~B・R~ Prophet ~大村編~
高校卒業後、実家の民宿を継いでほしい両親と、ボートレーサー志望の息子――
~B・R~ Prophet ~大村編~
12R―― GⅢ優勝戦
枠番勝率 平均ST モーター勝率
① B1 63 0.20 35
② A2 52 0.18 29
③ A2 58 0.21 31
④ B1 41 0.19 34
⑤ B1 39 0.22 36
⑥ B1 47 0.17 36
地元選手②⑥
晴れ
追い風2m
――結果は6-1-2、5780円
「やりおったわい……」
そのじいさんは⑥号艇が1着でゴールするのを見届けると、泣き崩れた。
「ええ、見事な二段まくりでした」
その若者も賞賛を送った。
「あれはな……、わしの孫なんじゃ」
「そうでしたか」
「6-1-2。これも、何かの縁かの~」
「縁、ですか?」
――遡ること、2年前
孫が高校3年の時、両親は実家の民宿を継いでくれるよう説得をしていた。
しかし孫は、幼い頃にじいさんと遊びにいった大村競艇場で刺激を受け、将来はボートレーサーになると決めていた。
そこで、父は「そこまで言うのなら、人生を賭けて勝負をしろ」――
そう言って、二人でこの競艇場にきた。
その日も最終日、優勝戦だった。
10R終了後――
父が「12Rを当てることができたら、好きな進路を選べ」そう言って白紙のマークシートを渡した。
当時の優勝戦――
枠番勝率 平均ST モーター勝率
① A2 78 0.18 35 地元ベテランレーサー
② A2 58 0.16 42 若手有力選手
③ A2 62 0.19 31 若手有力選手
④ A1 52 0.19 31 中堅レーサー
⑤ B1 53 0.21 36 若手有力選手
⑥ A2 52 0.17 39 若手有力選手
地元選手①
雪
追い風3m
――それから、12Rの締め切り5分前に、息子は記入したマークシートを父に渡した。
「本当に、これで良いのか?」
「うん。それでいいよ」
この時間になると、辺り一面が雪景色だった。
――そして12R、優勝戦がはじまった。
スタートで①が出遅れ。
②は①に合わせていたので、共に出遅れ。
③が半挺身前に出るとまくりに出る。
④は差し。
⑤は③のあとを追う形でまくりにいく。
しかし、トップスターを決めたのは⑥だった。
⑥がそのまま、全速まくりにいく――
⑥の航跡に⑤③の順であおりを受け、失速。
まくりきった⑥の頭、それに①②が続き「6-1-2」で決着した――
父は、その舟券を手にしながら震えが止まらなかった。
「6-1-2・1点……」
――「あとで孫に聞いた話じゃが、欠かさず毎日レースを見ていたらしい。そして自分なりのデータを持っていたようで、自信はあったらしい。じゃが……」
そういうと、若者の青いキャップを指差した――
「最後の決断は――、あんたと同じ、青い帽子を被っていた人の一言で決まった。そう、言っておったよ」
「一言?」
「ああ。なんでも①は、視力が劣るとか。あの雪じゃ、出遅れるのが分かっていたのじゃろうて」
「そうでしたか」
「さて、そろそろ孫を迎えに行きますよ」
「お孫さんに優勝おめでとうと、お伝えください」
そう言うと、若者はリボンで飾ってある封を渡した。
「これは?」
「私からのお祝いです」
――自宅に戻った孫は、じいさんからそのリボンで飾ってある封を受け取った。
「じいちゃん、これは?」
「ああ、競艇場で会った人から頂いた」
封を開けると、そこには12Rの舟券が一枚。
「6-1-2・1点・1万円」
その裏に「おめでとう」と書いてあった。
「じいちゃん! この人って!?」
「おお、そうじゃ。いつか話してくれた――、青い帽子を被っていたよ」
~B・R~ Prophet
次回もお楽しみに!