探偵ノートは300円
秋の日和も深まった頃、少年が規則正しいリズムで歩く。一センチほどの誤差の内で、その一歩一歩は確かなものだ。
別に何か武術的な習い事をしているわけではないが、この歩き方にはちょっとしたわけがある。正直、真実を話せば誰もが怪訝な表情をするであろう理由を元に、少年はこのリズム感で閑静な住宅街を歩いている。
ちなみに、少年の名は漣 蒼馬という。日本人には当然の黒い髪に黒の双眸、身長は170センチで体格は平均的と言える。ライトグリーンのティーシャツに黒いジャケットを合わせ、デニムパンツというラフな格好である。荷物は肩掛けカバンだけで、灰色を基調とした黒混じりの地味なものだ。
住宅街からそれほど離れていない、工学系の専門高等学校に通う一般的な十九歳で、高校生というよりも大学生に分類される。分かりやすい括りでいえば高専生といえるだろう。
余談はさておき、蒼馬はとある民家の前で立ち止まる。
周囲の家屋と相違のない、砂地色の壁に灰色の瓦屋根のある一般的な民家だ。蒼馬はそのまま、胸元ほどまである門を潜って玄関に向かう。
インターホンを鳴らした後は、家主が出てくるよりも早く相馬が玄関を開けた。もちろん、表札に『漣』の文字は刻まれていない。
「いらっしゃい、蒼馬君。態々ありがとうね」
蒼馬が玄関の踊り場に足を踏み込んだところで、直ぐ側のリビングから女性の声が聞こえる。
目鼻の整った二十歳後半に見える女性で、ブラウンに染めたロングヘアーが軽くなびく。身長は170過ぎと長身、スタイルも比較的に理想の女性像と言った感じだろう。まあ、良くも悪くも一般女性のそれである。ただし、服装がランニングに短パンという井出たちでなければ、もう少しまともに顔を合わせられただろうが。
「お邪魔します、茜さん。えっと、碧は二階ですか」
「心待ちにしてたわよ。コーヒーが良い? それとも紅茶?」
蒼馬が茜と呼んだ女性は、ダイニングキッチンに向かいながら聞いてくる。
「あ、いえ、お構いなく。学校のことだけ話したら、帰りますから」
あまり長居するつもりはなかったため、他人行儀に断っておいた。
風邪で休んだ学校の友人に、明日の学校の予定を伝えに来ただけなので、飲み物を用意されても残して帰ることになってしまう。のだが、茜は蒼馬を居座らせる気なのか聞く耳を持とうとしない。そもそも、どうして県警に勤めている茜が自宅でくつろいでいるのか。
「今日は休みなのか?」
蒼馬は呆れながら、溜息を残してリビングより奥の廊下に見える階段に向かい、螺旋状になった階段を上って二階へたどり着く。他の家にはない形状の階段だが、どうしてこんな形にしたのか理解に苦しむ。
友人の部屋は、二階に上がって直ぐの左側だった。幼い頃は、同じ住宅街ということもあり、良くお互いの部屋に招かれたものだ。しかし、いつ頃だろうか。こうして、何か用事でもなければ学校以外で顔を合わせなくなったのは。
「男女の関係なんて、そんなものだよな……」
それが寂しいわけではなく、それでも嬉しいと思えることでもない。相変わらず、仲が良いことは確かだが、お互いが互いをどう思っているのかを言い出すのが難しい年頃なのである。
「入るぞ」
「どうぞぉ」
ノックをして声を掛けたところで、直ぐに返事が返ってくる。
二十歳に近い女性には珍しい、ソプラノに近い弱々しい声の後、咳き込む音が響く。
「あまり無茶するな。ほら、明日の行事予定だ」
部屋に入ると、昔から変わらない趣味で作ったファンシーな小物が、机やらタンスやら本棚にところ狭しと並べられている。牛乳パックを切り貼りしたペン立てや、ビーズクッションまで床に置かれていた。
「相変わらず、手先が器用だな」
「ごほッ、ごほッ……ううん、外に出れないことの方が多いから」
病弱なために始めた手芸が、今では呆れるほどまで物品を増幅させた。
持ち上げたペン立てを本棚に戻し、カバンから取り出していたプリントを渡す。
「ありがとう。そうか、もう文化祭の時期なんだね。夏休みが終わってから、ほとんど行ってなかったから忘れてたよ」
プリントに書かれた文字の羅列を流し読みして、簡単に内容を認識する。
休みがちで、良くも進学できたな、と感心半ばに呆れる相馬。確かに、彼女――如月 碧は学校を休むことも多いが、頭は良い方で、大抵のことなら独学で身に着けることが可能だった。
ボブカットに切り揃えた茶色混じりの黒髪に、当然のように黒い瞳を携えた肌の白い少女で、分類的には可愛いと呼べるだろうか。
