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九尾の孫 番外編【策】  作者: 猫屋大吉
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神職

壁に浮き上がったシミ、相馬家に現れた影の正体とは

聡、優子、若林がリビングに居る。

夕方6時前後の出来事を聡に話す優子は、お手伝いさんの若林さんに見た時の事を聞く。

「私が洗濯物を取入れて部屋で畳んでから各御部屋へ運んでいる時でした。御主人様の部屋に置きリビングの物を持って廊下に差し掛かった時に何やら動く気配が致しましたので其方を見ました時に丁度、奥の梅の木から燈籠の立って居る間の所を黒い影がゆっくりと移動してました。最初は、背丈も無いですので犬かなと思ってもっと良く見ようと廊下の端まで出た時に影だとわかり、思わず悲鳴を上げて腰を抜かしたしだいで御座います」若林が言う。

「でね、私がガレージから廊下に走って行って それを見た時は、燈籠の所にいたの。怖くなって握っていた雑巾をそのもやの様な影の様な物に投げつけたら落ちた雑巾の匂いを嗅ぐ様なしぐさをしてフンだったか鼻で笑った様な感じで何か言ってスッと消えたんだ。それから若林さんを連れてこのリビングに来たって訳なんだ」優子が言った。

「何なんだろうね」聡が言い、「ん、優子、鞄を取ってくれ」と言うと優子が鞄と聡に渡す。

「ありがとう」聡が鞄を受け取り鞄の中をごそごそしながら

「一寸、2人に見て欲しい物があるんだけど・・・お、これだこれ」

言いながらプリントアウトした写真を目を鞄に向けたまま正面に差し出した。

若林が受け取り、優子と一緒に覗き込むと

「・・・・」

「これ」

「お父さん、何処でこれを」優子が聞く。

「大学の研究室の事件室の壁にあったんだよ。月曜日に学生達と一緒に消したんだけどね、今日・・」

聡が言い掛けた時、優子が

「こんな形だった、ね、斉藤さん、これよね」興奮して叫ぶ。

「はい、確かに雰囲気はこんな感じでした」と答える。

「実はね、この壁のシミ、んー、笑われるかな・・・よし、化学部で成分分析して貰ったんだ」優子と斉藤は怪訝な顔をしている。

聡はその顔を見回して焦った様に続ける。

「でね、この壁ってコンクリートなのに動物、つまり哺乳類のタンパク質があったんだ」

優子と若林は訳の分からない顔を互いに見合せている。聡は更に焦りを(あらわ)にして頭を掻きながら「ん〜、ちょっと待ってて」

言い立ち上がり自分の部屋へ走って行った

戻って来た聡の手にはA3サイズのスケッチブックと鉛筆が持たれていた。

ソファーの元の位地に座るとスケッチブックを開き何かを書き始めた。

書き終わって其れを2人に見せる。

科学者らしく絵では無くフローチャートが書かれていた。

化学式を四角やひし形で囲み其れらの図形を線で繋いである。

優子が「お父さん、私達、科学者じゃ無いから これ見てもサッパリ分からないよ、ホント素人への説明が下手なんだから〜」

「今、説明するよ」聡が言い、

「この左手の縦のラインこれが通常のコンクリートの精製式で この最後の四角でコンクリートが完成すると思ってね・・・」

2人の反応を待つ

優子が「うん、続けて」と言う

「うん、で問題なのは枝別れしているこっち、壁の表面から深さ5mm位の所に動物性タンパク質が高密度で存在していた。その密度はおおよそ生物の密度じゃなかった。一匹の犬をそのままの形で体重を減らさずにどんどん小さくして20cm四方の大きさにしたと思ってくれたら理解が早いと思う。これが如何に異常な事かはわかるよね」

「絶対ありえない事って事は理解できる」若林と優子は互いの顔を見ながら頷く。

「この写真のこれと同じ様な形をした黒い・・・この場合、影って言おうか。うーん、科学者にとっては禁断の領域になるけど、霊的な物を感じるね・・・科学者の癖にって笑わないでね」

「私も見た時にそう思った、若林さんは?」

「私は、完全におばけだと・・・すいません、参考になりませんよね」

「3人がそう思ったんだ。私は直観で思った。明日にでも霊能力者を学校で聞いて見よう」

聡が言い、「若林さんも呑む?」

「初めてだね、3人で呑むのって」優子が言ってグラスを取りに行く。

ワインで良いよねっと言いながらスパークリングワインとワイングラス4つを持って戻って来た。

「え、グラス4つ」

「そう」と答えながら仏壇の前に行ってワイングラスを置き、ワインの封を切ってグラスに注ぎ、リビングに戻ると残り3つのグラスにワインを注ぎ、ソファーに座り、「お父さん、お願いします」と言いグラスを掲げた。




