★五日目
五日目
今は、朝の八時半。今から準備して学校に着くのはギリギリだ。
石川カナは、五時までずっと起きてた。どんな体力だよ、天使の俺が体力負けするところだよ。んで、石川カナが寝てそれからアパートに帰ってきて結局寝たのは六時頃だから睡眠時間は、二時間ぐらいか…
眠い!!
けど、今日頑張んないと俺の命が危ない…
頑張って、学校行かなくちゃ…
***
十一時、学校到着。
あれから結局寝坊して遅刻。睡魔には勝てない…
「まーた遅刻か、天野。」
と坂田。
「家が遠いんだよ!」
学校まで徒歩十五分。
「ていうか、坂田。昨日、どうなった?」
「…それなんだが、昼飯の時、屋上来てくれないか?」
「おう、いいぜ。」
いい報告待ってます。
***
昼食時
俺は、約束通り屋上へ来た。屋上では、数個のグループが輪を作って昼飯を食べてる。
その中に一人フェンスからグラウンドを見てる異常に肌が黒い奴が、立っていた。
「坂田ー。」
すぐ後ろに来て声を掛ける。坂田は、無言だ。
「なーに黙り込んでるんだよ。“黒い”ぞ。」
「ソレ言うんだったら“暗い”だろ」
「で?」
「“で?”って?」
「何か話あったんじゃないのか?」
「あ、うん…」
て、また黙り込んでるし…
「何なんだよ!さっきから黙り込んで!何か話があるんだろ!?」
「昨日、桜に告白した…」
え、えー!!!?
「で、で?」
「OK…って。」
「良かったじゃん!!おめでとう!」
俺、良い事したなぁ…。天使の鏡だな、俺。
「良かったのかな…?」
て、何故テンションが低い。
「何だよ、それ。いいに決まってんじゃん。好きな女の子に告ってOKされる。何が悪いんだよ!」
「いや、そういう事じゃなくてさ…」
「ん?じゃ、どういうこと?」
「…んー、何て言うかなー。俺と桜は、そのー、本当は、付き合っちゃいけないんだよ。うん、何て言うか、例えるなら“ロミオとジュリエット”なんだよ。」
なんだそりゃ?
「親同士が仲悪いのか?」
「いや、違うんだけど、まあ、似たようなモノかな…」
………
「なあ、坂田。“ロミオとジュリエット”って、最後どうなるかわかるか?」
「愛し合いすぎて二人共、死ぬはめになる…」「うん。だから、お前らも死んじゃえばいいんじゃん?」
「え?」
「さすがにそれは、無理か…。なら逃げちゃえ。しがらみの無いところまで二人で逃げちゃえば?そしたら、二人で愛し合えるじゃん。」
長い沈黙。
「うん、そうだな。」
坂田の短い答え。だけどすっきりとした答え。
「ありがとう、天野。お前のお陰でなんか気持ちが固まったよ。」
「おう、良いってことよ。俺は、天使だからな。」
昼食時間終了の鐘がなった。
***
さあ、一件落着したところで仕事を頑張らなくちゃな。
今日は、木下も学校に来てるしな、あの手この手でじっくり調べてやるぜ。
まあ、どうやって木下が、悪魔かを調べるかというと…
これしかない。題して“十字架投げ反応見作戦”!!
説明しよう。作戦名通りである。
この前、宮野を調べる時に使った十字架のネックレスをこの天界一の強肩で木下に向かって全力投球。
んで、木下の反応を見て悪魔かどうかを確かめるっていう作戦。
うーん。我ながら上出来な作戦だ。
よし、作戦も決まったし、善は急げ。くらえ、“170kmクロス”!!
すぽっ
十字架のネックレスがすっぽ抜けた。
チャリン
空しく俺の後ろ側の地面に落ちる。
「天野ー、何か飛んで来たぞぉ。」
後ろから、坂田の声がする。
「ごめーん。」
坂田が、十字架のネックレスを拾おうとする。が、
「うっ」
ネックレスを拾おうとする坂田の手が静止する。坂田が、その体勢でこっちを見、目が合う。
「…ご、ごめん、天野。ちょ、ちょっとトイレ。」
坂田は、走って教室を出ていった。
今の反応…
坂田、まさかお前が…
その日、坂田は学校を早退し、顔も見せずに家に帰った。