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睡眠薬

「起きたらどうです? 先生」

 冴木は、『眠ったふり』をしていた実技試験担当教師に向かい言った。

「生徒を見殺しとか最低ですね」

教師は、さっきまでと打って変わって人懐こい顔でスマンスマンと謝る。

「いや、やばくなったら止めるつもりだったさ。こちらとしても『不測の事態』だったからな」

「本当に?」

冴木は不審がりながらも、とりあえず納得した。


生徒会室。

「風紀委員長が怪我して、魔術回路が無い生徒が実技試験免除?!」

生徒会長である宮古みやこは突然の報告に目を白黒させた。

魔術士育成学校において、教師を除き、強さの上位は常に風紀委員だ。

その風紀委員の長が負傷しただけでも驚きだが、魔術回路がない生徒が魔術の実技試験を免除されるという異常事態を未だ飲み込めないでいた。

「裏取り引きでもあったのかしら? だとしたら大問題ね」

宮古は、深く考えこんだ。


 三月。

冴木は問題なく(?)魔術士育成学校へ合格したため、近くにあるアパートに引っ越しをしていた。

冴木が持ち込んだ私物は、液体窒素冷式サーバやアンテナなど、およそ高校生には似つかわしくないものばかりだった。

そして、大量の丁寧に梱包された箱。

中には、厚紙で作られたペーパークラフトの銃が何丁もあった。

無論、ただのペーパークラフトではない。

冴木はその中からベレッタを選ぶと、カートリッジと共に造作に上着の内ポケットに入れた。


 コンコン。

冴木の家の玄関を叩く音がする。

「はい。なんですか?」

冴木がドアを開けると、そこには写真でしか見たことのない魔術士育成学校生徒会長『椎名宮古』がいた。

「冴木くん。まずは合格おめでとう」

冴木は、一瞬だけ虚をつかれたが、すぐに平静を保ち、礼を言った。

「……ありがとうございます」

「冴木くん。さっそくで悪いけど、お茶しない?」

宮古のカバンからは、ペットボトルに入った紅茶とお菓子らしきものがちらっと見えた。

冴木は頷き、何もありませんがと言いつつ、宮古を中に入れた。


「……何もありませんが?」

宮古は部屋の中に置かれた銃のペーパークラフトや、液体窒素冷式サーバ、無線用かよくわからないアンテナなどが散乱する風景に、片付け下手なのかなと推測し、いやいや、今日引っ越したばかりのはずだと頭を振った。

「冴木くんの趣味はペーパークラフトなの?」

宮古が冴木とお茶を飲みながら、ドラグノフ銃に触れようとすると、冴木はやんわりと宮古を止めた。

「俺の銃は特殊なので、触らないでくださいね」

宮古は、入学の書類を見せて欲しいと頼んだ。

「いいですけど、俺の居ないところで開けないでくださいね」

冴木は書類を宮古に渡す直前、めまいを感じて、そのまま倒れた。


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