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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
104/621

episode 104 「困惑」

ついにニコルを退けたゼロ。急いでフェンリー達の元に戻るが、そこではまた新たな問題が発生していた……

ゼロがフェンリーとワルターの元に戻ると、凍り付けにされたオイゲンと、それに寄り添って泣くセシル、そして血まみれで倒れているワルターがいた。


「早くオイゲンを解放しなさい! 死んでしまいますわ!」


セシルが騒いでいる。


「死にゃあしねぇよ。ゼロが戻るまで待て。万が一こいつの術が解けてなけりゃ危険すぎる。ワルターを見てみろ」


フェンリーは顎でワルターを指す。出血は止まったようだが、まだ目を覚まさない。それを見てセシルも騒ぐのをやめる。



「何があった」



ゼロが戻ったことに気がつき、セシルがフェンリーの方を向く。



「やったのか?」

「ああ、もう術は解けているはずだ」

「ねぇ、もういいでしょう?」


フェンリーは小さく舌打ちをしてオイゲンを掴む。


「ゼロ、手伝ってくれ」


二人でオイゲンの巨体を担ぎ、近くに流れている川まで連れていく。水にオイゲンを浸け、少しづつ氷を溶かしていく。


「ワルターは無事なのか?」


作業をしながらゼロがフェンリーに尋ねる。


「命に別状はないはずだ。だが血を流しすぎている。しばらくは安静にしとかねぇと」

「その心配はないさ」


振り返る二人。ふらふらになりながらこちらに歩いてくるワルターの姿をとらえる。


「やあゼロ。あの美人さんをこらしめてくれたんだね? おっと」

「バカ野郎! うろうろしてるんじゃねぇ!」


倒れそうになったワルターをフェンリーが支える。


「はは、全く情けないね。まともに歩くことすらできないなんて。修行が足りないな」


ワルターはゆっくりと腰かける。


「お前は船に戻っていろ。オイゲンを目覚めさせたらすぐに向かう」

「俺を仲間はずれにしようだなんて、そうはいかないさ。俺のことは心配しないでくれ」


ゼロが心配するが、ワルターは聞き入れず、オイゲンの解凍を見守る。


三十分ほどでオイゲンを覆う氷はすべて解け、それからさらに十分ほどで目を覚ましたオイゲン。


「オイゲン!」


セシルがオイゲンに飛び付く。一瞬状況が理解できないオイゲンだったが、ワルターの怪我とフェンリーの怖い顔ですべてを理解する。


「……俺がやったのか?」

「あなたは悪くないですわ!」


セシルが必死にフォローする。


「確かに悪いのはお前じゃねぇ。だが一発殴らせろ」

「や、やめなさい!」


フェンリーとオイゲンの間に入り込むセシルを力ずくでどかし、オイゲンの頬を思い切り殴るフェンリー。拳を氷で強化したのか、鋼の肉体を誇るオイゲンの皮膚に血がにじむ。勿論フェンリーの拳にも相当のダメージがあるが。



「ワルター! お前も殴れ! 殴れねぇなら俺が代わりにやるぞ!」

「もうやめて!」


フェンリーの服を掴むセシル。


「お嬢様、良いのです。悪いのは私なのですから」

「あなたは悪くない! 悪いのは……!」


「私……かしら?」


いつの間にかニコルの姿があった。


「おい、殺ったんじゃねぇのか?」

「殺したとは言ってない」


ニコルにつかみかかるセシル。


「そうですわ! あなたがいけないのです!」

「そうね、美しさはある意味、罪ですもの」


激昂するセシル。そのセシルよりも怒っている男がニコルに近づき、頬を叩く。


「女を殴る趣味はねぇが、お前、ふざけるなよ」

「痛いわね。殺すわよ」


フェンリーとニコルの間で火花が散る。


「落ち着きたまえよフェンリー」


ワルターが剣を杖がわりにして近づいてくる。


「あら、ずいぶんと怪我をしているようね? 大丈夫?」

「てめぇ……」


ワルターをおちょくるニコルに再び拳を振り上げるフェンリー。


「フェンリー、やめるんだ。悪いのはその人じゃない。悪いのは弱かった俺自身さ」

「お前、この期に及んで何を……」


少しずつニコルの元に近づくワルター。


「私に何か用?」

「俺の名はワルター・フェンサー。モルガント帝国軍大佐、並びに組織のエージェント。惑殺のワルターさ」


きょとんとするニコル。


「あらそう。それが何かしら?」

「自己紹介さ。さあ、君の名前を聞かせてくれないか?」

「……何をいっているのかしら? 自己紹介?」


ニコルは困惑しだす。他のメンバーも同様だ。


「ああ、そうさ。もちろん君の名前は知っているよ。フェンリーが教えてくれたからね。でも君の口から聞きたいんだ。なんせこれから一緒に旅をするんだから」



ワルターの言葉に辺りが静まり返る。ニコルを始め、フェンリー、ゼロまでもが驚愕をあらわにする。


「もう一度言う。俺はワルター。君の名前は? 美しいお嬢さん」





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