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城から出てみると、城の周りは自然豊かでのどかな場所だった。
ここが魔王の領地?もっとおっかない所だと思ってたけど…。
前を歩いているバルが振り向く。
「そういえば名前をまだ聞いていないが?」
「そうでした。私はエイダです。」
おどおどしながらエイダは答える。
「まあそう緊張するな。ほら。もうすぐだぞ。」
綺麗な川のほとりに幾つか小さな家が見える。
本当に人、住んでるんだ。
そんなことを考えていると小さな村が姿を現した。
家の前でおばさん達が談笑している。そしてその周りを小さな狼のような魔物とじゃれついている子供。
前の道を通るユニコーンの魔物に台車を引かせている商人。
「どうだ。エイダよ。ここ、魔術王の領地に住む人々は魔物と共存して生活している。互いに信頼し合って生きているのだ。」
「凄い…。」
街では恐れられていた魔物たちが人間と共に生活をしている事に感動を覚える。
突然背後から風が吹き付ける。びっくりして振り返るとそこには昨日のグリフォンの魔物がいた。
「きゅいっ」
甘えるように頭をエイダにこすりつける。
「昨日はありがとう。」
エイダは優しく微笑み頭を撫でる。意外と毛がふわふわで柔らかい。
「きゅいっ!!」
どういたしまして。と言っているのだろうか?魔物の胸をはる仕草が愛らしい。
そんなことをしていると木の影や空から大小様々な魔物が飛び出してくる。
「撫デル!グリフォン。ズルイ!」
「ソウダ!オレ達も!撫デロ!」
「きゅるる〜♫」
真っ赤な長い尾羽を持つ鳥やツノの生えたウサギ、3首のヘビその他様々な魔物が集まってくる。
突然たくさんの魔物が出てきて困惑する。
「エイダ。こいつらはお前のことが気に入ったらしい。最初からこんなに魔物に好かれる奴は久しぶりに見た。撫でてやるといい。」
バルが感心したように言う。
ー悪魔の生まれ変わり、か。
誰もいない城の窓から眺めていた魔王が呟く。
その呟きを聞くものは誰も居なかった。