「それじゃあ、今日は帰る。明日から放課後に文化祭の準備をするからな、えっと……」
「ヘンゼルとグレーテル、だね。でも、どうしてこれに?」
詰まった言葉を補完した碧の問いに、応えられる返答は簡単だった。
「人数が六人しか居ない。ちなみに、碧は小道具とグレーテル役だからな。台詞、早く覚えろよ」
そう、クラスメイトのほとんどがクラブの出し物や個人の出し物、ライブなどへの参加で、蒼馬と碧を含めて六人しか揃わなかった。
「分かった。でも、もう帰っちゃうの?」
「あぁ。確か、四二一六歩か」
別れを告げながら、蒼馬がポツリと呟く。
「何が四二一六歩なの?」
呆れたことに、蒼馬が一定のリズムで歩いていた理由はそれを確かめるためだ。
正直、自分でもおかしな癖だとは思うが、思い立ったことを実際に確かめてしまう。それを、大学ノートに書き写すのも日常の光景となっていた。
「学校からこの家までの距離」
淡々と答え、『探偵ノート』と書かれたノートをカバンに仕舞う。
どうしてこんな癖がついたのか、それは今から十年ほど前に戻る。
差して深い理由があったわけではなく、かの有名な探偵小説『シャーロック・ホームズ』の漫画を読んだ時に、ホームズが助手のワトソンにある質問をしていた。
一階から、自分達の事務所がある二階までの階段が何段なのか、という質問だ。
そんな、僅かなことさえ知識として溜め込む探偵の生き方に感銘を受け、何故か十年以上も続けてしまった癖である。
「おい、ボサッとしてねぇでこれを運べ。あぁ、如月は衣装を体育館に持ってってくれ」
考え事をしていた蒼馬に、不良のような青年が大工道具を手渡す。
ここは、蒼馬や碧が通う工業高等専門学校の一室で、演劇に使う衣装が並べられた演劇部の部室だった。ただし、今は部員が居ないのか倉庫として使われている。
大工道具を受け取った蒼馬は、不満気に青年を睨みつける。蒼馬がもっと喧嘩さえ強ければ、不平を口に漏らしていただろう。
染色剤で金色に染めた短い髪に、吊り上った目つきの柄の悪い青年は、大鳥 勇人という。ジャージ姿で走り回る大鳥は、大よそ演劇などと言うものに似つかわしくない人物だ。が、手が空いているクラスメイトで、大道具が得意な人物が彼しか居らず、こうして強制的に文化祭の演劇の準備に借り出された。
ただ、こうしてクラスメイトに指示を出す仕切り屋的な性格は、まとまりの無い演劇グループには必要な人物でもある。
「ねぇ、どうして私が魔女役なの? 休んでいた碧がグレーテルなんて、納得いかないわ」
演劇部の部室で、衣装などの小道具をダンボールから取り出すロングヘアーの美女が、一人で不満を口にしていた。
「仕方ないだろ、くじ引きで決めたのはお前なんだから。そうだろ、柳川?」
大鳥に柳川と呼ばれた美女――柳川 瑞穂は、魔女役の衣装である黒いローブを振り回す。そんなに振り回したら、異常に丈の短いスカートやブランド物のカットソーが埃で汚れてしまう。
顔立ちで言えば碧の姉の茜以上でありながら、クラスでも一部に疎ましがられる高飛車な少女であるため、どうも蒼馬とは馬が合わない。寛容な性格の碧は、深く関わりこそしないものの名前で呼び合う程度の仲らしい。
まあ、時々、狡賢いところを見せる柳川は、公平を期してくじ引きで役決めをしたが、どうやらクラス委員長にのイカサマを見破られたためにこんな配役が決まってしまったらしい。自業自得だ。
そのクラス委員長は、セミロングの髪を黒い安物のヘアピンで留め、黒縁の眼鏡を掛けた文字通りの格好をしている。テンプレート的な格好であるため、杉田 三保という名前ではなく『インチョー』と言う仇名で呼ばれることが多い。
「インチョーの馬鹿ぁ……」
「ズルはいけませんよ、ズルは。子供じゃないんですから、決まったことをちゃんとやってください」
「僕とインチョーなんて、子供を捨てる親の役ですよ?」
どちらの味方をするわけでもなく、それでもフォローを入れるのは、小太りのクラスメイト。目を閉じているのではないか、と思ってしまいそうな細い目元に無雑作な髪を跳ねさせた小野田 カズヒロだ。体格は相撲取りだが、部活は柔道部をしている。
ファーストネームをカタカナで表記され、常に両親の怠慢に嘆いている。そのためか、非情な親という役に嫌悪を感じているらしい。
「でも、最後はちゃんと元の鞘に収まるじゃない。そもそも、ヘンゼルとグレーテル、って物語は、そういう農民の経済事情が厳しい時代を映した劇なわけでしょ? 仕方ないわよ」
