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九尾の孫 番外編【策】  作者: 猫屋大吉
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陰陽

聡と樋口は相馬家のガレージに着いた。

車を降りると樋口を促し 玄関に周る。

「純和風ですか、良いですね。最近は洋風ばかりだから中々こんな家に御目に掛かれないですよね」樋口は聡の後ろを歩みながら言った。

聡が玄関を開け、さぁ此方ですと樋口を招き入れると「ただいま〜」と家の中へ向かって声を掛ける。

「おかえりー」「お帰りなさいませ」と中から女性2人の声が聞こえ、1人がバタバタと走って来た。

「若林さん、迎えなんて要らないよ、でも丁度良かった。此方が樋口さん、陰陽師をしていらっしゃいます。樋口さんを部屋に先ず案内してあげて下さい」聡が言うと

「畏まりました、どうぞ 此方です」と樋口を連れて奥へ歩いて行く。

聡はリビングに顔をだすと優子がキッチンで夕食の準備をしていた。その光景をちらっと見て自分の書斎に行き、鞄を置くとリビングへとって帰す。

「お父さん、お疲れ様」優子が声を掛け、

「一緒に連れて来た人って、チラッと聞こえたんだけど陰陽師だって?」

「ああ、普段は神主をしている方だよ」

「陰陽師って九字を唱えるあれでしょ」

「お嬢さん、良く知ってますね」樋口が若林に連れられリビングに入って来た。

「あっ、すいません。娘の優子と申します」

慌てて優子がお辞儀する。

「2人は もう済ませたのかい」聡が言うと

「うん、お腹すいちゃって」優子が答える。

「樋口さん、食事にしましょう。話はそれからっと言う事で 良いですか」聡が問い掛けながらテーブルの椅子を引き 手招くと「ありがとうございます。頂きます」樋口は言いながら椅子に座った。

食事の間に若林を紹介し、取り留めの無い世間話をして食事を終える。

食事を終えた聡と樋口は、隣のリビングへ移動するとそこへ若林がコーヒーを持ってやって来て「お嬢様が洗い物をして下さっておられますので暫く御待ち下さい」と言うとキッチンへ戻って行った。

「気さくなお嬢さんですね」樋口が言うと

「男勝りなのが玉に傷で。あの2人が庭で黒い影を見ているんですよ」と言う。

「じゃもう一度同じ話を当人達から聞きますね」樋口が言った。

暫くして優子と若林がリビングにカットケーキと茶菓子、自分達の飲み物を持ってやって来たので聡は2人にもう一度 庭先で見た事を説明する様に促した。

2人は聡に言った同じ内容を樋口に説明すると樋口は 自分が庭に出るので見たと言われる場所からどの辺りだったかを教えて欲しいと言い出したので4人はリビングを出て庭に面した廊下へと移動する。

「じゃこのサンダルを御借りして行きます、御指示宜しくお願いします」と言ってサンダルに履き替えてさっさと梅の木の下へ向かって行く。

「あっその辺りです」若林が言う。

「其処から灯籠に向かって灯籠を出た辺りで消えました」優子が少し大きな声で言った。

樋口は右手を挙げて了解したと合図を送り梅の木、地面、灯籠を立ち上がったりしゃがんだり、時に這いつくばったりしながら慎重に調べ、胸元から取り出した和紙に何かを採取している。20分程 そうした行為を続けると和紙を左手に持ち軽く畳み再び胸元に仕舞うと調べた辺りに今度は袖から出した巾着に一方の手を差込みブツブツと何かを言いながら巾着の中の砂の様な物を4方向、8辺へ撒き、右手を目の前に垂直に立てて軽く握り人差し指と中指を真っ直ぐ立てて水平に腕を振り続けて縦 又、水平と九字を切った。

