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スティールスマイル  作者: ガブ
第一章 ゼロとレイア
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episode 11 「LとM」

とある島のとある場所。薄暗い部屋の中で3人の男が話し合っている。そのうちの2人はバロードと会話をしていたあの幹部風の男だ。もう一人は研究者だろうか、ゴーグルのようなものを付け、白衣に身を包んでいる。


「バロードから連絡がない。おそらくまたやられたのだろう」


どうやら幹部の男が、焚き付けたバロードが戻らない事を白衣の男に報告しているようだ。


「流石はZ。そう簡単には殺されてくれないか。アーノルトを行かせるか?」


白衣の男は別段驚く様子もなく、モニターに目を通しながら答える。


「いや、あいつは今他国で暗躍中だ。何時戻るかも分からない」

「だが他にゼロと対等に渡り合える者は……」


2人の幹部は頭を抱える。


「居るじゃないか。とっておきの姉弟が」


白衣の男のモニターには、2人の男女が映し出されている。


「ああ、LとMか。だがあの異常者どもがまともに行動するとは思えないぞ」


幹部の男はその2人の実力には疑問を抱かないが、人間性に不安を抱えている。


「まともな行動ではゼロは倒せんだろう?むしろ好都合だ。直ぐに二人に連絡だ」


白衣の男はそう言い残すと、施設の更に奥深くへと潜っていった。



廃墟と化した村、とても人が住んでいるとは思えないその場所には先程モニターに映し出されていた男女の姿があった。


「あら? おかしいわね。確かに人の気配がしたのだけれど」


くるくるのピンクの髪にフリフリのピンクの服の女が不機嫌そうに呟く。


「いや、ねぇさん確かにここに居るみたいだ」


銀色の髪に眼鏡をかけた白タキシード姿の男が、地面にある比較的新しい足跡を指差しながら答える。


「あら本当。良かったー無駄足を踏まずに済んだわね」


女はウキウキ気分でスキップしながら村人を探す。


足跡は村外れの教会に続いていた。中はもぬけの殻だったが、二人によって直ぐに隠し階段が発見されてしまう。


「たのしみねぇ。レイリー」

「ああ、ムースねぇさん」


2人は満面の笑みを浮かべながら先へと進んでいく。階段を下った先には孤児らしき子供たちで溢れていた。皆怯え、ガタガタと震えている。


「いい! いい! その顔! 最高に悶える!」


ムースの恍惚とした表情を目撃した子供達は絶望した。これが人間の顔なのだろうか。


「よく聞いて。子供達。私の掲げる殺しは悶殺。いかに苦しく死ぬか、それがあなたたちに残された最後の自由よ」

「おやおや怖い怖い。さあ君たちはこっちにおいで」


ムースに怯える子供たちを数人引き連れ離れるレイリー。一見すると好青年なレイリーに連れられた子供たちは助かったのかと安堵の表情を浮かべるが、どう考えてもそのようなことはあり得ない。


「俺はレイリー。俺の理想とする殺しは麗殺。いかに生きたままの姿で殺せるか、いかに状態のいい剥製を作れるか、日々努力している。さぁ、一緒に頑張ろう」


理解が追い付かない子供たち。レイリーは彼らの事などお構いなしに、様々な器具を取り出す。


「君はこれ、君はこっちの、お嬢さんはこれを試してみよう」


子供たちは幼いながらも、自らの運命を悟った。


「ア、ガ……」

「なんなのよもう。たかが腕2本じゃない。最近の子供は我慢ができないっていうのは本当だったのね」


曲げてはいけない方向に無理矢理腕を曲げられた少年は、ムースに満足する悶絶をもたらす前に気絶してしまう。予想ほどの悶絶を得られず不満気味のムースは、気絶した少年を滅多刺しにし、後方で楽しんでいるレイリーに声をかける。


「はぁ、なんだか飽きちゃった。レイリー!こっちのもあげるわよ」

「ふむ、この薬品は皮膚に症状が出すぎるな。こちらのは吐血が多い。美しくないな」


死体の観察に夢中のレイリー。ムースの言葉には全く気がついていない。


「レイリー! いつまで遊んでるのよ! そろそろ帰るわ! 早く片付けなさい!」


ようやくムースに気づき、死体を片付けに始めるレイリー。彼の周りの死体は対して散らかっていない為、直ぐに処理を終えるが、ムースの周辺はそうではない。


「ねぇさん……汚いです。美しくない」


飛び散った内蔵をつまみ、ゴミ袋にいれるレイリー。


「相変わらずおかしな事をいう子ね、ゴミは汚いに決まっているでしょう」


ムースはため息をつく。ムースもレイリーも不機嫌な様子でおもちゃを片付けるが、死体の影で震えている子供を見つけると、その顔はみるみる内に明るくなっていく。


「おや、まだ生きているのがある。汚いが洗えば何とかなるかもしれない」


ムースに破壊されてしまう前に子供に飛びかかるレイリー。一瞬の内に子供の背後に移動し、瞬く間にその小さな命を奪い去る。


「今度はうまくできた」

「あーもったいない!」


まるで眠っているかのような子供を前に達成感を得るレイリー。それとは反対に、再びムースは不機嫌になってしまう。レイリーは姉を背に、死体を愛用のケースにいれて持ち帰る。


「あら、珍しい。組織から直々に指令が来てる」


ずっと鳴っていた端末にようやく気づいたムース。映し出された画像にテンションが上がる。


「ひゃは! 誰かと思えばゼロ君じゃない!」


ムースの顔は恍惚に満ちており、その画面のゼロに釘付けになっているようだ。


「ゼロ。ターゲットを始末できなかったユダか。美しくない。だが、剥製にすればきっと美しくなる」

「あら、ダメよゼロ君は恐怖のどん底に叩き落として悶絶させてなぶり殺すの。楽しみだわぁ、あのきれいな顔が最後にはどれだけ汚くなっているのか」


ムースの意識がゼロの向けられていることに苛立ちを隠せないレイリー。だが姉の嬉しそうな様子を見ると、怒りも収まっていく。


「ねぇさんがそういうなら仕方がない。でも、おまけは俺がもらうよ」


レイリーはゼロの隣に載っているレイアの画像をナイフで指差す。


「あら、こんな小便臭そうなガキがタイプなのかしら? 知らなかったわ」

「金髪の剥製はまだ持ってないんだ。大事に殺さなくちゃね」


2人の殺し屋はウキウキと教会を後にした。




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