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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
111/621

episode 111 「氷と風」

ラティックはフェンリーをじりじりと壁際に追い詰める。


「大人しく投降するか、死ぬかだ」

「へ! どっちにしろ闇に流すんだろうが!」

「さっきから何を……」

「うるせぇ!」


フェンリーから仕掛ける。血を手に掬い、ラティックに向かって投げつける。しかしラティックの操る風によってかきけされ、壁に飛び散る。


「素肌だけではなく体液でも同じことができるのか。驚異だな」


壁で赤い氷の花を咲かせるフェンリーの血を見てラティックが感心する。


「忠告は以上だ」


宙に浮く矢が一斉にフェンリーを襲う。間一髪でよけるフェンリー。何本かは壁に突き刺さるが、何本かは矢の向きを変えてフェンリーを追跡する。


「くそ! なんだこりゃ!」

「俺の目の届く範囲なら、どこまでもお前を追い続けるぞ」

「ならこれでどうだ!」


フェンリーはラティックに向かって突っ込む。


「俺に矢を当てる作戦か? くだらないぞ」

「な!」


風が逆巻き、ラティックの体がフワッと浮かび上がる。


「おいおい、そんなことできんのかよ!」

「それはお互い様だ」


矢がまたフェンリーに命中する。肩を貫かれ、よろめくフェンリー。


「がっ! いってぇなコラ!」


フェンリーは手のひらを凍らせて壁に張り付く。そして解除、発動を繰り返し蜘蛛のように壁を上っていく。


「すごいな。汎用性は俺以上か」


ラティックはスーと部屋の中心部まで移動する。フェンリーは壁を上れるだけで空を飛べるわけではない。恐らく天井は体重を支えきれずに落下してしまうだろう。


「お前、卑怯だぞ! 降りてこい!」

「何をいっている。これは殺し合いだぞ」


壁にへばりつくフェンリーに向かって空中から矢を放つラティック。壁に上ってしまったことが仇となったか、うまく身動きがとれないフェンリー。背中に力を集中させ、全力で防御体制に入る。


「はぁぁぁあああ!」


フェンリーの背中に厚さ30センチほどの氷が出現し、矢を防ぐ。


「ゼェゼェ。どうだこら!」

「脱帽する」


ラティックは風を操り、屋敷の柱を少しずつ削いでいく。


「では、これはどうする?」


細かく砕けた柱が石の雨となってフェンリーに襲いかかる。


「ぐぁぁぁぁぁぁ!」


フェンリーの氷は砕けちり、フェンリーもろとも地面に叩きつけられる。


「終わりだ」


十数本の弓矢がフェンリーに狙いを定める。フェンリーには最早受け止めるだけの力は残されてはいなかった。


その時、ラティックの足に鋭い痛みが走る。


「な……誰だお前は!」


後ろを振り返るラティック。そこには全力で走り続けたのか、息を切らしたゼロの姿があった。


「貴様に名乗る必要はない。ここで死ぬか俺たちの用件をのんで僅かながら生き延びるか選べ」

「たち? この氷使いの仲間か! 後ろから攻撃を仕掛けるなど……卑怯な!」


ゼロは銃口をラティックに向けて言い返す。


「卑怯? これは殺し合いだぞ」

「くっ! なら人質をとっても文句はないな!」


フェンリーの方を振り向くラティック。だがそこには既にフェンリーの姿はなかった。


「な!」

「ああ、もちろん構わないとも。とれるものならね」


ワルターによって連れ出されたフェンリーはドサッと倒れる。


「済まねぇ。だけど俺はどうしても!」

「謝罪はあとで聞く。まずはこいつを黙らせる。お前はそこで休んでいろ」


フェンリーを後ろに下がらせ、ゼロとワルターの二人が敵であるラティックを見据える。



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