★Add三日目
「呪われた子だ。」
「こっちに来るな忌み子。」
「うわー、化け物が、こっち見てる。」
もうそんな言葉にもなれた。
「お前、悪魔と天使の禁忌の子なんだろ。」
母と父が、早く亡くなり天使には生まれない“瞳”とエレメントのせいで、そんな噂まで流れてた。
「お前とは母ちゃんが遊ぶなって言われた。」
噂によってまともな少年時代は遅れなかった。
そんな中、
「私に着いて来い。一緒に天界を変えよう。」
俺にも救いの手があったんだ…
そこで夢は覚める。
レンタル三日目。
***
ここは、天園で一番大規模な会議室。
そこで月一度の天園会議が行われる。もちろん悪魔対抗課アジア支部長の私、カニエルも出席している。
今日は、天園会議。天園会議では、最近起こっている問題について天園の偉い方が話し合う。
予算の話。
治安の話。
選挙の話。
教育の話。
色々な事が、長時間により話し合われた。だが、私が一番重要と思っている話には触れもしない。
そう、大罪の危機について…
天使長は、一刻も急がないといけない事態なのに、余裕の表情で一番高い天使長の席に座っている。隣りには、この前、天使長の部屋で見た偉そうな奴。
一体、天使長は何を考えているんだ?
怒りが込み上げてくる…
***
俺は、今、前回の任務でいた学校に再びいる。カーニャも一緒だ。
ムノ曰く、大罪を企むテロリストは、宮野と坂田と接触が多くなる学校にいた可能性が高いという事で、俺とカーニャで学校でそれらしい奴を探せと言う事だ。
ふぅ、面倒臭ぇ…
前回も怪しい奴探したけど居なかったつーの。今回も期間ギリギリの任務になりそうだ…。
この教室、広くなったなぁ…
この中には、この前までいた坂田はいない。
宮野もいない。そして、木下も…
処理班によって適当な理由をつけての転校や退学などとなっているが、このクラスメートの急な減少に他のクラスの奴も混乱を隠せない。俺とカーニャも二週間ぐらい居なかったしなぁ…
ガラガラ
女眼鏡教師が入ってくる。
「はい。今日は、転校生が来てます。」
怪しい奴発見。
このクラスに来る転校生は、百パーセント天使か悪魔だ。
「アメリカから来た、ジキル君です。」お前かよ!!
ややこしい。
「ジキルです。」
自己紹介、短っ!
「うわー、ロン毛だー。」
「でも、かっこよくない?」
「タイプ〜。」
「外人かぁ。」
ここでは、天使はもてるなぁ。
「じゃあ、ジキル君は天野君の隣りに座って。」
ぇえ!俺の隣りかよ!ヤダなぁ…。カーニャもこっち見てくすくす笑ってるし。この魔性女がぁ!!
「はじめまして、僕、天野太郎。よろしく。」
初対面のフリして握手を求める。
「何してんだ。気持ち悪い。」
台無し!!!空気読め!
「そんなことより大体の見当はついたのか?」
「しー!」
せめて、小さな声で喋れよ。この中にテロリストが居るかもしれないんだから。
「そんな顔しても何が言いたいのかわからん。声に出せ。」
あー!もうコイツ嫌だ!!