インチョーこと杉田が、博識な知識を披露してくれる。
とりあえず、無駄と分かっていても蒼馬が彼らの言動を『探偵ノート』にメモして行く。
『ダンボール十二箱分の衣装』
『ダンボール大が一つ』
『ヘンゼルとグレーテルは――』
『杉田さんのヘアピンは二本』
『柳川さんは、綺麗なダイヤモンドの指輪を持ってきている』
等々、本当に無意味そうなことまで書かれた、一冊三百円の大学ノート。一冊のノートにしては値の張るものだが、良いものはそれだけに丈夫で保存が利く。工業系の学生なら、リムーバブルディスクなどの電子媒体を使えば良いと言われるが、パソコンがなくとも記述できる紙媒体とは意外に役立つのである。
「とりあえず、荷物を体育館に運んだら各自昼飯にするぞ。ほら、後もう少しだ」
周囲から上がる声を一蹴して、大鳥が各自に荷物を渡していった。
その後、大鳥はダンボールを綺麗に部屋の隅に積み上げる作業を行う。
演劇のメンバーは道具を体育館に運んだ。
「そもそも、インチョーが演劇なんて提案をしなければ、こんなことしなくて済んだんじゃない」
「私の所為ですか? 強引に賛成させたのは柳川さんでしょ?」
体育館へ続く一階の渡り廊下を歩きながら、柳川と杉田が口論を始める。
「ほら、喧嘩しても何も始まりませんよ」
それを碧が仲裁する。
「えっと、舞台の袖に置いとけば良いか? 他のクラスも、演劇とかをするみたいだけど」
「どれがどれなのか分かるようにしておけば、後は当日まで整理は必要ないでしょ。さぁ、早く昼ご飯にしましょッ」
衣装などを舞台の袖に置いた後、またもとの道を戻って演劇部の部室に戻る。
体育館から戻ってきたメンバーは、部室に大鳥が居ないことに気付いた。いや、無人の部屋を見れば気付くもなにもない。
「なによ、一人だけ先に昼ご飯?」
誰よりも先に抜け出した大鳥に対し、柳川が文句を垂れる。
「でも、後で衣装とかを仕舞うダンボールも、ちゃんと綺麗に積んであるじゃないですか」
ここで大鳥を擁護するのは、部屋の隅に置かれたダンボールの山を見据えた碧。
まあ、ちゃんと仕事をしてくれていることを考えれば、文句を言えるところではないだろう。仕方なく、各自もカバンを置きっぱなしにして部室を後にした。
普段は、あまり一緒にいることのない五人だが、今日ばかりは一緒に昼食を摂る。演劇部のある本校舎は、美術部の美術室や理科室などを内包した特別室棟と、通常の授業が行われる一般棟を『L』字にくっつけた形になっている。学食は『L』の接合部に当る部分の外側に、五十人ほどを収容できる食堂として建てられている。
演劇部の部室は三階建ての三階にある使われていない部屋を使っていて、直ぐ横に屋上へ続く階段があった。しかし、昔、転落事故があったとかで今は使われていない。のだが、誰かが勝手に合鍵を作ったという噂も聞かれる。
そんなことは優等生を気取る蒼馬達には関係ないことで、ちゃんと学食に行って昼食を食べた。
「あッ……悪い、財布をカバンに入れたまんまだ。少し貸してくれ」
問題は、蒼馬が財布を忘れてしまったことぐらいだろうか。まあ、取りに戻るのも面倒なため、その時は碧に五百円を借りて事なきを得た。
蒼馬は五百円で買った醤油ラーメンを、碧と柳川は日替わり定食、小野田は体格に吊りあった大盛りのカツ丼を選ぶ。
「ほんと、変なところでドジなんだよね、蒼馬君は。ねぇ、みず……あれ? 瑞穂ちゃん、指輪はどうしたの?」
昼食を長机の一角に運んでいるところで、碧があざとく瑞穂の指にダイヤモンドの指輪がないことに気付く。
「あれは、カバンに入れてあるわ。鍵はちゃんと閉めてきたから、問題はないでしょ?」
そう言って、柳川は部室の鍵を指に摘まんで振ってみせる。確か、母親のものを勝手に拝借してきたものらしく、無くすと大変なことになる。
「実は、あれ、イミテーションなのよ。でも、今の彼氏が買ってくれたものだから、結婚するまで本物は待ってくれって」
「そうなんだッ。でも、やっぱり大切なものなんでしょ? どうして、外して置いてきちゃったの?」
声を潜めているつもりだろうが、全て聞こえている柳川と碧の会話に蒼馬はさりげなく聞き耳を立てる。相変わらず、それもメモしてしまう。
「癖なのよ。大切な物を、いつまでも身に着けていないで、カバンとかに仕舞っちゃうのは……。昔、それで大切なものを無くしてしまったことがあったから」
「大切な物と言えば、私の誕生日に買ってもらった大切な筆箱を、壊してくれたわよね柳川さん」
