★六日目
六日目
期限まであと二日。今日は、学校が休み。
昨日はあの後、結局木下を調べなかった。調べる気にならなかった。
悪魔が誰か、多分分かったから。
♪♪♪〜
ケータイの着信音がなる。カニ先輩だ。
「…もしもし。」
『…どうした?そんな元気のない声して。なんかあったのか?』
「別に…、何もないですよ。朝だから…です。で、何の用っすか?」
『お前、仕事は順調なのか?あと今日を合わせて二日しかないぞ。』
「…」
『難しいのか?』
「いや、もう誰が悪魔なのかとかは、わかってはいます。」
『そうか…』
「…」
『タロエル。』
「は、はい。何すか?」
『いざとなったら“エレメント”を使ってもいいぞ。』
「“エレメント”っすか!?許可は下りたんすか?」
『いや、許可は下りていない…。だが、死ぬよりはましだろ。』
「カニ先輩も始末書だけで済みますしね。」
『だな。』
「…」
『タロエル。』
「はい、今度は何すか?」
『任務失敗したら、まず俺に連絡しろ。一か月ぐらいは、延命させてやる。』
「カニ先輩と二人きりの逃亡生活かよ。何か気持ち悪いっすね。」
『何だと!?人が心配して言ってやってるのに。』
「心配は、いりませんよ。俺は、失敗しませんから…」
カニ先輩には、借りがいっぱいあるから失敗する訳にはいかない。
『そうだな、心配して損したよ。じゃ、切るぞ。』
「はーい。サヨナラっす。」
プッ プー プー プー
とは言ったモノのどうすりゃ良いのかねぇ…
ピンポーン
誰だ?このアパートは、誰にも教えてないけど…
ガチャ
「オ、オッス。」
そこには、日本人には見えない肌の黒い奴がいた。
「さ、坂田!!良くこの家分かったな。」
「ん、まあな。」
「上がれよ。」
坂田を部屋の中に案内した。
坂田は、今に腰を下ろし、俺はベットに座った。
「あのな、天野。お願いがあるんだ。」
坂田が、切り出した。
「何?」
「俺を殺して欲しい。」
…
「何で?」
「もう知ってるんだろ。俺は、悪魔なんだよ。」
やっぱり…
「天野、お前は、天界から俺を殺しにきた天使なんだろ?」
「ああ…」
「じゃあ、お前にとっても俺は、死んだ方がいいじゃないか。」
…
「坂田ぁ、俺にはわかんないんだよ。俺たち対抗課の天使は、すげぇ悪い事をした悪魔を殺すのが仕事だ。だけどお前は…」
「悪い事はしたよ。しかも天界にも魔界にも“第一級大罪”とされてるとーっても悪い事をな。」
「第一級大罪!?一体何したんだよ?」
…
「天野、その前になんか飲み物もらっていいか?」
「あ、うん。そこに座ってて。」
俺は、お茶をコップに入れ天野に渡した。
グビ グビ…
坂田は、一息ついた。
「じゃあ、話そう。知っての通り、俺は悪魔で、桜は天使だ。」
うん。坂田が悪魔で、桜が天使…
ぇえっ!!!!!??
「桜って天使なのぉ??!!!」
「え、お前知らなかったの!?」
「じゃあ、もしかして第一級大罪って…」
“悪魔と天使の恋愛”。
それは、世界に混乱と混沌をよぶ。よって、それは、天界でも魔界でも禁じられている。一番最近の“悪魔と天使の恋愛”は、天界と魔界の大戦争を起こした。それほどの大災害を及ぼす大罪だ。
「俺は、てっきり昨日で俺に気付いて、前に桜とお前で二人でいた時には、もう…」
なーんにも気付かなかった。俺って鈍感。
「ま、そうゆう事だ。昨日、お前と話した後…。真剣に桜と二人でどこまでも逃げようって考えたんだ…」
逃げられたら、俺の命が…
「だけど、出来なかった…。俺にも魔界に家族がいるし、桜にも…。混乱と混沌を起こしたら…な。だから、俺一人で死ぬコトにした。」
「宮野には…」
「この事は、言ってない。俺一人が死んだら良い問題なんだ。桜には生きててもらいたい。そうゆう事。まあ、厄介な事に悪魔は、自分じゃ死ねないからな。だから俺を殺してくれるな?」
…
「あ、ああ。わかったよ。」
「ありがとう。だけど、殺すのは明日にして欲しい。」
え、
「何で?」
「俺を倒しに天使のお前が来たように、桜にも悪魔の暗殺者が地上に来ている。そいつらを倒して、桜を助けたい。」
「ま、まじで!?そんな奴等いたの?」
「しかも、桜が奴等のターゲットっていう事を今まで隠してたんだけど、昨日気付かれた。奴等は、二人組で一人は、長身で炎を吐く。そいつは、何故か知らないけど消えた。」
あ、俺が倒した奴。今考えれば“お前を見てた訳じゃない”って、ほんとのことで、俺じゃなく桜をみてたのか…。
ん?じゃあ、一日目は…?
「そして、あと一人は…、ていいか別にお前には関係ないし。」
「手伝おうか?」
「いや、いい。これは、俺がやらないと…」
「…そうか。」
「最後に言わせてくれ。」
「何?」
「ありがとう。俺と桜は、お互いに惹かれあって地上に下りたのはいいが、大罪のせいで一歩踏み出せなかった。だけど、一昨日のお前のお陰で愛を確かめられた。まあ、明日には俺はいなくなるけど、それだけで俺は幸せだった。」
「ん、そうか。」
坂田は、立上がりドアの方に向かった。
「じゃあ、明日な。」
ガチャ
ドン!
坂田の言葉…
なんか悲しい気持ちになった。
***
夜。
窓がカタカタ揺れる。きっと外は嫌な風が吹いている。
嫌な予感。
俺のこんな時の嫌な予感は、よく当たるんだよなぁ。
♪♪♪〜
ケータイから音が鳴る。
カニ先輩からのメールだ。
“ターゲットの死亡を確認した。任務終了だ。もういつでも帰って来ていいぞ。PSお土産よろしく。”
ターゲットの死亡を確認した?
なんで?
坂田は、俺が明日殺すんだぞ。
俺はまだ坂田を殺してないぞ。
なんで死んでるんだよ!?
ココロの叫びは空しく体の中に響く。
わかってる。坂田は、殺されたんだ。下級悪魔の坂田が暗殺に来た悪魔を倒せるわけがない。そんな事わかってた。
だけど、俺は坂田を止めなかった。止めれなかった。
俺は、気付いたら外に出ていた。やはり、外は風が強く肌寒い。
俺は、木下を追跡した時に辿り着いたあの路地裏にいた。
そこには、そこにあるには不自然なとても小規模の灰の砂場ができていた。
悪魔は、死ぬと灰になる。その証拠に今まで倒してきた悪魔も灰になったし、この前倒した長身悪魔も灰になった。
その小さな灰の砂場で灰を両手ですくい上げる。灰の中にピンク色の毛が、何本かあった。
自分の中で何かが切れたような気がした。