***
放課後。
俺とカーニャとジキルで任務中の拠点となっているカーニャのアパートへ向かう。
今日は、本当に疲れた。俺の隣りにいる馬鹿のせいで。
「で、怪しい奴はいたのか?」
馬鹿が喋る。もう馬鹿の言葉はシカトしたい…。ていうか、コイツ何しに来たんだよ。あー、邪魔か。きっと捜索の邪魔しに来たんだなコイツ。
「何を惚けている。いたのか?いなかったのか?」
もう俺に話しかけないでくれよ。自由にしてくれ。カーニャに訊けよ。あ、さてはコイツ、昨日カーニャにぶっ飛ばされて苦手意識持ってるな。一応答えておくか…
「俺は、怪しい奴発見出来なかった。」
お前以外の怪しい奴はな。
「ふぅ、使えない奴だ。」
「なんだと!ていうか、お前はムノさんとペア組んでの行動じゃなかったのかよ?」
「あいつは、今日、アパートの修理をしている。」
………
「あ、カーニャはどうだった?」
訊いてみる。
「ここでは、カナって呼んで☆」
ソレ、俺のトラウマ。
「カナも見つけきれなかった。皆ふつーな顔してるんだもん。」
そうだよなぁ…
「今日は手掛かりなしか…」
「そうでもないぞ。」
ジキルが言った。
っ!?
「…そうだな。」「え、なになに?」
カーニャは、まだわかっていない様だ。
俺達をずっと着けている黒い影がいる事を。
俺等は、そのまま無言で路地裏に入る。
…偶然にも木下と戦った路地裏だ。
俺達が、路地裏に入ったあとつけていた黒い影、ウチの学校の制服を着けた二人組も入ってきた。
パァアアン
入ってきたところを俺が愛用の銃で攻撃する。二人組は、ヒラリと躱す。
その避けている間に、ジキルが高速で入口に回り込み、逃げ口をふさぐ。
さすが特殊部隊だな。前の任務で戦った上級悪魔より速い。カーニャには負けたけど…
「あんた達、誰?」
カーニャが、二人組に訊く。その二人組は、学校では見慣れない奴だった。
「俺等が訊きたいっつーの。あんたら誰なんよ?」
二人組の一人、金髪でチャラチャラした男が喋った。
「質問を質問で返すのは感心しないな。」
ジキルがそう言い槍を具現化した。
あの槍、エレメントなのかな?二人組の一人、丸刈りの男は黙り込んでいる。金髪の男は、状況を確認し観念したように溜め息をついて喋った。
「わかーた、わかーた。話すよ。だからその槍しまってくんろ。怖くて話せないっつーの。」
ジキルは、金髪を睨んだ後、槍を消した。
「君も銃、しまってよー。」
俺は、銃を鞄に入れた。
「で、あんた達、何なのよ?」
カーニャが再び訊く。
「…ふぅ、俺達は正義の革命軍団“ルシフ”の下っ端だっちゃ。」
金髪の言葉、ウザいな。
「上に命令されて、君達を尾行してただーけ。だから君達の詳細とか知らないんだ。」
「“ルシフ”?」
カーニャが零す。
「そ、“ルシフ”。この腐った世界を変えようとしている組織なわけよ。わかーた?」
「お前達の上というのは誰なんだ?」
ジキルが訊いた。
「知らな〜い。指令も間接的に来るしー。」
間接的に?誰かを通してって事か?
「誰を通してるんだ?」
今度は、俺が訊いた。
「それ教えたら俺が殺されるっしょ。」
「言わなくても同じだ。」
ジキルが言う。それを聞いて金髪は笑う。
「あはっ!お前等、めちゃくちゃ悪の軍団じゃん。そんな奴等には何も教えられませんよー。」
バサッ
金髪は、翼を出した。それは、紛れもなく天使の羽。だが、
「…羽が黒い。」
「堕天使か…」
ジキルがそう呟くのが聞こえた。
「何してるの二人共!逃げるわよ!」
カーニャの言葉で羽に見とれていた俺達は我にかえった。
「逃がすかぁ!“銃化”。」
俺は右腕を“銃化”させる。
「逃がさん。」
ジキルは、再び槍を具現化する。
「遅いよん。“迅”のエレメント。」
シュン
金髪は、物凄いスピードで飛んで逃げた。
「待てー!」
「追うな!」
ジキルの制止の声で俺は止まる。
「聴取は、一人いれば十分だ。」
そう言いジキルは、具現化した槍を丸刈りの男に向けて構えている。丸刈りの男は、相変わらず無言だ。
「すぐに喋りたくしてやるさ…、行くぞ!!」
ジキルの槍の突撃。
丸刈りは、その攻撃に反応すらしてない様に見える。
グシャ
ジキルの槍は、丸刈りの腹に刺さる。だが違和感。
「な、何!」
ジキルが、声を発する。
ドン!
