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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
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episode 102 「サヌス」

食殺サヌス。組織の中でも群を抜いてイカれた男。彼の体は殺した者達の血と肉でできている。


サヌスが九つの時。嗅いだことのない心踊る臭いを感知し、夜中に目を覚ますサヌス。リビングへ行くと両親が近所の子供を食べていた。両親はサヌスが現れたことで動揺し、必死に身を隠そうとする。


「さ、サヌス! これは……!」

「美味しそう! 僕にもちょうだい!」


サヌスは友達だったかもしれない肉にしゃぶりついた。



サヌスの一族は代々食人を嗜む一族だった。その血は確実にサヌスにも受け継がれているようだ。



サヌス最初の殺人は十一の頃。サヌスには二つ下の妹ができていた。両親は妹を大変可愛がっていたが、サヌスに芽生えた感情は美味しそうだった。両親がいない隙を見計らって欲望にしたがった。


同族を喰らうという禁忌を犯したサヌスは一族から追放された。


それからニ十年もの間、サヌスは欲望のままに人を殺し、そして食した。


組織に目をつけられたサヌスは幾度となく刺客を差し向けられたが、刺客たちは一人残らずサヌスの一部となった。


サヌスの力に惚れ込んだ組織は抹殺ではなく率いれることにした。そこで差し向けられたのがNの殺し屋、悩殺ニコルだった。欲望に忠実なサヌスを悩殺することは容易かったが、自我が強すぎて制御することが難しく、組織も手をやいた。しかしその実力は本物で、組織も簡単に手放そうとはせず、任務外は無人島に幽閉しておくことにした。この島にすんでいる男たちはサヌスの餌である。




サヌスは猿ぐつわを噛み砕く。そしてよだれを啜りながらゼロを見つめる。


「お前は……どんな味がするんだ?」

「貴様には鉛をくれてやる」


銃を乱射するゼロ。死なない程度に手足を狙う。弾は容赦なくサヌスを撃ち抜き、血を撒き散らす。


「うぉ! 痛いなあ!」


サヌスはふらふらとした足つきで部屋から逃げ出す。


「逃がすか!」


追いかけたゼロが見たのは食事をしているサヌスの姿だった。ニコルの洗脳が解け、混乱している元家具の男たちをノコギリのような歯で食していく。


「うぎゃぁぁぁぁ!」


悲鳴を上げて抵抗する男の喉元に噛みつき、頸動脈を引っ張り出す。男は失神し、すぐに息絶えた。


「サヌス……!」

「少し待ちたまえ」


サヌスはむしゃむしゃと男を貪る。他の男たちはあまりの光景に腰を抜かしてしまい、ガタガタ震えること以外できなくなっていた。


「やめろ! サヌス!」


ゼロは食事中のサヌスの脳天目掛けて銃を構えるが、サヌスは気にせず食べ続ける。


「かつては最強の名を欲しいままにした男。それがお前だ。だが人を殺せなくなった殺し屋になにができる?」

「っ!」


ゼロは引き金を引く。しかし狙いは逸れてしまい、家の壁に命中する。難度も何度も引き金を引くが、その度にレイアの悲しそうな顔が脳裏に浮かんでしまい、狙いが定まらない。結局サヌスが食事を終わらせるまでかすり傷ひとつ負わせることができなかった。先程与えた傷も食事をしたことですっかり回復し、サヌスの痩せ細った体に力が宿る。


「さてゼロ。お前には死んでもらう」


サヌスは先程とは比べ物にならないスピードで動き回り、爪や歯などでゼロを攻撃してくる。ついていけないわけではないが、ここで攻撃すれば回りで腰を抜かしている男たちに当たりかねない。そんなことはお構い無しなサヌスは男たちもろともゼロの体を切り裂く。


「いただきます」


指先に付着したゼロの血を美味しそうにしゃぶるサヌス。



「うん。美味。お前ABか。さて肉はどうかな?」


ノコギリのような歯をむき出しにしてにんまりと笑うサヌス。ゼロは久しぶりに笑顔に対して殺意を覚える。


「……その薄汚い顔をやめろ。……殺すぞ」


ゼロの殺意がサヌスを貫く。一瞬息が止まりそうになりながらも笑顔を崩さないサヌス。


「面白いじゃないか。私は殺人に興味は無いのだが、お前の殺人術には興味がある。是非見せてから死んでくれ」



ヒュンっと弾がサヌスの左目を潰す。



「うがぁぁぁ!」


激痛に悶えるサヌス。


「俺はお前を殺さない。目を潰したくらいでは人は死なない」

「ゼロ! 貴様殺してやるゾォォォ!」



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