「あ、あれは、小学校の話でしょッ? そんな昔のこと、今更持ち出さないでよ!」
揚げ足を取るように、杉田が柳川に食って掛かる。
柳川も時効だと反論するが、話を聞くに非は認めているらしい。流石に、小学生の頃の失敗を弁償させようなんて話にはならなかったものの、そこから過去の赤裸々な話へと変わってゆく。
「そう言えば、小野田に告白されたこともあったっけ?」
「な、なんでそれをッ? いや、柳川さんのことが好きだったのは確かだけど……一秒も経たずに断ったじゃないか」
なんとも、聞いていて恥ずかしくなる話か。
言われてみると、幼い頃に碧と結婚するとか、しないとかという話で喧嘩をしたこともあった。どうやら碧は忘れているようだが、今になって思い出しても顔が赤くなってしまう。
「へぇ、小野田君も無謀だねぇ」
ただ、一つだけ誓えることがある。
何があっても、自分が碧を守るのだ、ということ。
「からかわないで下さいよ、如月さん。でも、柳川さんだって、大鳥君と付き合っていたんでしょ?」
蒼馬の想いなどそっちのけで、話は恋愛の話へとヒートアップしてしまう。
正直、こういう空気は苦手だった。人並みに男性としての感情を持ち合わせながらも、気持ちを伝えることができないのは奥手と言うべきか。
「良いのよ、あんな奴。ところで、漣君は、誰か好きな人でも居るの?」
「――ッ」
ここで、無茶振りの波が蒼馬にやってきた。
分からない程度に、話を振ってきた柳川を恨めしげに睨みながら、思案するフリをしてみる。
「え、えぇっと……今のところ、いない、かな?」
「そう? 漣君って、私から見ても結構イケてるけど、女の子のほうが寄ってきそうよね」
「そんなことありませんよ。あぁ、たぶん、碧の子守なんてやってるから……」
「ひ、酷いよぉ~。別に、蒼馬君に見ててもらわなくても大丈夫だもん! この、分からず屋ッ!」
とか、何とか言いつつ、碧は拗ねたフリをして蒼馬のラーメンから焼豚を奪って行く。
「こ、こらッ。なにを堂々と盗みを働いているか……」
「怒らせた罰だもんね。女の子を泣かせた罪は重いんだからッ」
笑っていないけど、怒っていない。
たぶん、今はこんな関係でいいのだと思う。わざとらしく争いながら、蒼馬は心のなかでそう考えた。
「まさか、大鳥君が瑞穂ちゃんの彼氏だったなんてねぇ?」
「好きだな、そういうの。あまり嗅ぎ回ってると、痛い目を見るぞ」
碧の、女子らしい噂好きの一面を眺めながら、蒼馬は呆れて揶揄する。
大鳥の性格と、柳川の性格を考えれば、別れても納得が行く性格の相違だろう。
どうも、今回、演劇グループとして集まったメンバーは何かしらの確執があることが見て取れる。
こんないがみ合いの多いメンバーで、本当に演劇を成功させられるのか不安だった。どうせ、学校の文化祭での出し物では、それほど力を入れてやろうとは思わないが。それでも、一時半ぐらいから演劇の練習をすることになった。
そんなこんなで、昼から一時過ぎの一時間ほどを、蒼馬と碧は友人の露店の準備を手伝ったりして時間を潰た後の帰り。
そして、事件は演劇部の部室に戻ったときに起こる。
「ないッ。どこにも、ないッ!」
柳川が、ヒステリックに荷物をかき回して叫んでいた。柳川の教科書やノートが散らかっていることを除けば、部屋を出た時とは替わらない光景がある。部屋の隅で綺麗に整列する、三段五列のダンボールと一個の大きなダンボール。各々の荷物があり、演劇に使わない衣装が折りたたんで積み上げられている。
何事かと、入り口のところに佇んでいた小野田と杉田に事情を聞いたところ、
「指輪がなくなったみたいなんだよ」
「台本を取りに、柳川さんを探して部屋に戻ってきたら、カバンの中に仕舞ったはずの指輪がないって、騒ぎ出したのよ」
と二人が答える。
盗難か、とも思ったが、蒼馬がカバンに忘れていた財布は一銭も変わることなく残っている。ならば、何らかの私怨で柳川の指輪を盗んだとしか考えられない。
「ところで、大鳥はどうした? まだ戻ってきてないみたいだが」
「そうよッ、あいつが盗んだんだわッ! 振った腹いせに、私と彼氏の大切なものを盗んだのよ!」
ただ大鳥の帰りが遅いということを言ったつもりなのだが、柳川が食いついてヒステリックな声を上げる。
とりあえず、どちらにせよ大鳥にも事情を説明せねばならないだろう。
「皆で手分けをして探そう。どこか、大鳥の行きそうな場所をしらないか? 後、各自の休み中の行動を聞かせて欲しい」