丸刈りは、槍が刺さったままジキルを殴った。ジキルは、吹き飛ぶ。丸刈りは、槍が刺さっても無言のままだ。
コイツ、何者だ!?
「エアシュート!」
俺は、銃化した左腕から空気砲を丸刈りに向かって撃ち込む。
ドォオン!
空気の弾は、丸刈りに当たった。だが、丸刈りに反応が無い。
丸刈りは、こっちを向き走ってきた。
「くそ、“刃化”。」
俺は、外していた右手首をはめて右方向に回して義手の機能“刃化”をする。
「うぉおおお!!」
向かってきた丸刈りに向けて振り上げる。丸刈りの左肩を切った。だが、丸刈りはソレを気にせず俺を蹴り飛ばした。
「ぐぅ!」
俺は、地面に転がる。すぐに立上がり丸刈りを見る。その時には、カーニャもすでに攻撃されていた。
コイツ強い。
「本気出すぞ。この野郎。」
天界唯一のエレメント食らわしてやるぜ。
「待て!」
今まで倒れていたジキルが言った。
「コイツは、俺がやる。」
「無理すんな。槍も無いだろ。」
そう、槍は丸刈りに刺さったままだ。
「槍がなんだって?」
ジキルは、また槍を具現した。
「槍は、一本だけじゃねぇぞ。」
そう言いジキルは、丸刈りに向かっていった。
「特殊部隊のナンバー4の力見せてやるよ。」
ジキルは、また丸刈りに槍を刺す。丸刈りは、二本目の槍が刺さっても相変わらず無反応のまま拳を振り上げる。が、
「十本槍!」
ジキルは、そう叫ぶと丸刈りの拳が届く前に三本目の槍を具現し振り上げた腕を刺す。そして、四本目の槍を槍を具現しまた刺す、そしてまた具現し刺す。それを十回繰り返す。合計十一本の槍が、丸刈りに刺さる。丸刈りは相変わらず無言だが、槍が見事に四肢に刺さり物理的に身動きができない状態だ。むしろ生きてる事が不思議だ。
本当になんなんだコイツ…
「くそ、やられた!人形だコイツ。」
ジキルが嘆いた。人形?
「どうりで反応が無いわけね。」
今まで丸刈りの攻撃で倒れていたカーニャが立上がり続いて言った。
「あの金髪が、コイツを置いて平気で逃げる訳だ。」
ジキルがそう言う。その間に十一本の槍が刺さってる丸刈りの様子を見てみる。槍が刺さって身動きが取れない状況じゃなかったら、まだ動きそうだ。
「こんなリアルな人形ってあるのか?」
二人に聞いてみた。
何故かカーニャは俯いて黙り込んだ。ジキルも渋々口を開く。
「そいつ、元は人間だ。テロリスト軍団には“操”のエレメントを使う奴が確認されている。多分、そいつの仕業だろうな。」
っ!?
「生きてる人間を操っているのかよ!?」
「ああ。」
そんな…。
「コイツ、どうにか助からないのか?」
「無理だ。今から“操”のエレメントが解けても槍のダメージによって即死だ。こんな時は…」
バサァア!
「これ以上、苦しまずに殺すのが優しさってもんだ。」
ジキルは、丸刈りを槍で真っ二つに切断した。ジキルの具現化した槍は、全て消えた。
「お、お前!」
「なんだ。綺麗事でも言うのか?」
「なんだと!」
「これだから、特殊部隊以外の奴と一緒に仕事するのは、嫌なんだよ。」
………
カーニャは、にらみ合ってる俺等に
「もう帰ろう」
と言った。