episode 134 「ティーチ」
ケイトたちの前に現れた謎の男、ティーチ。彼は組織の教育係だった。その実力は底が見えず、リザベルトを難なく倒す。ケイトとセシルもやられてしまい、三人は薄暗い倉庫へと連れていかれるのだった。
レイアはリザベルトと手分けして色々なショップを回っていた。だがどこにも二人の姿はない。
「一体どこへ行ってしまったのでしょうか?」
それもそのはず、リザベルトを含めた三人は港の倉庫に監禁されていた。
いち早く目を覚ましたリザベルトが辺りを見渡す。真っ暗で何も見えず、体も動かない。どうやら縛られているようだ。
(あのティーチと呼ばれた男、まったく歯が立たなかった。またなのか、また私の剣は役に立たないのか)
リザベルトが唇を噛み締めていると、倉庫のシャッターが開く。現れたのはティーチだった。
「なんだ、もう目が覚めたのか。女とはいえさすがは軍人だな」
外は日が落ち始めているのか、それほど明るくはない。
(一体私はどれほど気を失っていた? レイアは無事か? 屋敷の方はどうなっている?)
色々考えるリザベルトの頬を触るティーチ。
「さ、触るな下衆が!」
「ツレないな。なかなかしごきがいのある表情だ」
ティーチは剣を抜き、リザベルトの足につき当てる。
「何の真似だ」
「いまからお前にいくつか質問をする。お前は素直に答えるんだ。もし俺の気を害することがあれば……」
ぐさり
「うっ!」
「こうなる」
ティーチの剣が一センチほどリザベルトの肉体に食い込む。
「さて最初の質問だ。お前は俺たちの仲間になるか?」
「ふざけるな」
ぐさり
「うぁ!」
また刃がリザベルトに食い込む。
「なるほどな。では次の質問だ。お前は俺たちの仲間になるか?」
「くどい! ならないと言っている!」
ぐさり
「あっう!」
ぬちゃりと刃に血がまとわりつく。
「見上げた根性だ。では次の質問だ。お前は、俺たちの、仲間になるか?」
ケイトが目を覚ますと辺りは血の臭いが充満していた。
「ケイト、遅いぞ。せっかくの見所が……」
リザベルトは痛みで再び声を気を失っていた。足には無惨な刺し傷が残り、血が溢れていた。
「ひどい……」
ケイトはリザベルトから目をそらす。
「ひどい? それはお前のような奴のことを言うんだ。せっかく手塩に描けて育てたというのに裏切るなんて」
ティーチはがしっとケイトの頭を鷲掴みにする。
「戻ってこい。エクシルには俺からきちんと伝えておく。なにか文句があるやつは俺が殺す」
断れば殺される。そんな殺意がティーチの指先から伝わってくる。しかしケイトはきっぱりとティーチに告げる。
「いや。私は、きめたの。私に手を差しのべてくれたあの人たちについていくって」
その言葉を聞いて、ティーチはケイトの頭から手を離す。
「そうか。お前は昔から頑固だったからな。先手を打っておいてよかった」
「?」
ティーチはポケットから写真を一枚取り出し、ケイトに見えるように投げ捨てる。ケイトはその写真を見て息を詰まらせる。
「おばあ、ちゃん……」
写真には一人の老婆が無惨な姿で写し出されていた。それはケイトが世話になっていた老婆だった。
「次は誰を殺して欲しくない? 兵士か? それとも無様に気絶し続けているそこの女か? はたまたその手を差しのべてくれたとかいう連中か?」
「……さない」
「何か言ったか?」
「許さない!!」
ケイトから強烈なさっきが放たれる。それを気持ち良さそうに浴びるティーチ。
「そうだ! そのいきだ! 思い出せ!」
そう言ってティーチはケイトのロープを解く。ケイトはその解かれたロープを持ち、ティーチに飛び掛かった。
「お前は私が、殺す!」
「いいぞ、久しぶりに手合わせしてやろう」




