★二日目
二日目。
だめだ。誰が悪魔なのか、見当もつかない。
「天野、どうしたん?」
やけに黒い男が話しかけてきた。
「ん、なんでもないよ。」
「なんか、深刻な顔してんぞ。ほんとに大丈夫か?」
こうなりゃ、聞き込みでもするか。
「なあ、黒田。」
「坂田ですけど…。」
「あ、ごめん。でさ、坂田ぁ、このクラスでなんかおかしい奴とかいない?」
「おかしい?」
「うん。例えば、“コイツ人間じゃねぇ”みたいな奴とか“ホントに人間か、コイツ?”みたいな奴とか。」
「人間外探してるのか?」
「い、いや、別にそんな訳じゃないんだけど…」
意外に鋭いな、コイツ。
「…うーん。おかしい奴ねぇ…。あ、木下は?」
坂田は、窓側に座ってるおとなしそうな女子を指差した。
「普通の子じゃん。」
「アイツ、男なんだぜ。」
っ!?うそー。あ、さっきは、上半身がワイシャツで下半身が死角になって分かんなかったけど、ちゃんと男子のズボン着けてる。
「ふー、びっくりした。あんなかわいらしいのに…」
「あと、やっぱりおかしいのは、桜だろ。」
「へ、なんで?」
「だって、あの髪の色だぜぇ!あれは、おかしいよ!」
笑いながら坂田は、言った。コイツと宮野、ホントに仲良いな。
「ま、変な奴は、それぐらいだな。」
宮野と木下か…
今日、二人の内誰か、調べてみるか…
女男 ピンク女
うーん
ピコン!!
女男<ピンク女
よし。今日は、宮野を調べるぞー。
***
キーンコーンカーンコーン
放課後。
「ごめんな、宮野。俺のわがままに付き合ってもらって。」
「いいのいいの、どうせ暇だったし…」
俺は、今、宮野と買い物に行く途中だ。
「それに天野君、ここ来たばっかで、ここら辺よく分からんでしょ。アタシが案内してあげるよ。」
「助かるよ…」
さぁ、どうやって悪魔かどうか、調べるか…
とりあえず、
「宮野さん、この十字架のネックレスどう思う?」
首に、かけてるネックレスを見せる。
「うーん、普通ってカンジ。」
普通な答えだ。
「宮野さん、ちょっと待ってて。」
自販機でペットボトルの炭酸水を買った。
「はい、これ。買い物付き合ってくれるお礼。」
聖水入りのな…
グビ グビ
「んー、何か変な味するよー。」
それだけ?
うん。確実に彼女は、悪魔じゃない。悪魔は、聖水の匂い嗅いだだけで苦しがるからな…
うーん、じゃあ今日は、純粋に買い物でも楽しむか。
あーあ、監視課みたいのが居なかったら×××な事や×××な事までやれそうなのになぁ…
***
すっかり辺りは、暗くなった。
「あー、楽しかった。」
宮野が言う。今日は、いつの間にか、俺の買い物じゃなく、宮野の買い物になってた。しかも、俺、荷物持ち。
ま、いっか。買い物してる時にわかった事があるから、それはそれで得したと思えば…
「天野君って、家どこ?途中まで一緒に帰ろうよ。」
「あ、ごめん。ちょっとこれから、ここら辺で用事があるんだ。」
「ふーん、わかった。じゃあ、またいつか遊びに行こうね。」
宮野は、俺が持っていた買い物袋を取り道路の向こうまで駆けて行った。
「じゃあねー。」
途中で振り向いて、手を振る宮野。かわいい〜。
て、そんな事考えてる場合じゃない。
俺は、目の前にあった名も知らない十階建てぐらいのビルに入った。そして、エレベーターに乗り、屋上へ行くボタンを押した。
ガチャン
屋上へ着いた。
そこには、背の高い一人の男がいた。
「覗きなんて、趣味悪いぞクソ悪魔。」
そう。俺の目の前には、悪魔がいる。て言っても、姿形は人間と変わらないけど…(俺もだけど)悪魔は、黙り込んだままだ。
「昨日からずっと覗きやがって…、監視課だと思ったじゃねぇか!!」
「別にお前を覗いた訳じゃない。」
「言い訳くさい。まさにストーカー。このスーパー天使タロエル様が成敗してくれるわ。」
「やれるもんならやってみろよ。」
悪魔は、背中からいかにも悪魔らしい羽を出し、空を飛んだ。
「燃えろ…」
ボオォッ!!
悪魔は、炎を口から吹いた。それを俺は、横に飛んで躱す。
「キー、空飛ぶなんて卑怯だぞ。」
「お前も飛べば、いいじゃないか…」
「天界では、地上で翼をだすの禁じられてるの!」
「フフ、じゃあ俺の勝ちだな。」
「それは、どうかな…」
鞄から、布に包まれたモノを出す。
「ジャジャーン!日本では持ってたら銃刀法違反で捕まる“拳銃”!」
包んでいた布を剥いだらそれは、近代の片手銃。
「はっはっはー!そんなちんけなモノで俺が倒せると思ってるのかぁ!!?」
パァーンッ!!
悪魔の右手が吹き飛ぶ。
「ぐがぁっ!!!」
「“弾”が、“特注”なもんで。」
「キ、キサマァ!!」
悪魔がもがく。そして、悪魔は怒りに身を任せて炎を吹いてきた。さっきの炎とは段違いの威力で範囲も広く、避けれそうにない。
「なんだよ、その威力…。絶対下級悪魔のレベル余裕で超えてるよ。」
カニ先輩の奴、嘘吐きやがったな。あの悪魔は、中級悪魔だぞ、絶対。
俺は、落ち着いて銃を向かってくる炎に構えた。
パパァーン
炎に大きな穴ができ、炎が屋上の地に着いた時、ちょうどその穴の中に俺が入った。そして、悪魔の額には縦線に切り傷ができた。
「くそぉ、紙一重で避けられたか。」
額、狙ってたのに〜。
ッ!?悪魔が物凄いスピードでこっちに向かって来た。は、疾い!スピードだけだったら、確実に負けている。
懐に潜り込まれた。
「ハッハー!銃なんて、近付いてしまえば、こっちのもんよ。」
悪魔は、左手に炎を宿し大きく振りかぶった。
ゴンッ!!
振りかぶっている間に俺は、銃を持っていない左手で悪魔の顎を殴った。人間の形をしてるので、あまり人間と変わらない。顎を思いっきし殴れば脳が揺れ、数秒意識が飛ぶ。その間にこめかみに銃口を向ける。
「チェックメイトだ、この野郎。」
パァーン
銃声は、星空に空しく響いた。 夜風に灰色の粉が流れる。




