★Add二日目
レンタル二日目。
今は、ジキルと一緒に地上に降りて来ている。
「なあ、ジキル。まだ着かないのかよ。」
「…」
何か喋れよ!
俺達は今、先に地上に降りて来ている仲間と合流する予定で目的地へ向かっている。そこに特殊部隊の一人とあと一人レンタルされた奴がいるらしい。
「ジキルぅ。俺以外にレンタルされた奴って誰なんだよ?」
「…」
喋れよ!!
なんか俺が一人で喋って寂しがり屋さんみたいじゃねぇか!
「ジキルの母ちゃんデーベソ!」
「俺の母はデベソじゃない!」
そこには、反応するのかよ!マザコン?!
「そんなことより、地図によるとあそこらしい。」
「へぇー。」
あのマンションに仲間がいるのかぁ…。ん?なんかどっかで見たことあるマンションだぞ。はて?どこでだっけ…?
そんなこと考えてるうちにマンションの部屋のドアの前に辿り着いた。
「ここだな。」
ジキルが言った。また昨日みたいにドアを開けたら攻撃されるんじゃないんだろうな。
「ジキル、お前がドア開けろよ。」
ジキルは、素直に部屋のドアを開けた。
結果から言ったら、俺は攻撃をうけた。
「カ、カ、カーニャ!!!」
精神攻撃を。
「あれ?下僕一号じゃん。あと一人のレンタルされた奴ってあんただったの。」
そう、このマンションは、前の仕事の時にカーニャと一夜を過ごしたあのマンションだったのだ。
あー、最悪〜。しかも『下僕一号』って名前ついてるし…
「あんた今、最悪〜と思ったでしょ。」
「べ、別に思ってねぇよ。」
思ったよ。
ていうか、こいつのせいで俺はキサミから家を追い出されたんだぞ。ぶっ飛ばして〜。でも、こいつが『あのこと』をバラしたら俺、仕事なくなるし…
「あんた今、ぶっ飛ばして〜と思ったでしょ。」
「お、思ってねぇよ!」
心読めるのか!?
「あのー、そろそろ自己紹介とかしませんか。」
部屋の奥から体付きのいい男が現れた。
「俺は、ジキルだ。」
早っ!今から助け合っていく仲間だろ、ちゃんと自己紹介しろ!
「私は、カーニャ。所属は監視課です。呼びたかったら『石川カナ』って呼んでもいいですよ☆」
その自己紹介は、俺に対する精神攻撃か?
「僕は、ムノ。特殊部隊のナンバー5です。趣味はピアノ。特技は裁縫です。」
その体付きで、その自己紹介は、キモい!
「俺は、タロエル。悪魔対抗課っす。よろしく。」
みんなの自己紹介が終わった。
「早速ですが、これからの皆のやるべき事を話してもいいかな。」
ムノが言った。こいつオビィと同じくらい筋肉質だな…
「これから例のテロリストを捜索するにあたって、常に二人一組でペアを組んで行動してもらいます。」
「ちょっと待て、デブ。なんでお前が仕切ってるんだ?」
ジキルが、言った。
「デブじゃなぁあいし!それにこの面子じゃ僕がリーダーに適任だし。」
「なんだと!俺の方がナンバーが上だろ!」
「だから、デブじゃなぁあいぃし!!ナンバーが上でもジキル頭悪いじゃん。だから、アブク隊長から僕が仕切るようにって言われてるし。」
「馬鹿だと…」
俺の隣りの人キレてるし。特殊部隊ってそんなに仲良くないのか?…て、
「ジキル!槍は出すなって!こんな狭い部屋で暴れたら俺にも被害がぁ!!」
「そうよ。暴れないでよ。私の部屋よ!やるんだったら、外でやってよ。」
「そうそう、外で………て、ちがあぁう!!取りあえず暴れるな。」
「タロエル君、無駄ですよ。この馬鹿は、何言っても聞きませんよ。」
ジキルが、ムノに向かって突きの構えで何かをためている。
「食らえ、一撃必殺!チェストォオオ!!」
ドゴォン!
ジキルの踏み込みにより部屋の地面は破壊される。物凄いスピードで槍がムノに向かう。
て、冷静に見てる場合じゃない!
右の義手の三つの機能の一つ“銃化”。右腕の手首から上をパカッと外す。狙いを定めて。
「ホールドネットショット!」
手首から、弾が発射される。その弾は、真っ直ぐジキルに向かい、ジキルの1メートル手前で炸裂し、目標を捕獲する網となる。
「よしっ!」
網は見事にジキルを捕らえる。だが、
ブチッ
ぇええっ!!
網が弱いのか、ジキルの勢いが強いのか、網はすぐに切れた。
「うぉおおお!!」
ジキルは、気合いを入れてムノに突っ込む。だが、ムノは余裕のある顔だ。
「“視”のエレメント。」
ムノはそう呟くと、槍をヒラリと躱しジキルを掴まえた。
「残念でした。」
「まだまだぁ!」
ジキルは、半歩離れて体勢を立て直す。が、
「人の家、こわすなぁあああ!!」
カーニャだ。カーニャは、ジキルの綺麗なロン毛をつかんだ。
「うぉおおお!」
!!?
そのまま振り回した!!
どんな怪力だよ。てか、ジキルの髪の毛も丈夫だな。
ドッゴォオーン!
カーニャは、振り回したジキルを壁に叩き付けた。さすがのジキルも気絶してる。強っ!監視課が特殊部隊倒しちゃったよ…。特殊部隊の面子丸潰れだよ。
「あ〜、部屋こんなに壊しちゃって〜。」
とカーニャ。半分は、お前が壊したと言いたい。
「ふぅ…」
ほら見ろ。ムノもたじたじだぞ。
変な意味で気まずい雰囲気だよ。
「ムノさんのエレメントって“視”なんすね。」
この雰囲気の中、取りあえず訊く俺。
「あ、はい。便利なエレメントですよ。よく見えるんです。」
ん〜、失礼だけどパッとしないエレメントだなぁ…
「タロエル君、左利きでしょ、あと瞳は黒のカラーコンタクトをしてるけど、ホントは…灰色かな。えーと、服に隠し持ってるのは銃だね。」
「えっ?!」
な、なんでわかるの?!ストーカー?!残念ながら俺には、ソッチの趣味は無いぞ。
「これが、“視”のエレメントです。観察能力が、通常の何倍にもなるんです。」
「へー、便利ぃ☆」
とカーニャ。
「ちなみにカーニャさんのサイズは上から…」
ドゴッ
おいおい、かかと落としはどうかと思うぞ、カーニャ。
こうして、この部屋は俺とカーニャと気絶した二人という異様な雰囲気に包まれた。
お前、そんなに強いなら特殊部隊に入れよ。