表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

01:プロローグ1

 ——閃光が迸る


 この世の全てを照らすかのような明るい光が、無数の矢になって世界を包み込んだ。

 ある者は歓喜に涙し、ある者は家の窓を開けて真昼のような夜空を見上げていた。人々の喜びの叫びが、大陸中に響き渡った。


 魔王が、倒されたのだ。



 大陸一の巨大国家、ウィズラルド王国の城は活気に満ち溢れていた。

 着飾った衛兵達が楽器を吹き鳴らし、令嬢達がひらひらと花の様なドレスを着て軽やかに笑う。

 城下には、本物の花が撒かれ、商人達は今がかきいれ時だとばかりに店の前で声を張り上げる。

 どの国もどの街もお祭り騒ぎだけれど、この国ほどではないだろう。


 しばらくすると、城下の人々の間から、ひときわ大きな歓声が巻き起こった。


「勇者様だ!」

「魔王を倒された、勇者様のご一行だぞ!」


 一人が声を上げると、全員がそちらに目を向ける。

 路上の整備に駆り出された兵士達が、人ごみを分けて道を開いた先には、五人の若者が乗った大きな馬車があった。

 馬車の天井と壁の部分は取り外されており、中の人間の姿がよく見える。馬車の前後には、兵が並び、更にその周囲には綺麗な衣装に身を包んだ踊り子達が舞っている。


「勇者様! 万歳!」

「勇者様、勇者様、勇者様!」


 人々の歓声を受けた馬車の中の若者達のうちの一人が立ち上がり、彼等に向けて大きく手を振った。

 銀の鎧に身を包んだ、精悍な顔立ちの青年だ。アッシュブロンドの髪が、日の光にキラキラと反射している。

 紫色の目を興味深げに輝かせた彼は、馬車の上から人々を見下ろして柔らかな笑顔を振りまいた。


「あーあ。サービス精神ふりまいちゃって」


 彼の向かいに座る、黒いマントに身を包んだ少年が皮肉を含んだ笑みを漏らす。切りそろえられた紺色の前髪が不快そうに揺れた。


「まあまあ、ちょっとぐらいいいじゃないか。減るもんじゃあるまいし」


 そう返すアッシュブロンドの髪の青年の言葉に、彼の隣に座っているシスターのような装いの女性が笑顔で頷いた。くるくるとカールを描く彼女のピンクブロンドの髪は、長過ぎて馬車の座席で蜷局を巻いている。


「そうだぞ。今日くらい、大目に見てやれ」


 女性の向かい側に座る色黒で大柄なスキンヘッドの青年に諭され、少年は不満げに反対側に目を逸らした。


「なあ、リレイも何か言ってやれよ。こいつら、チヤホヤされて調子に乗ってるぜ?」


 少年は、アッシュブロンドの髪の青年の隣——シスターの女性とは反対側に座る小柄な少女に向けて声を掛けた。

 まっすぐな黒髪を背中まで伸ばした飾り気のない少女は、感情の乏しい紅い目を少年に向けて呟く。


「…………どうでもいいわ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