「何、アリバイとかなんとかっていうのを聞きたいの? なんだか、探偵小説みたいね」
ここは大学に近い校風をもっているため、盗難や器物破損といったことに関して、警察を呼ぶこともある。そのため、大事にならないよう生徒同士で可決する道を選んだのだが。読書好きの性格の所為か、蒼馬の意見を杉田が揶揄してくる。
「あぁ、もちろん、やましいことがあって言ってるわけじゃないのよ。誰しも、疑われるのは気持ち良くないからね」
「今は、大鳥君を探そうよ」
「……そうね。一番疑わしいのは、ここに居ない大鳥だもの」
誰もが、大鳥に疑いの目を向けながらも、学校中の探索に出る。
ただ、校内で文化祭の準備をしている他の学生に聞いても、何処を探し回っても大鳥の姿は見つけられなかった。
「居ませんね。どこに行ってしまったんでしょうか?」
校内をくまなく探した五人が、疲弊の色を濃くして演劇部の部室に戻ってくる。
「どうでした?」
「いえ、特別室棟には居なかったわ」
蒼馬の問いに、杉田が答える。
「体育館にも居なかったわよ」
「校庭にも居ないみたいだね。漣君と如月さんも……一般棟には居なかったみたいだね」
柳川と小野田も、口々に答えた。
これほど苦労しながら探したというのに、その尋ね人は意外な場所から姿を現す。部室に入ったところで、何故か何事もなかったかのように部屋を見回している大鳥。
「お、大鳥君、どこに居たのッ?」
一番最初に入った杉田が、怪訝そうに振り返った大鳥に尋ねる。
「どこ、って……そんなこと、どうでも良いだろ? 俺のプライベートに、お前らが口出しする権利があるのか? そもそも、鍵も閉めずに出て行くなんて、馬鹿じゃねぇか?」
杉田の質問に対して、大鳥はつけんどんな答えを返してくる。
もちろん、こんな状況でなければ他人のプライベートに干渉するつもりはない。しかし、事情を話すにつれて大鳥も納得してくれたようだ。
「――っと言うわけで、探してたんだけど。あ、もちろん、大鳥君が犯人だ、って決め付けてるわけじゃなくて」
「……分かったよ。だが、俺はこの部屋には居なかった。屋上で、昼飯を食った後につい居眠りしちまったからな」
どうやら、屋上の合鍵を作ったという噂の人物は、大鳥だったらしい。
「仕方ありませんね。一応、皆さんのアリバイを聞かせて貰って構いませんか? それと、申し訳ありませんが、荷物の確認も」
このままでは埒が明かず、蒼馬の提案に皆は渋々と答えて行く。
言うまでもなく、各自の荷物の中に指輪は見つからなかった。盗んだものをいつまでも身に着けていることほど、愚かなことはない。付け加えると、部室の中を探し回っても指は出てこなかった。
そんなわけで、一番、演劇メンバーの中で確執のない蒼馬が皆のアリバイを確認することになった。
まず、部室に戻ってきたのが一番早かった杉田から。
「私は、休みの間は図書室で本を読んでいたわ。司書さんも出払っていたから、誰も証明できる人は居ないけどね。あぁ、でも、本を借りて図書室を出る時には司書さんも帰ってきてたから、本を借りたデータが残ってるはずよ」
この学校の図書はバーコードで物品を管理しているために、本を借りた時は貸し出し日時と書籍名がコンピュータのデータベースに記録される。もちろん、登録せずに図書室から持ち出そうとすると、書店にある金属探知機のような機械が喚き出すので無断借用はできない。
「休みが終わってから部屋に戻ってきたけど、柳川さんがまだだったから、少し探して五分ぐらいで戻ってきたかしら」
杉田のアリバイはそれなりにあり、犯行に及べる時間は昼食を終えてから図書室で本を借りるまでの間か、その後に柳川を探しに行く数分の間だろう。
ただ、蒼馬はおかしなことに気付く。
「ヘアピンが、一本足りないみたいですけど?」
「えッ……あぁ、ちょっと付け直そうと思ったときに、どこかへ落としてしまったのよ。安物だから、気にしないで」
なぜヘアピンが気になったのかは、蒼馬にも良く分からない。けれど、あった物がなくなっているというのは違和感を覚えてあたりまえだろう。もちろん、なかったものが出現しても頭を抱えるが。
続いて、小野田に話を聞く。
「僕は、柔道部の出し物の手伝いに行っていたよ。聞いてもらえれば分かるけど、一時間は柔道部の部室にいたよ。戻ってきたのは、杉田さんと柳川さんが騒いでいる時だったかな」
これについても、柔道部に確認を取ったところでアリバイが証明された。
