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九尾の孫 番外編【策】  作者: 猫屋大吉
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家庭

平和な家庭、慎ましく2人で生活する父親と娘、母は、娘が生まれるとすぐに亡くなった。

相馬聡そうまさとしは、研究者である。

脳科学を専攻し、脳外科はもちろん、日本臨床心理士資格認定協会に認定された臨床心理学を修めている。

今は、関西の某大学の教授であり、一子の父でもある。

妻は、実子を生むと持病が悪化し、他界した。

一子は、気の強い子で小さい頃は、常に何かを我慢していてもあっけらかんとした娘である。

脳波に興味を持ったのは、ある時 被験者の1人と別の部屋に居る一人の被験者の脳波が異常なまでにシンクロし、目の前にある物質の酷似点こくじてんについて同時に類似した見解を文面にしたためた事が原因であった。

その実験以降、酷似した実験を数度と無く繰り返したが再現は、出来なかった。

それらのデーターを週末に家でまとめて見ようと家に持ち帰った事が原因で更に脳波にのめり込んで行く事となる。




「ただいまー」聡は、帝塚山にある自宅のガレージから玄関に周り込み家に入った。

靴を脱ぎ、玄関を上がり廊下を歩き奥のリビングに向かう。

「あ、お父さん、おかえりー、もう一寸したら御飯炊けるからねー、一寸待ってて~」と歌を歌いながら鍋から料理をすくい皿に移して行く。

「ビールで良い?」

「おっ、ありがとうね。今日は、ロールキャベツか、美味しそうだ」

「ほい、かんぱーい、今週も一週間、お疲れさま~」

カシャン、ビールグラスの触れ合う音と共に カチンと言う音がキッチンで鳴った。

「あ、御飯炊けた」と「まぜ、まぜ~♪」優子が走って行く。

小走りに走って戻って来て、「さぁ、食べよう」と言い、2人向い合せで食べ始めた。

いつもの週末の相馬家の日常である。



食事が終わり、洗物を済ませて2人でテレビを見ていた。

「うーん、最近、又 異常な犯罪が多くなってきたな」聡が言う。

「うん、この近くの池の向こう側ね、大阪府警の偉い人が住んでる家の角ね、人数がね、増えてたよ」

「だろうな、其処の銀行も数年前に籠城事件もあったしな」

「この辺も大きな家が多いからある意味怖いよね」

「うん、人が出歩かないからな」

「帝塚山の駅から近いから毎日、改札出たら走って帰って来るし、結構ね、夕方の7時位だな、うん、人が一杯改札潜るからまだ、その時間は、へっちゃらだよ」

「お前、バイク どうした?」

「うん、乗ってるよ。ドゥカティ、ストリートファイター~8、4、8♪、良いよ。最近毎日通勤してるよ」

「・・・通勤でか、お前、結婚できねーぞ」

「そのうち 出て来るよーん、慌てない慌てない、チッチッチッ」

優子が聡の方を向きながら 軽く握った右手に人差し指を立てて左右に振っている。



ドゥカティ(Ducati):

イタリアのボローニャを拠点とするオートバイメーカー、90度V型2気筒エンジンを側面から見るとL字に見える独特の搭載手法を取り入れた独創的な世界観を持ったメーカーである。

ストリートファイター848は、スーパーバイクチャンピオンマシンであるスーパーバイク1098のエンジンとフレームを移植したネイキッドモデルとは決して言えないマシンに仕上がっており、その名の通り、かなりのじゃじゃ馬となっている。水冷デスモドロミック4バルブL型2気筒排気量1,099cc、のエンジンが155PS/9,500rpm、11.7kgf・m/10,000rpmを絞り出し、車重197kgの車体を押し出して行く。言わばスーパーネイキッドモデルとなっている。日本国内仕様は100PS強に抑え販売されている。



「アッ、お父さん、明日、友達と映画を見に難波に行くけど、夕方、難波に出て来てよ。たまには外食しようよ~、帰りは、バイクの後ろに乗せて挙げるからさ~、良い?」

「良し、たまには家族孝行だな、その友達も一緒で良いぞ、正、俺は、自分の車で行く」

「わぉ、太っ腹ぁ~、ありがとう。お風呂入って来るねー」優子は、走って行った。

(まったく、もう少し、女らしくならんのかね、まぁ、好きな人が出来たら変わる事を祈るか)

