★四日目
ここは、天界のほとんどの公務が、働く場所“天園”。私、カニエルは、そこの、悪魔対抗課アジア支部の部長を勤めてる。
今、私は“ある人”に会う為、“ある場所”に向かって、天園の廊下を歩いている。そこは、天園で、一番高い場所にあり、天園の中央にある部屋。
“天使長室”
天使長室のドアの前に立ち、ベルを押す。
ビー
『はい、どちら様でしょうか?』
おそらく天使長の秘書が、ベル越しに言った。
「悪魔対抗課アジア支部のカニエルという者です。天使長に面会したくて参りました。」
『カニエル様ですね。お待ちしておりました。中へどうぞ。』
お待ちしておりました?
今日は、何も連絡も入れずに来たのだが…
天使長室のドアが、ゆっくり開いた。
「お待ちしておりました。カニエル様。」
そこには、さっきのベルの声らしき女性が、頭を下げて待っていた。
「お待ちしておりましたと言いましたが、私は、今日、アポなしで、急に来たんだが…」
「あ、はい。普通だったら、事前に連絡を入れないと天使長との面会は、出来ません。ですが、天使長自らが、カニエル様が来たら、通すようにと、おっしゃってたので…」
ほう、天使長は、私がここに来るのをお見通しって訳か…
「天使長は、今、他の御方と謁見中なのであちらのソファーでお待ち下さい。」
私は、言われるがままにソファーに座った。
にしても、天使長室は、広い。そして、奥にも二つドアがあって、多分一つは天使長の部屋で、一つは、秘書達の部屋だろう。全く悪魔対抗課アジア支部の部屋と比べるとそれはもう…
秘書も、見たところ二、三名いるし…
これが、私の目指してる場所…
ガガガ
奥の扉の一つが開いた。そこから、天園では見慣れない偉そうな顔した奴等が数名出てきた。そして、その最後に天使長“サファエル”が、出てきた。
「やあ、カニエル。もうきてたんだね。」
偉そうな顔した客人は、もう外へと出ていった。
「さ、中へどうぞ。」
天使長が、中へと手招きをする。
この天使長は、若い。まあ、若いって言っても、三十代前半ぐらいだが、歴代の天使長に比べると異例な程若い。まあ、若いでの昇進は、私も記録を出してるが…。
私は天使長の部屋のソファーに腰掛けた。
「今日は、あの任務について来たんだろう。」
天使長は、なんでもお見通しか…
「はい。あの任務は、おかしすぎます。まず、あんな下級悪魔一匹を退治する任務が、天使長直々の任務だなんて…。そして、その任務に一人の天使の命を懸けてるなんておかしすぎる!そして、タロエルが遭遇した中級悪魔…」
ふぅ、私としたことが、少し熱くなりすぎた。
「まあ、君が言うのも分かるがな。」
天使長が、口を開いた。
「ただ、それだけあの任務は重要なのだ…」
「私は、そう思いません。たかが悪魔一匹…」
「そう、たかが悪魔一匹…、だが、その悪魔が“第一級大罪”をしようとしてるのだ。」
「第一級大罪!!?」
第一級大罪とは、天界が決めた規則の中でも一番重い罪のことである。
「そう、あいつらのやろうとしてる事は、決して許してはならない事なのだ。」
「あいつら?悪魔は、一匹じゃないんですか!?」
「いや、始末する悪魔は、一匹だよ、一人は…」
「教えて下さい!!その悪魔は、一体何をするつもりなんですか!?」
「いいだろう。その悪魔のやろうとしてる大罪は…」
「…と言う事だ。」
天使長が、話終えた。
「そんな大罪…。もしタロエルが、失敗したら世界は混乱と混沌に覆われますよ!」
「そうだ…。」
「何呑気なこと言ってるんですか!早く応援をタロエルによこさないと…。と言いますか天使長、畏れながら言わせてもらいますが、何故こんな重要な任務に我々悪魔対抗課に任せたんですか?天使長ご自慢の“特殊隊”でもお使われになった方が良かったのでは…」