次は、アリバイが証明できない大鳥だ。
「見ての通り、俺はこの鍵で屋上に出て、飯を食べた後は昼寝をしていたよ。だが、これだけは言っておくッ。俺はやっていない。部室の鍵は柳川が持っていたらしいじゃねぇか。それなら、柳川以外に部屋を開けることはできなかった、そうだろ?」
大鳥の言い分も確かだ。
柳川が鍵を持っていて、被害者が彼女ならば、完璧でないにしろ密室が完成している。
「ここに屋上の鍵はあるが、行ったところで俺がそこで寝ていたっていう証明はできない。もちろん、他の場所の鍵じゃこの部屋の鍵は開けられない」
アリバイはなくも、ほぼ密室と呼べる部室から指輪を盗み出すことはできないと主張する。挙句の果てには、鍵を持っていた柳川自身が無くしたか、自分で隠して騒ぎ立てているだけなのではないか、と言い始める。
「誰かに恨みがあって、人に罪を擦り付けているだけじゃねぇのか? 付き合ってる最中も、あいつが何を考えていたのかまったく分からなかったからなッ」
そもそも、イミテーションだと大鳥が知ったのは事情を説明した僅か数分ほどまえのことだ。もし金目当てに盗んだとしても、それを知ったのならば冗談を含んで出してくれるだろう。
アリバイを聞いても、根本的な解決にはなりそうになかった。
今のところ分かったことは、杉田と大鳥、柳川の三人にしか犯行可能ではなかったということだ。
もちろん、蒼馬と碧は、準備を手伝った友人達によって不在証明を得られた。一様にアリバイを聞いた後、各自は頭を冷すという名目で飲み物等を買いにいってしまう。
残った蒼馬と碧は、部室の探索をするために残る。
「うぅ~ん、誰が盗んだんだろうね? やっぱり、柳川さんが誰かを……こんな言い方は嫌だけど、嵌めるために隠したのかな?」
「それは考えられない。嵌めるにしたって、ここに居る五人全員を、嵌めるつもりなのか? もし大鳥だけを嵌めるつもりにしても、曖昧さの所為で無差別な感じさえする」
碧の意見を否定しながら、蒼馬はもう一度、部室を見回してみる。
収穫と言えば、部室の前に落ちていた杉田のヘアピンを見つけたことぐらいだ。一度はピッキングを疑ったものの、杉田にそんな技術があるとは思えなかった。
そうなると消去法で大鳥が犯人となるが、ほぼ密室であったことを考えれば断定することができない。それに、大鳥がイミテーションの指輪を盗んだままにする動機がないのだ。
「ねぇ、例の『探偵ノート』を見せて。細かいことまで書かれてるアレなら、もしかしたら何か分かるかも知れない」
そう言う碧に、『探偵ノート』を手渡す。
「…………」
今日の日付のページを無言で読み流す碧。
フッと顔を上げると、部屋の隅に置かれていた演劇道具のダンボールに近づく。
積み上げられた他のダンボールとは別に置かれた、大きめのダンボールだ。その中に、何を思ったのか碧が入り込んでしまう。
「箱入り娘?」
訳の分からないことを考える蒼馬。
「ねぇ、この中に隠れれば、鍵を閉めた後でも指輪を盗めるよね? 大鳥君を探しに行った時、部屋の鍵は閉めていなかったから、その時に抜け出すこともできるよ」
確かに、大き目の箱は碧の体を上手い具合に飲み込んでいる。
しかし、蒼馬はすぐさまそれを否定した。
「無理だ。なにせ、まだ頭まで入りきっていないからな。もう少し顔を入れてみてくれ」
「む、むぐ……い、痛いよぉ」
演劇のメンバーの中でも、一番小柄な碧でさえ、ダンボールの蓋を閉めれば箱が膨らみを見せる。もし長身の大鳥が入ったのならば、蓋さえ閉めることができなくなる。
ならば、やはり柳川が誰かを嵌めるために自作自演しているというのか。考えれば考えるほど、蒼馬の思考回路が混乱を来たす。勉強はできても、探偵には向かない性格なのだろう。
「ぷはッ。もぉ、痛いじゃないッ! もっと大きなダンボールがあれば良いのに……あれ?」
今度は何を思い立ったのか、文句を言っていた碧が顎を親指と人差し指で挟み込むように思案し始める。
思案すること一分。目を見開いた碧が、声を張り上げる。
「分かった! 分かったよッ。なければ作るッ!」
正直、碧が何を言っているのか分からない。
無いなら作れば良い、なんていうのは何処の中世ヨーロッパを駄目にした女王の言い分だ。いや、あれはパンがなければお菓子を食べれば、という話だ。
碧は蒼馬の思案など気にすることなく、部室を駆け出してゆく。
「あ、皆を体育館に呼んでおいて。携帯電話で呼んだら、ここに戻ってきて欲しいの」
