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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
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episode 109 「グリフィー」

屋敷を出る一同。目指すはフェンリーの仲間が襲われた街道だ。街道はここからそう離れてはいない。もしかしたらアルバートを襲い、本部に帰る途中にフェンリーたちと遭遇したのかもしれない。


仲間の遺体は既にそこから消えていた。警備隊が片付けてしまったのだろう。この世に残る彼らが居たという証しはこの地面に残ったシミだけだ。


「……」


フェンリーは黙って地面をなぞる。哀愁漂う背中に怒りの炎が宿るのが感じ取れる。立ち上がり、涙をこぼさないように上を向く。ポケットからタバコを取り出し、火をつける。


「フー、行くか。なぁセシル、こいつらは今どこにいるんだ?」


フェンリーはシミを指差しながらセシルに尋ねる。


「そうですわね……恐らく市長の私設軍だと思いますわ」

「私設軍、そんなもんが居んのか。厄介だな」


ハウエリスには私設軍が数多く存在する。現にアルバート家にも存在していた。もっともアルバート家壊滅の際使用人たちと共にアーノルトに皆殺しにされてしまったが。



ハウエリスの中でも一際栄えた都市、グリフィー。ここの市長ヒエロは強欲な男で有名だ。金にものを言わせ、名だたる戦士たちを私設軍に引き入れ、またもや多額の金で各所に派遣している。商売にも力をいれ、各国から腕のたつ技師たちを集め、工業も盛んである。ヒエロは性格を除けば十分有能な市長である。


しかし表があれば当然裏が存在する。ヒエロには黒い噂もささやかれている。


「グリフィーではヒエロが市長に就任してから失踪者や行方不明者が後を絶ちませんの。人身売買をしているんじゃないかなんて噂もたってますわ」

「っ! まさかあいつらも!」



背筋が凍るフェンリー。



「その市長に会わせろ」




市長ヒエロの自宅は小高い丘の上にある。アルバートの屋敷にも引けをとらないその大きさに驚愕する一同。


「器が小さい男ほど大きく見せたがるものよね。けれどお金はありそう。これは悩殺し甲斐があるわね」


ニコルが腕をならす。


「それはどうでしょう」

「どういう意味かしら?」


セシルを問い詰めるニコル。セシルが指を指す方向を見るニコル。そこにはでかでかと市長と思われる写真が掲示されていた。


「なるほどね」


そこに写し出されていたのはニコルにも引けをとらない絶世の美女だった。


「よし、とりあえず俺が会いに行こう」


ヒエロの写真を見て早速自宅に乗り込もうとするワルターを押さえるセシル。


「ダメですわ! 正面から乗り込んだりなんてしたら捕らえられて牢獄行きですわよ!」

「俺を束縛しようと言うのかい? 面白いじゃないか。あ」


体の自由が利かなくなるワルター。


「ずいぶん偉そうな口を利いておきながら早速これかしら?」


ニコルが鬼の形相でワルターを睨み付ける。


「はは……冗談さ」


ひきつるワルター。


「とにかくまずは作戦を練ろう。いいな、フェンリー」


今にも乗り込もうとしているフェンリーに声をかけるゼロ。


「……ああ、わかってる」



一同は簡単な休息をとるため宿を探す。


「お金なんて払う必要ないのに」

「黙っていろ。面倒事は避けるんだ」


宿の店主を誘惑し、宿代をちょろまかそうとするニコルを注意するゼロ。


しばらく各々自由に休息をとり、作戦会議をしようと皆を集めるが、フェンリーの姿が見当たらない。



「あの馬鹿……」

「ちょっとどこ行くのよ!」


誘惑して止めようとするニコルを振り切り、宿を抜け出すゼロ。





「わりぃなみんな。だけど仲間はお前たちだけじゃねぇんだ」


フェンリーはヒエロの自宅前にいた。吸っていたタバコを捨て、加護を纏い始める。


「さあ、返してもらおうか!」


フェンリーは屋敷に突っ込んでいった。




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