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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
106/621

episode 106 「到着」

「あ~生き返りますわ」


セシルは暖かいシャワーを浴びる。ニコルへの憎悪や嫉妬が洗い流されていく。


「ふふ。よかったわね」


ニコルが浴室に入ってくる。服は着たままだった。


「本当は私も入りたいのだけど、裸を見せたりなんかしたら、きっとあなた死んでしまうもの」

「……そんなことありませんわ。と言い切れないのが悔しいですわね」


改めてニコルの身体を見つめるセシル。人を惑わすために存在しているかのような肉体だ。ブルブルと首を振るセシル。


「お嬢様、そちらにニコルが向かいませんでしたか!」


浴室の外でオイゲンが叫んでいる。


「オイゲン、一歩でも中に踏み込めばあなたとて許しませんわよ」


今にも中に入ってきそうなオイゲンに釘をさす。


浴槽に浸かるセシル。久しぶりの入浴をたっぷりと堪能する。


「湯加減はどうかしら?」

「最高ですわ」


セシルの体から力が抜けていく。屋敷を飛び出してからやっとゆっくりできた気がする。


「よかったわ」


にっこりと笑ってニコルは浴室を出ていく。その妖艶な表情に思わず心を奪われそうになるセシル。


(あ、危なかったですわ。何て破壊力なのかしら……)



「しかしとんでもねぇな。島に寄った理由が風呂に入りてぇからなんてよ!」


ニコルが部屋に戻るとフェンリーが不満たらたらでタバコをふかしていた。


「お嬢様は女性だ。むしろこれまでよく我慢した方ではないか」


オイゲンがセシルをフォローする。


「まあ、いいじゃないか。こうして彼女とも出会えたわけだし」


部屋に入ってきたニコルにワルターが視線を送る。


「あらフェンリー、何か言いたいことがありそうね」

「ありすぎて言いきれねぇよ」


二人の溝はそう簡単には埋まりそうにない。


「……セシルの用が済んだらすぐに出るぞ。ニコル、覚悟はいいな?」

「ええ、もちろん」


セシルは入浴をたっぷりあじわい、出発したのはそれから一時間後の事だった。


原住民たちの見送りを受けて、六人は出発する。


「よかった! 無事だったか! って、なんだそのマブいねーちゃんは!」


船長は早速ニコルの虜となった。


夜が更けていく。話題は誰が船室を使うかで盛り上がっていた。


「お嬢様は確定だ。そしてボディガードの俺もまた確定だ。ここまでは異論ないな?」

「ふざけんな、最後の一日位俺にも使わせろ。この船は俺が用意したんだぞ」


オイゲンの申し出にフェンリーが苦言を呈す。


「俺は外でも構わないよ。ニコルと一緒ならね」

「あら、私はゴメンよ。船長室でも使わせてもらうわ」


ワルターの誘いを断り、ニコルは船長室へと入っていく。 船長がニコルに詰め寄る。


「ねーちゃん、ここは海の男の戦場だ。部外者を、ましてや女を入れるわけにはいかねぇ」

「あら残念。今夜は冷えそうだから人肌を感じたかったのだけれど」


ニコルは肩を服から覗かせる。当然船長は抗うことができない。


「うひょ! こ、コホン! まあ女性を寒空のしたに放り投げるわけにもいかねぇな。よし、これも男のつとめだ! 使いな!」

「ふふふ」


次の日の朝まで船長室の扉は固く閉ざされていた。


結局船室はいつも通りセシルとオイゲンが使用し、残された三人もまたいつも通り星を見ながら就寝した。


長かった1日が終わり、六人をいざなう朝日が上る。そしてそれは新天地ハウエリスを指し示す。


「あれがわたくしの故郷、ハウエリスですわ」


セシルがハウエリスを指差す。その表情はどこか悲しげだった。




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