それだけを言い残して、碧は姿を消した。
蒼馬が皆を体育館に集めた後、数分ほどしてから碧の携帯電話から電話がかかって来る。
『もう来ても大丈夫だよ』
短い文章だけが羅列されたメールリストを見て、蒼馬は皆を引き連れて部室へ戻る。
「ねぇ、いったい何をしようって言うのよ? こんなことしてる暇があるなら、私の指輪を探しなさいよ」
まだ柳川のヒステリーは治まっていないらしく、ブツブツと文句を言ってくる。
他のメンバーも辟易していて、口こそ開かないものの蒼馬の行動に疑問を抱いているようだ。ただ、蒼馬自身も、碧の指示に従っているだけで彼女が何をしようとしているのか理解し難かった。
「碧が、誰がどうやって指輪を盗んだのか、わかったみたいなんですよ。詳しくは、碧に聞いてください」
「…………」
そう説明して、ようやく柳川が黙り込む。
黙々と歩く五人の間には、重苦しい空気が漂っていた。
正直、犯人を見つけたところで皆が気持ち良く終われるわけではない。警察を呼ぶことなく自分達で解決できれば、それはそれで自分達の名誉に傷をつけなくて済む。
「おい、戻ったぞ」
嫌な空気に包まれながらも、妙に長く感じる道のりを歩いて部室にたどり着いた。
しかし、部室には碧の姿など何処にもない。
『…………』
流石にこれには、誰もが呆れて言葉がでない。
自分から呼びつけておいて、待ち合わせの場所に居ないことほど人間を苛立たせることはなかろう。それとも、準備の方が間に合わなかったのか。
「碧? ちょっと待ってください、今から電話を掛けてみますから」
碧の居場所を確かめるために、蒼馬は携帯電話を取り出してアドレス帳から『如月 碧』の名前を探す。何度も掛けたことのあるアドレスは直ぐに見つかり、ツータッチで呼び出し音が鳴り始めた。
そして、電話のコールは部室のどこからか聞こえてくる。
「……置き忘れたのか?」
「何処から聞こえてくるんでしょう? あの辺り……ダンボールの中から聞こえません?」
蒼馬の疑問に、杉田が言葉を重ねる。
確かに、聞きなれた『大きな古時計』のメロディはダンボールの中から聞こえている。
「そ、そんな、馬鹿な……」
何がおかしいのか、大鳥が戸惑いを顔に浮かべた。
それを聞いた後、電話の着信音が途切れ、ダンボールが独りでに動き始めるのだ。三段五列あったダンボールの一段が横に倒れ、そこから碧が姿を現す。
「なんで、それがここにあるッ? 処分したはずだ!」
大鳥がこれまでに見せたことがないほど狼狽して、碧とダンボールの塊を交互に見渡す。
「これが、今回の事件のトリックです。そうですよね、大鳥君?」
「…………」
碧の言葉に、大鳥は二の句が告げなくなっていた。
他のメンバーも、何が起こっているのかさっぱり理解できない。ただ、人が納まるはずのないダンボールの中から、碧が出てきたことだけは事実だ。
「処分も何も、こんなものならダンボールさえあれば直ぐに作れますよ。でも、蒼馬君がメモを取っておいてくれなかったら、気付かなかったトリックだと思いますけど」
「ちょっと、もったいぶってないで、何がどうなっているのか教えなさいよッ。大鳥も、黙ってないで何か言ったらどうなの?」
冗長に話をする碧に、柳川が喰いかかる。大鳥の襟首を掴んで問いただすも、彼は沈黙を決め込んでいる。
「ごめんね、瑞穂ちゃん。この中を見てもらえれば、説明するより早いと思う」
そう言って、碧がダンボールの塊を瑞穂に手渡す。
それを、大鳥と碧を除く皆が覗き込み、唖然と目を丸くする。
正直、分かってしまえば馬鹿馬鹿しくて笑いさえ込み上げてくる。いや、呆れて言葉さえでないのが実状だ。
「分かりましたか。ダンボールの底を切り取って、後はガムテープで止めただけのものです。一つだけでは入りきらない道具も、二つ、三つと積み重ねれば仕舞えるんですよ。手芸をしていれば、普通にやっていることなんですけど」
碧が淡々と説明する。
けれど、単純ゆえに盲目的となってしまうトリック。ダンボールが積み上げられている場所に、一段分のダンボールが増えたところで誰が気に止めるだろうか。例え増えていることに気付いても、その中を確かめようとする人間も居ない。
「増えたり減ったりしたことに気付かなかった私達も、節穴と言えば節穴なんでしょうけど、ね」
碧が苦笑を浮かべた。
「もう、これで説明する必要はありませんよね、大鳥君? 指輪を何処に隠したのか、教えて貰えますか?」
