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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
123/621

episode 123 「力と力」

ヒエロは自室にてクイーンたちの報告を待っていた。


クイーンとヤンが屋敷を出てから既に一時間が経過していながら一切の連絡が無いことに焦りと苛立ちを感じる。合流予定のゲイリーに至っては顔すら見せない。


(何をやっている……私の出世はどうなるというんだ)


「ラティック! ラティック!」


ラティックの名を呼ぶヒエロ。しかしその声は屋敷内にむなしくこだまするだけだ。



ガチャ


静まり返る屋敷内に扉の開く音がする。


「クイーンか!」


急いで部屋を飛び出すヒエロ。しかし現れたのはクイーンではなかった。



「だ、誰だお前は……」


真っ赤に燃え上がる紅い髪を持ったその男性は人差し指をヒエロに向ける。指先に小さな火が点ったらかと思えば、それは線となってヒエロの胸を貫く。


「カッ」


乾いた声を発するヒエロ。それが彼女の最後の言葉となった。一瞬の内に体は燃え上がり、それはやがて屋敷へと燃え移る。


男はすべてが終わったことを確認すると、逆立つ紅い髪をなびかせながら屋敷を去っていった。





違和感を最初に感じ取ったのはフェンリーだった。


(何だ……空気が変わった?)


違和感の感じる方に目を向けるとやがてそこには火柱が上がった。


「ありゃ、まさか……」


すぐさま走り去るフェンリー。


「どこへ行くんだい!」


ワルターが追いかける。ゼロもすぐさま追いかけようとするが、そこでまたもやオイゲンが手痛い一撃を浴びてしまう。


「ガーハハハ! なにやら動きがあったようだが、そんなことは関係ない! さあ! さあ!」


よろめくオイゲンにラッシュを仕掛けるゲイリー。鈍い音が林に響く。


「くそ!」


ゲイリーの後ろから攻撃を仕掛けるゼロ。金属音と火花が上がる。


「うっとうしいわ!」


ゼロに向かって衝撃波を放つゲイリー。こばえを払う程度の動作から繰り出されるとてつもない威力。もし避け損ねれば大ダメージは免れない。


ゼロの方を見た一瞬の隙をついてオイゲンも強烈なパンチをゲイリーのボディに与える。

金属のボディがへこみ、口からオイルのようなものがこぼれる。


「グッ! やりおる。単純な殴り合いではお主の方が上か……」



ゲイリーは腰を落とし、右腕にパワーをためていく。


「この技を使えば俺はしばらく動けん。だがその分威力はあるぞ。お主に受ける覚悟はあるか?」

「来い」


オイゲンも残された右腕に力を込める。


「ガーハハハ! お主ならそういうと思ったわい!」



二人の間でとてつもないエネルギーが生まれる。木々がざわめき、空気が震える。


繰り出される両者の拳。発生した風圧で吹き飛ばされるゼロ。


拳が接触した瞬間、一瞬時が止まる。次の瞬間、辺りを爆音が包み込む。


「ぐぁぁぁぁ!」

「ぐぉぉぉぉ!」


悲鳴にもにた雄叫びを上げる両者。木々は根っこから吹き飛び、辺りは更地となる。


メキメキ、バキバキと音がする。ゲイリーの腕はめちゃくちゃな形に変形し、オイゲンの骨は真っ二つに折れる。


爆風と爆音がしずまると、両者はその場に倒れこむ。


「ガーハハハ! この攻撃を受けきったのはお主が初めてだ! 俺はもう動けん! 殺せ!」


ゲイリーの胸が開き、中からコアが姿を表す。


「ゼロ、生きているか……」


オイゲンも両手はボロボロ、足はガクガク。ゲイリーに止めを指すだけの力は残されていなかった。


「ああ。よくやってくれた。あとは俺に任せろ」


戦いの余波をうけて傷だらけのゼロが倒れている二人に近づく。そして無防備なゲイリーに銃を向ける。


「済まんな。ゼロ」

「いや、謝るのは俺の方だ。お前に対しても、この男に対しても」


コアを撃ち抜くゼロ。そしてゲイリーはすべての機能を失った。





組織本部。モニターに囲まれた部屋で組織の司令塔、エクシルがため息をついていた。


「はぁ、ゲイリーからの通信が途絶えた。エンヴァーを向かわせて正解だったな。ヒエロは知りすぎている。生かしておく必要はないからな」


エクシルは立ち上がり、重たいシャッターを開け、暗い倉庫へと入っていく。


「それにしてもゲイリーを倒すなんて、彼らもなかなかやるな」


シャッターに備え付けられているスイッチを押すエクシル。するとブーンと音がして赤い目のような光が所々で光だす。


「ま、ゲイリーは一体じゃないけどね」


倉庫の中は数えきれないほどのゲイリーと思われるロボットで溢れていた。


「次はどいつで遊ぼうか」




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