おべんとう
お昼休み、時系列なんて関係ない
「これはなんだ?」
目の前の少女はきょとんとした表情でこちらをみている、状況を理解していないようだった
お昼休み、学生が各々昼飯を食らうべく学食だの弁当だのを目の前に置く時間、俺もその例に零れず、目の前にある男子高校生の割りに小さい弁当の包みを開いていた
「この黄色い物体はなんだ?」
「卵焼き」
俺が箸でつまみあげた、綺麗な形で黄色の美しい、誰がどう見たって卵焼きの物体を、こいつは当然のようにそう答える
「あぁ、どう見たって卵焼きだ、めちゃくちゃうまそうだと思う」
「自信作」
無い胸を張るこの女は、誇らしげにそう言った
まったく、冗談じゃない、なぜこいつは料理だけはできるんだ、普段行動からすればドジであるが故に料理は苦手でいつも失敗する、というのが定石だろ、テンプレだろ、守れよそういうの、おまえこのままだと突然突拍子も無いことを平然とやる頭のおかしい女と呼ばれるぞ?主に俺に
「いや、こういうのは大体見た目はいいが洗剤とか塩化ナトリウムとかが入ってんだよ、そういうオチなんだろ?」
「?料理に洗剤や塩化ナトリウムは使わない」
なんでこいつに「分かってないな」みたいな顔で見られなきゃならんのだ?俺の頭は正常だぞ?分かってたよ?普通使わないものを使っちゃうのがドジっこだろ?
「……早く食べないとお昼終わっちゃう」
「……い、いただきます」
なんだ?なぜ俺はこんなにもコレを食らうことに躊躇してるんだ?見た目うまそうな卵焼きだぞ?どうした?俺はどうした?
「……上にかかっている赤いのは、ケチャップだよな?」
「私は嘘は付きたくない、だからその質問は取り下げて?」
こえぇよ!?なんで答えないんだよ!?ケチャップだって一言言ってくれればよかったんだよ!?はいこれもう口に入れられません!正体不明の赤い液体なんて口に入れられません!
「大丈夫、鉄分が豊富、体にいい」
精神衛生上大変よろしくない、なんてもの卵焼きにかけてくれちゃってんだよ、ってか俺も俺だろ、ケチャップとそれの見分けぐらいつけろよ
「コレはもはや食いモンじゃない、全国の卵焼き愛好家と料理人と俺にあやまれ」
「厚焼きたまごでごめんなさい」
そういうことじゃないいんだよ、厚焼きだろうとダシ巻きだろうとこのさいどうでもいいんだよ、ってか俺は厚焼きの方が好きだからそのその辺りはグッジョブだけどね?違うよな?そこじゃないよな?
「自分の体傷つけるなって話だ」
「?でも私は食べてくれると嬉しい」
こいつはあれか?やっぱりちょっと違うのか?特殊なのか?
「から揚げは、食べてくれた」
「……オイ、チョットマテ……いまなんていった?」
食った、食ったよ?から揚げ食べましたよ?え?なに?聞きたくない、ちょー聞きたくない、これ聞いたら俺もう戻れない気がする
「私のふとももは二つしかないから、たくさんは出せないの」
「……ちょっとトイレ行ってくる」
いや、え?え??え???なんだ?とりあえず胃の中空にすればいいんだろ?ここじゃあれだもんな、トイレいかないとな。あはははははははは
「冗談、私ってばおちゃめ」
「俺はお前を一生許さねぇ」
最悪だよ、最悪の気分だよ、若干安堵している自分が情けないよ
「最近俺のふともも、スリムになったと思わないか?」
「お腹についてくるから問題ない」
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