笑っていた顔が急に引き締まり、可愛らしささえあった表情はどこかに消えてしまう。
「……屋上だよ。調べられても見つからないように、雨樋の中に隠してある」
気圧されたのか、言い逃れできないと感じたのか、あっさりと犯行を自白する大鳥。
万事解決、と言いたいところだが、蒼馬には一つの疑問が残っている。
蒼馬と大鳥を残して
「どうして、盗んだりしたんですか? イミテーションだと分かった時点で、冗談だとでも言って返せばこんな問題にならなかったのに……」
「仕返しだよ」
蒼馬の問いに、大鳥がポツリと答える。
「偽物でも、本物でも良かったんだ。俺を振った仕返しに、盗んでやろうと思ってた」
動機は単純にも、色恋沙汰だと言うのだ。
ただ、蒼馬はもっと深い理由があるのではないかと薄々ながら思っていた。
「あいつは、瑞穂はあぁいう奴だって分かってたのによ。付き合ってしばらくしたらゴミでも捨てるみたいにポイッだ。杉田の筆箱だって、しばらく借りていたと思えば飽きて放り投げるし、小野田の気持ちを弄んでおいて切り捨てる。瑞穂は、そうして色んな大切な物を失くしちまってさぁ、馬鹿だよな……」
やはり、幼い頃からの付き合いである四人は、危うい関係のなかで繋がっている。
それを教えるために、自分が憎まれ役を買ってでも伝えようとしたのだろう。どんなに口で言っても伝わらないのだから、大鳥が強行手段に出た理由も納得がいく。
「なんだ、まだそんなこと気にしてたんだ。大鳥君も、本当に義理堅いよねぇ」
いつの間に戻ってきていたのか、杉田が部室の中に入ってくる。
「大切にしてただろ。俺が買ってやった筆箱だからって、妙に浮かれてさ」
「まぁ、その辺は私も悪かったんだろうけどね。いつも柳川さんに冗談めかして言ってるけど、もう気にしちゃいないのに……ほら、この通りちゃんと返ってきたし」
そう言って、杉田がカバンの中から小学生が使っているような長方形の筆箱を取り出す。蒼馬達も小学校の頃に見たことのある、漫画のキャラクターが描かれた筆箱だ。ただ、原型は留めておらず、ガムテープなどで継ぎ接ぎだらけになったそれ。
「なんだ、まだ持ってたのか?」
「ばぁーか。大切な物なんだから、いつまででも持ってるよ。柳川さんが、反省して自分から直してくれた筆箱だしね」
杉田が悲しそうに、それでも嬉しそうに、笑顔を浮かべてみせる。
そこへ、また、いつから聞き耳を立てていたのか小野田が入ってきた。
「僕だって、振られたって言っても、将来、オリンピックに出られるようになったら付き合って上げるって言われたんだよ。けど、僕はそこまで行ける人間じゃないから、自分から辞退したみたいなものなんだよ」
その小野田の台詞で、しかめっ面だった大鳥の表情が自嘲の笑みに変わる。
これは、少しずつの気持ちの擦れ違いで起こった事件。たぶん、憎むとも悪意とも違う、お互いがお互いを思いやるが故に空回りしてしまったのだろう。
こうして、再び自分達の気持ちを再認識した彼らの事件は、幕を下ろしたのであった。
大鳥の言ったとおり、指輪は屋上の雨樋の中に隠されていた。もちろん、無事に指輪が返ってきたことで、盗んだことへのお咎めはなかった。
果たして、今回の事件で彼らの間にあった溝は狭まったのだろうか。
その答えは、彼らにしか分からないこと。
三者三様の笑いを漏らす中、碧が部室に戻ってくる。部屋の様子を見て怪訝な表情をする碧が聞いてくる。
「なんで、皆笑ってるの?」
さて、なんと答えれば良いだろう。どんなに事細かに説明したところで、碧を納得させることができないような気がする。
しかし、一つだけいえることがあった。
「お前は俺が守ってやる」
三人の笑い声に掻き消されてしまう蒼馬の台詞。
「え? なんて言ったの? もう一回ッ」
「嫌だね。同じことを何回も言わさないでくれ」
聞こえなかった言葉をせがむ碧から、蒼馬は走って逃げた。
今は顔を見られたくないから。
なんとなく思いついて、二、三日で書き上げてしまった短編の推理小説です。
複雑なトリックなどは使っていませんので、もし良ければ回答まで見ずに考えてみてください。
初めての推理小説ということで、どこかに矛盾や稚拙なミスなどございますでしょうが、こっそりと教えていただけると助かります。
もし意外に高い評価があれば、二人を中心とした長編の推理小説でも書いてみようと思っている今日この頃。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。