表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第四章 激突
138/621

episode 138 「力の差」

「私たち、何だか髪型が似ていますね? お下げのよしみで死んでくれませんか?」

「黙れ!」


アンとの会話を拒絶し、斬りかかるリース。渾身の力で剣を振り下ろすも、簡単に受け止められてしまう。


「くっ!」

「太刀筋がまっすぐですね。そういうの嫌いじゃないです。すごく殺りやすいので」


アンはリザベルトの剣を薙ぎ払う。その剣はとても重く、同期の誰よりも鋭かった。


(くそ! なんで殺し屋なんかに私たちの鍛練が負けるの?)



「軍人と言ってもこの程度か。これではとても経験値を積むことは出来ないな」


高見の見物を決め込むティーチ。荷物からりんごを取り出し、のんきにかじっている。


「アン! もういい。そいつの底は見えた。さっさと殺せ」

「はい、教官!」


元気よく返事をするアン。それと共にアンの太刀筋はさらに進化する。


「残念ですが、これであなたとの戯れも終わりです。来世ではもっと強くなれるように祈っていますね」


最早アンの剣を見切ることはリースには不可能だった。圧倒的な実力差でジリジリと壁際に追い詰められていく。



(こちらはもう勝負がついたな。さて、スパーダはどうなっている?)


アンから目を離し、スパーダの戦況を見るティーチ。


「ひぃ! や、やめてくれぇ!」


リザベルトに剣を向けられ、泣き叫ぶスパーダ。


(駄目か)



ティーチは頭に手を当てる。


(潜在能力は決して低くはない。だが、あれは殺し屋としては致命的だ。相手にダメージがあるとはいえ、ここは厳しいか……)


ティーチの懸念した通り、スパーダは動くことすら出来ない。ティーチはスパーダに檄を飛ばす。


「スパーダ! 目をつぶれ! 相手の殺気で位置を感じとるんだ!」

「は、はいっ!」


スパーダはポケットからアイマスクを取り出し、装着する。するとスパーダの震えはピタリと止まる。


「またか。だが、こちらとしてもこの方がやりやすい!」


スパーダに飛び掛かるリザベルト。




「遅いぜ?」




スパーダの姿がスッと消える。


「何!」


次の瞬間、リザベルトは腹に衝撃を受け、後方へと吹き飛ばされる。


「ふしゅー」


スパーダは拳を前に突き出している。


リザベルトの足は傷口が開き、血が吹き出す。激しい痛みに悶えながらも、剣を杖がわりにして立ち上がる。


(まったく見えなかった……それにこの威力。本当に先程までの怯えていた男か……)


リザベルトは腹をさすり、ダメージを確かめる。


「オラオラ! どうしたかかってこいよぉ!」


スパーダは先程とは打って変わって強気に出る。



リースも防戦一方で、まったく勝負になっていない。リザベルトは立っているので精一杯だ。



「正直がっかりだよ兵士諸君。訓練になると思い、研修生どもを連れてきたが、これでは意味がない。さあ二人とも、さっさと殺してイバルたちの報告を待つとしようか」


ティーチは重い腰を上げる。と、同時に異質な気配を察知する。


(なんだ、この悪寒は)


その気配はどんどん大きく、近づいてくる。


(明らかに常人ではない……一体どこから)



バタと屋敷の扉が開く。



「アン! スパーダ! 気を付けろ、何かが!」


ティーチが声を張り上げたときにはすでに遅かった。


突如部屋に入ってきた影は瞬く間にアンとスパーダを薙ぎ払い、リースとリザベルトを救出する。


「ジャンヌさん!」

「姉上……申し訳……」


リースとリザベルトの頭をくしゃっと掴むジャンヌ。


「謝るのは私の方よ。ごめんなさい、遅くなって。でももう大丈夫」


ジャンヌは二人を下がらせる。


何が起きたのかまったくわからないアンとスパーダ。ティーチだけが戦慄していた。


(エクシルめ頭がおかしくなったのか? この女を勧誘しろだと? ふざけるな、この女は化物だ)


後退りをするティーチとは反対にアンは剣を、スパーダは拳をそれぞれ突き当てる。


「あらあなたたち、案外タフね。一応手加減はしていないのだけれど」

「いたい、いたいです! ですからお返しさせていただきますね」

「く、くそ、あんたも剣を持ってるのか?」


一気に襲いかかる二人だが、またもや何もできずに突き飛ばされる。


「そこのおじさんがティーチでしょ? あなたたちに用はないの。逃げるのなら追わないわ。おじさん、あなたはもちろん殺すけど」


ジャンヌはアンとスパーダに目もくれず、ティーチに鋭い眼光を飛ばす。それはまさに殺し屋の殺気、いやそれ以上だった。



ティーチは運命を悟り、アンとスパーダに語りかける。


「アン、スパーダ。お前たちはイバルたちと合流して本部にもどれ。それとこの件には関わってはいけないとエクシルに伝えるんだ」


何か言いたそうなアンとスパーダだったが、ティーチの本気の目を見ると、何も言わずに頷き、屋敷を出ていく。


「懸命ね。一応無駄な殺しはしたくないから助かったわ。もちろんあなたは助からないけど」


ボロボロのリザベルトの足を見てティーチに冷たく言い放つ。


ティーチは椅子に腰かける。


「ああ。失敗だったよ。教官として失敗だ。レイリー殺されたのにも納得がいく」

「これからあなたを殺すけど、一応してみる? 無駄な抵抗とやらを」


ティーチは目をつぶる。


「いや、無駄なことはしない主義だ」

「そう。気が合いそうね」




外で待っていたレイアが部屋の中を覗くと、もうすべてが終わっていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