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手紙の魔女  作者: 涼木
1章 王家の秘宝
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1話 王女からの手紙

「どうしたの、貴方」


 わたしはまじまじとぼろぼろの服を着た少年を見る。少年が口を開くと、酷くかすれた殆どが息のような声が聞こえた。


「俺のせーなんだ」


 少年がそう言いながら指さしたのは瓦礫の山。


「そう」


 少年のあの顔は、なにを意味していたのだろう。


 青い荒んだ暗い瞳と、赤くなった目の下と、荒れた肌と、汚れた顔と、切れた唇と、涙の跡は、なにを意味していたのだろうか。





 ◇◇◇






 ジリリリ ジリリリ


 メイは柔らかいベットの上で目を覚ます。


 メイの最近開発した事前に設定した人物にしか聞こえないようにした目覚まし時計の音。


 ――そうだ。レビーには聞こえないんだった。


 メイはレビーの寝ている部屋へ向かう。


 レビーの部屋は元々空き部屋で倉庫となっていたが、レビーをずっと床の上とかで寝かせるわけにもいかないので、レビーに掃除させた。今ではレビーの部屋になってしまったのである。


 その部屋の扉をメイは勢いよく殴った。


 メイの殴ったところは部屋の中に飛んでいき、扉には大きな穴ができていた。その爆音と、飛んでくる破片によってレビーは目を覚ます。


「どう?レビー。最高の目覚ましでしょう?」


 メイはレビーににこやかな顔を向けてそう言う。レビーは顔を少し赤らめ、おはよう、と言った。


 ――怒っているのかしら?


 レビーが顔を赤らめているのを怒っているとメイは勘違いする。実際はメイの笑顔にどきりとしたからだが。


「さぁ、レビー。朝になったわ。とっととご飯を食べて帰りなさい」


「………ういっす」


 レビーはメイにそう返事をした。メイはレビーを食卓に連れて行く。そしてレビーになにを作ろうか尋ねようとした時、ドアがノックされた。


「だれかしら…………どうぞ」


 メイがドアを開けると、少女が手紙を一通もち、向こうに立っていた。街の中学の制服を着て、艶々とした銀髪と、太陽の光を受け輝く碧眼をもつ。少々日焼けした健康的な肌。彼女はミア・チェリン。レビーと同学年、同校の学生である。


「おはようございます、メイ。おはよう、ルーディ」


 ミアは二人に挨拶し、中に入ってメイに手紙を渡す。ミアはメイが手紙を読んでいる間に、レビーの近くによって、話しかけた。


「今日も泊まっていったのね。レビー・ルーディ」


 ミアはレビーの顔を覗きこむ。その全てを見通すような瞳にレビーはのけぞってしまう。ミアはレビーのメイへの恋心を察しており、よく揶揄ってくる。


「……そうだよ、チェリン」


「そ」


 ミアは瞳をあさっての方に向けながら小さく答える。その瞳は少し、細められていた。


 メイが「マジで!!」と驚きの声を上げた。二人が振り返ると、メイはまた一言「王家から、依頼よ!」と。ミアとレビーは驚愕し、メイの手元を見た。そこには王家の紋章とともに依頼内容が示されている。


「王家が、手紙の魔女(わたし)に用なんて初めてよ……」


「続きを読んでください!」


 ミアは興奮気味にメイを催促した。


「えっと……


 拝啓

 手紙の魔女、メイ様。

(中略)

 わたくしはトリリアン王国、シャビア王家のリリアナと申します。

 今回こうしてお手紙を書かせていただいたのは、ある依頼のためなのです。

 ―――王家の、宝を探していただけませんか。




 ですって……」


「王家の、宝?」


 ミアは首を傾げる。


 メイは「おもしそうねっ!」とニヤニヤしながら言った。


 レビーはメイを呆れ半分で見つめた。


「いつトリリアン王国に向かうんですか?メイ様」


「そうね、いつなら都合が合いそうなの?レビー」


 尋ねられたレビーは端末を取り出し、予定を確認する。


「う〜ん。多分今からでも大丈夫です」


 二人の会話にミアが割り込んだ。


「私も連れてってください!メイ。ルーディだけずるいです!」


「メイ様、無理ですよね……?」


 レビーは嫌なことを思い出し、少々血の気の引いた顔でメイの顔を見た。


 レビーはミアとの旅行はまっぴらごめんと思っている。かつて修学旅行でミアと旅をしたときのことは――思い出したくもない。それにミアさえついてこなければメイとの二人旅である。


 ミアはその思いを察し、二人を応援するでもなく、

 ――ふっ、メイとの旅行には二人でいかせてたまるかってんだ。


 と思っていた。


 実際レビーの気持ちが叶うことはない。レビーも、それは承知している。


「わたしは構わんぞ」


 そのメイの言葉により、レビーは願いは叶わなかった。項垂れるレビーの肩に手を乗せ、ミアは「ドンマイ!」ととびっきりの笑顔で言うのだった。


 メイはくすくすと笑った後、手紙に視線を落とす。


「リリアナ、か」


 そう誰にも聞こえないような声で呟いた。

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