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スティールスマイル  作者: ガブ
第一章 ゼロとレイア
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episode 13 「VSジャック」

ゼロは10年ぶりに死を感じていた。それも自らの死ではなく大切の人の死。ジャックに勝つ手段がまったく思い付かなかった。


ジャックは組織の中でもよく知った人物だ。ゼロとしては特に友好的に接していた訳ではないが、ジャックは何かとつけてゼロに絡んでいた。同じ武器を扱う者同士、引かれる部分があったのかもしれない。何度も何度もジャックはゼロに勝負を挑み、その度に紙一重で勝利し続けていた。殺しの仕事では無かった為、ゼロとしては本気で掛かっていたわけでは無かったが、決して手を抜いていたわけではない。単純な射撃の腕は明らかにあちらが上だった。そして今回の勝負は恐らく単純な射撃の腕を競うものだろう。


着々と勝負の時は迫っていた。いくら考えを巡らせても、尽く打ち砕かれる。なす術が無いとはこの事なのだろうと、若干の諦めも見え始めたゼロにレイアが声をかける。


「大丈夫ですよ。ゼロさんなら勝てます」


レイアの励ましが余計ゼロを不安にさせる。俺はこの笑顔を守ることができるのか? 無様に敗北し、殺されるのを見ているしかないのか?


結局不安は拭いきれないまま、大会が始まった。


「皆様! 大変お待たせいたしました! ただ今より射撃大会を開催いたします!」


主催者の発表によると参加者は32人。使用されるのはペイント銃。弾を当てられたら敗北というシンプルなものだ。予選はバトルロイヤル形式。一斉に打ち合い、3発当たったものから順に抜けていく。8人になったところで終了。本選は残った8人でのトーナメント形式。一対一での対決となる。


参加者たちは気合いをいれ、試合開始の合図を待つ。どの者も気迫に満ちており、とても素人とは思えない。その中でもひときわ目立つ気迫を持った青年は、丹念に支給された銃のチェックを行っていた。


選手たちはコロシアム風の舞台に案内される。ある程度障害物は設置されているが、身を隠せるほどのものではない。せいぜい一時的に目線を避けることぐらいしかできないだろう。それでも無いよりはましと、ほとんどの選手は障害物の影に身を隠しながら開始の合図を待つ。


「それでは開……」


シュパパパパ


一瞬の出来事だった。開始の合図と共に風が会場を駆け巡る。


「は?」


気がつくとゼロ以外の全員が身体中にペイント弾を浴びていた。


「さあ、無駄な手間は省いてやった。お望み通り一対一で勝負してやる」


戦慄した。何も見えなかった。やられた他の参加者達も、当然何が起きたのかまるでわかっていなかった。例の老人も目を丸くしながらその場に立っている。


「な、何が起きた!? 参加者二人を残して全滅してしまいました!」


実況も何が起きたのか分からず、ただありのままを話す。予選はあっという間に終了してしまった。


「で、では本選に勝ち進んだ選手たちを紹介します!……二人しかいませんが」


予定していた段取りが台無しになり、納得のいかない様子の実況。そろでも気を持ち直し、職務を全うする。


「気を取り直していきましょう! まずはご存じのかたも多いでしょう、出場した大会5回全てで優勝をかっさらった伝説のガンマン! ジャック!」


ジャックに拍手が送られる。熱狂的なファンもいるようだ。ジャックもそれに応えるように両手をあげて笑顔を振り撒く。


「続きましては今回が初出場! かわいいお嬢さんを引き連れた流浪のガンマン! ゼロ!」

「頑張ってくださーい!」


実況の声も、レイアの声援もゼロの耳には入ってこない。この絶望的な状況が逆にゼロを冷静にさせていた。ジャック以外全てが視界から消え去る。ジャックもこちらを見据えている。


「では、もういっちゃいましょう!本選開始!」


ジャックの周りの空気が震える。次の瞬間ジャックの姿がその場から消えた。それと同時に数発の弾が放たれる。それは他方向からゼロに向かって飛んでくるが、それはゼロに着弾すること無く地面へと落ちていく。ジャック本人の姿は黙視できないが、放たれた弾の軌道自体は確認できる。確認できれば避けることはゼロにとってそう難しいものではない。


「ああ、やっぱり実弾ほどスピードはでねぇか。でもゼロ距離なら関係ねぇよな」


後ろからジャックの声がしたかと思った次の瞬間、背中に緑のシミができる。と、同時にジャックにも同様の赤いシミができる。


「やるじゃんか」

「貴様にレイアは渡さない」


目の前で起こるあり得ない戦いに、会場は湧きに湧いた。


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