聡の研究室に聡と安藤が長テーブルに肘をつきながら話をしている。

その周りを数人の学生が囲み、其々が椅子に腰かけている。

話の内容は、科学者同志にとって最も毛嫌いすべき話題、【霊】、【超能力】であった。

かつてその分野に踏み込んだ研究者がいた。言わずと知れた福来友吉博士である。

彼はマスコミに寄ってたかって吊るし挙げられ大学を追われてそして亡くなった。

一方では、当時の東大に寄って策略を持って潰されたとの噂もあった。

だが、今回は違った。

物的証拠が、ここにあった。

超高密度に圧縮されたタンパク質の塊。

現世界において存在すらも許される事のない分子構造を持った物質。

「この分子構造、説明が出来ないな、宇宙空間なら未だしも・・・」安藤が言う。

「ん・・・そうだな」聡はため息を付き

「君達の中で信用出来そうな霊能者知らないか?」

一瞬、研究室に沈黙が訪れる。

「オイオイ、俺達は科学者だぜ」

安藤が言うと聡は

「色々な方面から見るのも科学だ。今 現在これ程の物的証拠が有りながら何も解決策が見出せ無いなら俺達と違う世界を見ている者に見て貰う、最善とは思わないか?」

「そ、そうだな。お前の直感は鋭いからな」

「教授」学生の1人が手を挙げた。

「知ってるか」

「神主さん何ですが、良いですか」

「ズバッとセンターだな。神職なら申し分ないな、私は名前を聞いても知らないだろうから、連絡を付けてくれないか、他には?」

「探偵さんなんてのは?」

「明らかに胡散臭いなー、パス、他は?」

「・・・」部屋の中が鎮まりかえる。

「神主さんに頼もう」聡が決定する。

窓際で電話を掛けていた学生が振り向き、

「教授、今なら居るそうです」と言うと

「良し、行こう。安藤、どうする?」

「お前の車だといつ動かなくなるか分からんから俺の車で行こう」と答えると

「そう言う事で3人一寸、外出するよ」

聡が他の学生達と助手に言い、鞄を取りに隣の部屋へ駆け込み、直ぐに出て来た。

「悪いけど案内を頼むね」

同行する学生に聡が言って3人は研究室を後にした。




神社に着き、社務所で神主の所在を聞き、面会を申し入れると直ぐに応接に通された。

5分程 待つとバタバタと走る音がして応接室のドアが開いた。

「すいません。御待たせしまして」

黒袍(輪無唐草紋)、白奴袴(白八藤紋)を着ている。階級は特級になる。

「神主の樋口と申します」頭を下げ礼をする

「急に押し掛けまして申し訳ありません、此方の学生、高橋君から貴方の事を御聞きしましまして、私、相馬と申します。横に居るのが安藤と申します」聡が言うと後に続いて

「安藤と申します」

「樋口さんとは会うのは2度目になります、高橋と申します」

「どうぞ御掛け下さい」樋口が言い、

「大学の先生方が・・・どんな内容ですか」

聡は 大学の研究室の壁のことと自宅であった怪異を話した。そして

「我々2人の科学力では 説明の着かない事ばかりで、そこで全く違う目線を持った方を頼りにした次第です」と付け加えた。

樋口は、写真を見ながら

「結構 赤いな」と(つぶや)

聡と安藤は 怪訝な顔をして、安藤が聞いた。

「赤いとは、写真には灰色のコンクリの壁とシミ、グレーの本棚しか写ってませんが」

「あ、すいません。念の種類なんです。白、青、赤って言う感じなんですけど、赤に行く程、何て言うか・・・邪悪って事なんです」

樋口が言い「写真なのではっきりとは言えませんが、どなたか動物に怨みを買ってるとかって人、いません?」

「え、動物って、何で動物なんですか」

聡が聞くと

「4本足だし、ん〜、キツネかな、九尾・・」

写真を見ながら言う。

「このコンクリの壁とシミを成分分析したんですよ、シミの所に動物性タンパク質が含まれていてしかも考えられない程の高い密度で出来上がっているんです」聡が言う。

「あ〜、流石に大学の先生だ。解析って凄いですよね、物質の構造が何で出来ているのかが何か分かっちゃうんですものね、うーんと・・・どう説明したら・・・念って言うのはエネルギーと考えて下さい、念が強いと質量が発生する、いわゆる具現化ってのも考えて下さい。えーっと代表的な処で【おもかる石】や【髪の伸びる人形】って言うのを知っていますか? 気持ちの在り方で重さの感覚が変わるし、容姿も変わる、この場合は髪の長さですね。此処で大事なのは自己暗示って言う言葉を取り除いて考えて見て下さい。念は念を発生させてる者の言わば 分身なんです。念を発した本人に似るんです。理由は本人がその念の意図を1番理解してるからなんです。犬や猫の気持ちや考え方を1番理解している人なんて居やしません、つまりそう言う事なんです」

「・・・」

「人や動物の思いに重さが発生する?」

「ちょっと考えられ無いですね」

聡と安藤は唖然とした顔で樋口を見ていた。

「ですから、この場合は【狐】ですね」

聡は 唐突に思い出した。

(あれは26か27才の時に脳について真剣に悩んでいた時に啓示の様な物を受けた。あの時の相手がまさかキツネなのか)

聡は、頭の中で考えた。

「どうやら心辺りがありそうな顔をしていらっしゃる」樋口は聡の顔を見ながら言った。

安藤と高橋は聡の方を見る。

「この世界には、神と神、神と人、妖と人の中立に位地する一族が居てます。表向きは探偵をなさって居られます。私もその方に助けて頂いた1人です、その方に理由を話して救いを求めるのが良いと思います」

樋口が付け加えた。

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