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15:奴隷仲間に再会しました

 リレイ達は薄暗い通路を奥へと進む。ジンの見立てでは、最奥部付近の倉庫が怪しいらしい。


「鍵が開かないわ……」


 この世界では、解錠の魔法も使えない。リレイは、悔しさに唇を噛んだ。


「俺に任せて」


 そんなリレイに笑顔を向けると、ジンは鍵穴に針金を突っ込む。

 すると、三秒でガチャリと音がして扉が開いた。


「すごい……」

「ふふん、俺の特技だよ」


 リレイに褒められたジンは、満更でもなさそうな顔をしている。

 二人は開いた扉から倉庫の中へと侵入した。


 倉庫の中には、獅子や鰐、虎や狼などの獰猛な肉食獣がいた。それらは全て、太い鉄格子の中に入れられている。

 肉食獣達は腹をすかせているらしく、ぎらついた目をリレイ達に向けた。


「人間がいないわね……」

「あのカーテンの向こうなんて、怪しいと思わない?」


 リレイがジンの指差す方向を見れば、壁の一部に細いカーテンが掛けられていた。

 ジンがカーテンを引っ張ると、細い通路が現れる。


「……慣れているのね」

「似たような景色を見たことがあるからね」


 少し遠くを見ていたジンだが、気を取り直したようにリレイの手を引っ張る。


「行こう。早く、アーノルドのところへ戻らないと」


 リレイは頷いて、ジンについて行く。

 ジンの言う通り、通路の奥に奴隷達はいた。その数、三十人程だ。

 全員が鎖で壁につながれており、中には怪我を負っている者もいた。

 奴隷達は、見慣れぬリレイとジンの姿を見て怯えている。


「大丈夫。私は、あなた達を解放しに来たのよ」


 リレイは奴隷達を安心させるように笑ったが、元々愛想笑いが苦手なので上手くいったか定かではない。

 続いて、彼等を解放しようと近づいたリレイは、重大なことに気が付いた。


(そういえば、手枷足枷って鍵が必要なのよね……どうしよう、今までのように魔法で破壊することが出来ないわ)


 ここに来て、リレイは戸惑った。魔法を使えない弊害は、あらゆる場面でリレイを困らせる。


「どうしよう……枷を外さなきゃいけないのに」

「確かに、一人ずつ解錠して行くのは手間だね」


 ジンの青い目が、何かを探すように室内を見渡した。


「あれを使う?」


 そう言った彼が指差したのは、部屋の隅に無造作に置かれた鉄の斧や剣だった。


「試合で使うか、奴隷達の処分に使うものだろうね」

「なんとかなりそうね……良かった」


 リレイは、斧を手に取り、怯える奴隷の手に巻かれた鎖と壁の間に向けて力一杯振り下ろした。

 甲高い金属音と共に、奴隷の手が自由になる。続いて、足枷の方も破壊した。

 ジンの方も、鉄の剣を手に取って奴隷達の枷を壊して行く。


「あれ、お嬢ちゃん?」


 一人の奴隷が、リレイを見て声を上げた。


「お兄さん! 生きていたんだ」


 その奴隷は、以前セドリックの店でリレイと話した男だった。

 しかし、彼は足に大きな怪我を負っている。


「ああ、怪我をしたけどな。幸運なことに、先日の俺の相手は人間だった……でも、これじゃあ解放してもらえたところで歩けねえな」

「ちょっと待っていて、後で運んであげる」


 リレイは、残りの奴隷達を全員自由にした。


「この奥に裏口がある。でも、常に腕の立つ見張りが立っているんだ」


 男は、リレイ達に建物の構造を伝える。目立たずに奴隷を逃がしたいリレイにとって、彼の情報はありがたいものだった。


「分かったわ。そいつを黙らせればいいのね」

「お嬢ちゃん無茶言うなよ! そんな細腕であいつらが倒せるものか……」


 男は、心配そうな表情でリレイを見る。

 そんな彼にジンが返事をした。


「平気だよ。リレイちゃんは、さっきアーノルドを一瞬で仕留めちゃったんだよ?」


 ジンの言葉に男は目をむく。


「お嬢ちゃんが……あの、アーノルドをか!? 冗談だろう!!」

「本当だよ、十秒もしないうちに伸しちゃったんだから。持つべきものは、優秀な奴隷だよねっ」

「黙れ、外道」


 リレイが、苦々しい顔でジンを見た。


「あはっ、リレイちゃんのお人好しな趣味に付き合ってあげているのに。ひどいなあ、もう」

「煩い……」


 リレイとジンの会話に、男が口を挟む。


「お嬢ちゃんの買い手は、そっちの兄さんだったのか……?」

「そうだよ、リレイちゃんは俺の奴隷。可愛いでしょう? あげないよ?」


 ジンの話を無視することにしたリレイが奴隷達を裏口へ誘導していると、通路側から人の足音がした。

 アーノルドの仲間だろうかと、リレイは身構える。


 しかし、現れたのは、闘技場には似合わないそっくりな顔の二人の少年だった。

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