト。



「やめろアン。イバルとスパーダの命がかかっている」

「そうですか。なら二人のことは諦めましょう!」


斬りかかるアン。リザベルトとリース二人がかりでそれを受け止める。


「相変わらず弱いですね!」


アンは更に力を増す。


「やめろ! アン! こいつらに手を出すな!」


ティーチが必死に叫ぶが、アンは興奮しきっており、まったく耳に入っていない。


「ちょっと、あなた! 上司なんでしょ? 部下の面倒くらいきちんと見てくださる? それとも裏切るつもりかしら?」


セシルがティーチを責める。


「アンはいちどああなったら回りが見えなくなる。実力はエージェントと遜色ないが昇進できない原因はそこにある」

「何冷静に分析しているんですか!」


レイアは戦いを止めようとするが、とても間に入ってはいけない。


(こんな時、ゼロさんが居てくだされば……)





ゼロたちはその頃ハウエリスに到着していた。



「戻ってきたな。どうすんだ? すぐにグリフィーに向かうか?」


すっかり二日酔いがなおり、元気を取り戻したフェンリーがゼロに尋ねる。


「無論そのつもりだ。一刻も早くアーノルトを倒し、組織を壊滅させる」

「壊滅とは大きく出たわね。そんな事本当に出来ると思ってるのかしら」


現実味を帯びないゼロの言葉に難色を示すニコル。


「確かにそうだね。少なくともエージェントをすべて殺さないと不可能な案だ」


ワルターもニコルに同意見の様だ。


「残るエージェントはA、C、H、I、J、P、Q、R、T、U、V、Xの12人。非戦闘員のエクシルを除けばたったの11人だ。決して不可能な数ではない」


さらっと言い放つゼロだが、それぞれ組織屈指の殺し屋だ。


「何人か知らない者もいるな。ゼロ、お前は全員と面識があるのか?」


ほとんど他のエージェントと関わりのなかったオイゲンがゼロに尋ねる。


「いや、俺よりもフェンリーの方が詳しいのではないか?」

「たしかに俺は古株だけどよ、途中で組織を抜けてるんだぜ? そこまで詳しくは知らねぇ。だがな、エージェントのなかに雑魚は一人もいねぇ。それだけは覚えときな」


フェンリーは全員に釘を刺す。




「あら、お揃いね。探す手間が省けたわ」



聞き覚えのある声と共に数本の矢が雨のように五人に降り注ぐ。


「ニコル! 」

「ええ!」


ワルターはニコルを自分の後ろに下がらせ、リースから受け取った剣を抜く。ニコルはワルターに意識を集中させ、術にかける。


(なんだ、この剣は……)


剣が帯びる電流がワルターの体の中へと流れてくる。ニコルの術と相まってワルターの体は全盛期以上に軽やかに動く。


「ハハ! これはすごい! まるで羽が生えたようだ! 生えたこと無いけどね!」


矢を次々と薙ぎ払うワルター。ワルターが処理しきれない矢もきっちりとゼロが打ち落とす。


「こりゃ俺たちの出番はないな」

「まったく、凄まじい若者たちだ」


フェンリーとオイゲンはワルターの先にいる敵を見据える。


ようやくすべての矢を薙ぎ払うと、敵の姿が露になった。


「おや? 君はあの時の。もう怪我はいいのかい?」


ワルターは現れた弓を構える女性に声をかける。


「ええ。あの時は助かったわ。でもそれとこれとは話が別よ」


女性はギロリとワルターの背後にいるニコルを睨み付ける。


「よくも私を陥れてくれたわね、ニコル。ここで殺してあげる!」




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