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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
120/621

episode 120 「正体」

クイーンは途切れそうな意識のなかでゲイリーの豪快な笑い声を聞いていた。


(くそっ! くそっ! くそっ!)


常人ならとっくに死亡しているであろうダメージは与えた。しかしゲイリーは倒れなかった。それに引き換えクイーンはゲイリーの空拳を一撃受けただけでこの様だ。


「ガーハハハ! そこの片腕はワルターではないか! 新入りがもう裏切り者か!」

「そうだね。こっちの方が強いやつと戦えそうだったから」

「よかろう! お主の望み叶えてやろう!」


ゲイリーが真空波を飛ばす。しかしそれはワルターに到達する前にオイゲンによって防がれる。


「む、忘れておった。お主もいたのだなオイゲン!」


オイゲンはゲイリーに向かって拳をつき出す。同様にゲイリーも拳をつき出し、両者の拳がぶつかり合う。凄まじい衝撃が発生し、宿屋の中の家具が吹き飛ぶ。


ゼロたちも同様に吹き飛ばされ、壁に激突する。クイーンも飛ばされるが、ワルターが受け止る。


「おい、ワルターそいつ敵だぜ?」

「でも女性だ。それにこのこの状態で壁に叩き付けられたら死んでしまうかもしれないじゃないか」


キリッとした顔のワルターに呆れるフェンリー。



「ガーハハハ! 素晴らしいぞオイゲン! この俺と正面から打ち合って無事でいられるとは!」


上機嫌のゲイリー。しかしオイゲンは若干の恐怖を覚えていた。オイゲンは組織最強のパワーの持ち主。それは自他ともに認めるところだ。だがしかしゲイリーのパワーはそれと同等、もしくは上回るかもしれない。正面から打ち合って相手を絶命できなかったことはこれが初めての経験だった。それどこかゲイリーは血の一滴すら流していない。


オイゲンは手にはしる痺れを感じていた。いや、もしかしたら震えなのかも知れない。


ワルターはクイーンを宿屋から運び出し、すでに外で待機していたニコルに渡す。


「ちょっとどういうつもり? この子クイーンでしょ? 敵じゃない!」

「ああ、でも今は気を失ってる死にかけの女性さ」


ワルターはにっこり笑ってクイーンを預け、去っていく。


「もう!! セシル、行くわよ!」

「え、ええ」


二人はクイーンを連れ、ここから立ち去る。



ワルターが宿屋に戻るとそこにもう宿屋はただの残骸と化していた。


オイゲンがゲイリーと打ち合い、ゼロとフェンリーがフォローしている。ゼロは執拗にゲイリーの足元を狙って撃ちまくるが、当たっても当たってもゲイリーの動きは衰えるようすがない。フェンリーの攻撃に至っては全くダメージを与えられない。


「フェンリー、ワルター、一旦退避だ。ここはオイゲンに任せる。俺たちはヤンを捕らえに行くぞ」

「ここは任せておけ! 行け!」


ゲイリーの足止めをオイゲンに託し、ヒエロの屋敷へと向かう三人。


「なあ、オイゲンだけ置いてきて本当に大丈夫なのかよ!」


フェンリーが心配そうに叫ぶ。


「オイゲンを信じるしかない。俺たちがあそこにいても役に立つことはできない」

「悔しいけど同感だね。むしろオイゲンの邪魔になってしまうよ」


三人がヒエロの屋敷に到着するとすでにヤンは何者かによって殺害されていた。


「むごいな……」


フェンリーが目を背ける。手足の尋常じゃない暴れ具合から察するに、生きたまま頭をねじきられたようだ。


「君も殺人マシーンだなんて呼ばれてたけど、彼も大概だね」


ゼロはヤンの持ち物であろう薬品を手に取る。


「悪いがこれは使わせてもらう。……それと、ドレクのことは済まなかった」


ヤンを埋葬するゼロ。急いでオイゲンのもとへ戻る。


二人の殴り合いは熾烈を極めた。もはやまわりには瓦礫しかあらず、二人を中心に凄まじい衝撃波が発生していた。


「おいおい、これじゃ近づけねぇぞ!」

「まったくだ。ゼロ、どうするんだい?」

「……フェンリー、壁を何枚作れる?」


ゼロがフェンリーに問いかける。


「五枚だが、俺から離れるほど強度は失われるぜ」

「充分だ。俺が近づき、ヤンの薬品をかける。いくら奴とて人間だ。必ず隙が生まれる。あとはオイゲンに任せる」

「よし、わかった」


フェンリーは両手を握りしめ、なにやら凝縮された氷の塊を五つ作り出す。


「これを地面に投げろ。壁ができる。だがあまり期待はすんなよ。見てたと思うが奴には通用しねぇ」

「大丈夫だ」


フェンリーからそれを受けとるとオイゲンとゲイリーのもとへと近づいていくゼロ。だんだんと衝撃が大きくなっていく。たっていられないほど衝撃が強くなってきたところでフェンリーからもらった塊をすべて地面に投げつける。地面には五重の壁が出現し、それを押しながらゲイリーに近づくゼロ。


壁は次々に破壊されるが、最後の一枚のところでようやくゲイリーにまでたどり着く。


「む! ゼロ、いつの間に!」

「くらえ!」


薬品をゲイリーに投げつけ、銃で撃ち抜くゼロ。瓶は空中で炸裂し、薬品がゲイリーを襲う。


「ぐぁぁぁぁぁぁ! なんてな!」


叫び声を上げるゲイリー。ゼロは追撃を加えようとようと再び銃を構える。が、ゲイリーはすぐに立ち直り、ゼロを蹴り飛ばす。


「がっ!」


メキメキっと音がして吹き飛ばされるゼロ。飛ばされながらゼロは驚くべきものを目にする。


「ほ、本当にマシーンだったか」


ゲイリーの皮膚がただれ、中から機械の体が現れる。


「ガーハハハ! 毒なぞ効かんわ!」


鋼の肉体をほこるオイゲンの上をいく本物の鋼の肉体。毒、氷、銃、剣、すべてがダメージを与えられない。クイーンの矢も皮膚に刺さっていただけのようだ。


「さあ! さあ! どうした! 策はつきたか? 絶望したか? 許しを請うて膝まづくか? もう遅いぞ! お前たちはここで死ぬんだよ!」


さらに迫力を増すゲイリー。それでも立ち向かう四人。


「ふざけるな。機械と分かれば容赦はしない。あの世へ送ってやる」


ゼロは立ち上がり、再び銃を構える。







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