「カニエル。君は、何もわかっていない。今、この任務に大きな動きを見せ、“ソレ”が、民に知れ渡ってみろ。それこそ、混沌を招く原因になる。だから、そなた達に任せた。そして、応援を送ることは、私が許さない。」
くっ、頑固な奴だ。
「今は、君の部下タロエルを信じるしかなかろう。きっとうまくいく。」
失敗したら、責任は全て悪魔対抗課アジア支部にか…。
なかなか、えげつないコトしやがるな、サファエル。
***
四日目
今は、学校が終わり、俺、宮野、坂田、あと石川カナと四人で制服のままで街を歩いている。
つーか俺、こんな事してる暇は、無いんだけど…
あと三日で、悪魔退治しないといけないのに、まだ誰が悪魔なのか断定できてない。
まあ、木下が、一番怪しいとは、思っている。今日、ちょっと探りをいれようと思ってたけど、あいつ学校休みやがった。このタイミングといい、昨日の事といい、怪しすぎる。
「どうしたの?天野君、元気ないじゃん。」
石川カナが、話しかけてきた。
「別にそんな事ないよ。メチャクチャ元気っすよ。」
「そお、よかった〜。今日は、何か坂田君も元気ないし、これで、天野君も元気なかったら、なんかあったのかなぁと思ったよ。」
そうだなんだよ。坂田の為に仕事の時間削って、遊びに来たのに、問題の坂田が、あまり元気がない。
ここは、いっちょ俺が…
「坂田、どうしたん?」
「あ、え、何が?」
元気なさそうに坂田が答える。
「坂田、今日元気ないじゃん。」
「え、そうか?」
コイツもしかして…
「緊張してるのか?」
「へ、あ!何で俺が緊張しないといけないんだよ?!」
焦ってる焦ってる。坂田は、絶対嘘とかつけないタイプだな。
「いつも学校では、宮野と平気で喋ってるのに、何で今は、喋んないんだよ。」
坂田は、遊んでる最中、宮野とあまり喋ってない。(俺が、二人分喋ってるよ)
「いや、何ていうか、な、その…」
「言い訳はいいよ!カラオケでは、喋れよ。」
俺達は、ゲーセン、ファミレスに行き、最後にカラオケに行こうと今カラオケボックスに向かっている途中だ。
「いいな。カラオケでいっぱい喋っておけよ。んで、帰り道は、お前ら二人にしてやるからよ。」
「えぇ!?」
分かりやすい驚き方だ…
カラオケボックスが、見えてきた。
***
カラオケが、終わり、四人で帰り道を歩いている。
「今日は、楽しかったねぇ。」
宮野が、みんなに言うように口を開いた。
目の前に分かれ道。
「じゃ、カナこっちだから…」
石川カナが分かれ道の手前で言った。
「あ、俺も。」
石川カナに付いて行くように俺も言った。
「うまくやれよ。」
俺は、坂田に耳打ちをした。
そして、俺達は、それぞれ別れの言葉を言って二手に分かれた。
しばらくして。
「天野君、家この方向なんだぁ。」
「いや、あっちの方向だけど、あの二人を二人きりにしたくてね…」
石川カナは、しばらく考えて。
「ああ、そういう事!」
納得した顔で言った。
「ていうか、今日の四人、なんか面白いメンバーだったね。」
「ん?何で?」
「みんな今年の転入生。あと木下もだけど。なんかカナ達のクラス転校生、多過ぎー。」
「みんな転校生だったの!?」
「うん。カナが転入してきて、次に桜と坂田君が、転校してきて、んで木下が来て、次に、天野君が来たんだよ。まあ、元々他のクラスより人数少なかったからうちのクラスに転校生が、多いんらしいけどさ…」
ふーん、木下も転校生かぁ…
さ、もう恋のキューピットも終わった事だし、そろそろ仕事に集中しないと俺の命がやばいぜ…
そして、石川カナのマンションが見えてきた。
「ねぇ、天野君。」
「ん、何?」
「この前、“また今度”って言ったよね。」
あ、そういえば。
しかも、この前監視課だと思った奴は、悪魔だったんだから大丈夫なんだけど、さっき仕事に集中するって決めたばっかだし、天使としてほんとは、やっちゃいけない事だし、俺には、天界に彼女がいるし…
「家、寄ってく?」
石川カナが、聞いてきた。
長い夜になりそうだぜ…