聡は考え、ビールグラスと自分の食器をキッチンに運び、洗物をして書斎へ鞄を持って入って行った。

書斎へ入った聡は、部屋の明かりを点け鞄の中の書類を出し、手に持って机の前の椅子に腰かけるとリクライニングを倒し、何の気無しに書類を机の前の電燈に透かす。

聡は、驚いて椅子からひっくり返りそうになった。

「何だ、今の妙な一致は・・・これか・・・これが脳波の一致と言う事なのか」

聡が透かした被験者数人分の脳波がある一点を頂点としたグラフが、全く同じラインを描いていた。

「どう言う事だ、これはこのライン・・・そうか、1人の被験者ともう1人の被験者、此処に来る認識がこのラインを形成している。そうに違いない。出ないと理由が付かない、発動時間は、全く同じだ、これも、これも、これも、わかったぞ、純粋に意識が同じ方向性を持っていると脳波が同じになる・・・と言う事はだ・・・落ち着け、落ち着け、俺、・・・うーん・・・出会う、場所、うーん」

ドアをノックする音が聞こえた。

「いいぞ」

「お父さん、どうしたの、大きな声で」優子が顔を覗かせた。

「うん、少し、興奮してな、新発見したんだ。これとこれとこれ、透かして見て呉れ」

聡は、優子にそのグラフを渡した、優子が電燈に透かして見ると

「此処、同じだよね」

「そうだろ、そうなんだその部分だけが全ての被験者に一致しているんだ」

「良かったね、発見したんだよね、取り敢えずその興奮を鎮めないと寝れないよね、ワイン飲む」

「おぅ、祝いのワインだな」と言い笑う。

優子は、久しぶりの父親の笑顔に嬉しくなって微笑み、

「ワ~イ~ン~♪」と歌いながらリビングへ急いだ。

聡は、書類を鞄に入れ、机の下に置くと娘の後をリビングへ行った。


「かんぱーい」優子がワイングラスを差し上げる。

聡もワイングラスを差し上げ、乾いたガラスの音がリビングに響いた。

「よかったね~、あっ、つまみ、何が良い? サラミでもハムでもビスケットにレーズンバター、サラミを焼いてる間、ビスケットとレーズンバターにしよっか」優子がワインを飲みながら立ち上がり冷蔵庫からレーズンバターとサラミを取り出し、バスケットからビスケットを取り出してサラミをキッチンに置いて小皿とビスケットとレーズンバターをリビングのテーブルに運んだ。

急いで戻り、サラミを炙り、4mm程度に刻んで小皿に盛って戻って来る。

「もう一回、かんぱーい」優子が言って乾杯し、ワインを1本、2本と空けて行く。

「優子、お前、ほんとに酒、強いな」

「だってお父さんの子だよ、一緒に呑む親子ってのも良い物だよ~、感謝感謝」

「ハッハッハッハッ、謝謝しぇいしぇい

聡は(あいつも生きていたら3人で呑めたのにな)とふっと亡くなった妻の事を思う。

「あー、母さんの事、思い出してる、愛妻家だねーぇ、わかったわかった」

優子が立ち上がり仏壇にワインとグラスを持って ふらふらと歩いて行き、

「母さん、お父さんがまだ思い出してるから 一緒に呑もう」と言いワインとグラスに注いでいる。

そのグラスに自分のグラスを当てて乾いた音を響かせて戻って来た。

「これで3人で呑めるよ、さぁ、さぁ、お父さん、ぐっ、ぐっと」

「ありがとうな、これでお前が結婚出来れば、あいつも喜ぶよ、わっはっはっは」

「それ、それ、禁句ね、あー、一寸酔っぱらって来た」優子がほっぺたを膨らませて抗議した。

「2人で3本も空けりゃ酔うわ、よし、後は、俺が片付けておく、美容の為にもう寝ろ」

「ありがと、おとうさん、寝るわね、明日、よろぴくれーす」と言いながら手に持ったグラスのワインを一気飲みして「おやすみなさい」と頭を下げて自分の部屋へ戻って行った。

聡は仏壇の前へ行って胡坐あぐらをかくと「もう一杯、付き合ってくれ」と言い、グラスを当て、自分のグラスに入ったワインを飲み干した。


まだまだ続きます。

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