其れから足を踏み鳴らしながら4方向、8辺を円を描く様に周り廊下へと戻って来て

「リビングに戻りましょうか」と言ったのでまた4人はリビングへと移動した。

リビングに戻ってソファに腰掛けて聡は、

「何かわかりましたか」と聞くと

「今夜にでもこの和紙の中身を調べてみます」と言い、胸元から畳んだ和紙を取り出し何やら難しい言葉の書かれた封書に仕舞い混みテーブルの端に置いた。

「あれって九字ですよね、あの指を立てて横縦とやった奴」優子が言うと

「はい、良く知ってますね」笑いながら樋口が答えると

「前に 陰陽師って映画でやってましたから・・・でも本物を見たのは初めてです」と優子が言いながら若林を見て頷き、

「でも最後の足踏みして回るのは知りません」と言い足した。

「足踏みして回るのは 悪意のある物に呼応して集まった魍魎を退けて結界を張る準備をしたんですよ」樋口が答える。

「そうなんだ、色々有るんですねー。ところで お父さん、どうやって樋口さんを見つけたの」優子が聡に聞くと横で若林も頷きながら聡に目をやる。

聡は 樋口と出会ったいきさつを簡単に優子と若林に説明したが、魔との契約は一切言わなかった。横で聞いていた樋口も其れを察して何も言わずに黙って聞いていた。

聡は、説明しんがら樋口の目を見て少し安心する。

説明が終わり頃合いを見て樋口は、

「明日の朝にこの家を結界で包み混み、霊的侵入者にこの家その物を見えなくしてしまいますね」樋口が言い、コーヒーを口に運び、「これは良い豆を御使いだ、コロンビアとキリマンジェロ其れにモカを少し加えてありますね」とコーヒーを褒めると

「若林さん、本当?」聡が聞くと

「流石で御座います、コーヒー専門店で特別に調合して頂いております」

「え〜そうなんだ、友達がうちのコーヒー美味しいって言ってたけど・・・外でコーヒーって殆ど飲まないからわからなかった。ごめんね」優子が言い、

「私は研究室ではインスタントばっかりで」

聡が笑いながら言うと若林が、

「旦那様がコーヒー御好きだと言われたのでコーヒー通の友人と買っている専門店の方とで色々調合してこのブレンド比を見つけたんですよ」笑ながら言う。其れを聞いていた樋口が、「実に良い家庭ですね、相馬さん、お互いに気を使いあっている。お互いに敬う心が無ければあり得ない事ですよ」と笑いながら言い、うん良いな、と言いながらコーヒーを口に運んで頷いていた。

「陰陽道って具体的にどう言った学問なんですか? 私はほとんど知りませんので、西洋のエクソシストの様な物かと」聡が聞くと

「かなりエクソシストとは違いますね、簡単に言いますと陰陽とは字のごとくプラス、陽ですねこれとマイナス、陰を混ぜ合わさった物を指します。基本は陰陽五行思想に乗っ取り、星読み等の天文学に始まり統計学、算学、地学などの多分野に別れます。五行とは 木、火、土、金、水に寄って世界が成り立っていると言う思想で其々に相性と相剋に寄ってバランスされていると言う考え方なんです」

と樋口は説明した。

「うーん、成る程、日本の算術はその流れを汲む物なのか」聡は頷きながら言うと

「今は数学だよ」優子が口を挟む。

聡は、「算学はね江戸時代中期から後期に飛躍した学問なんだよ、瓦版のクイズ欄にルートや円周率、三角関数等の問題が出されたりしていたんだよ」と言うと

「え〜、其れを丁稚さんや町人、武士が見て解いてたってこと?」優子が言うと

「その通り、徳川幕府は教育に熱心だった、熱心過ぎて国民の思想が多様化してしまい、攘夷に寄って潰された。当時の有力者、幕府には日本と言う国の認識が少なく、徳川幕府と言う存在になってしまっていた。この体制が脆弱過ぎたと言う事だね」樋口が言った。

「自分で自分の首を締めたって事」

優子が聞く

「学問がもたらす最も大きな物、【好奇心】【探究心】がそもそもの改革の原動力に成ってしまった。って事だよ」

「そうか、其れで地方の塾生から始まったのかー、納得ですね」優子が納得し頷いた。

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