灰の屋根と、最初の火
不定期だからね。
「……まずは、火だな」
生き延びるには、すぐに動き出さねば。
転生した理由もはっきりしないが、それだけは無意識にでも理解できる。
まだ日は高いが、そのうち夜が来る。
この廃屋に、何が潜んでいるかも分からないまま闇に飲まれるのは、さすがに御免だ。
俺は床に散らばる瓦礫を見渡し、意識を集中させた。
【素材:朽ちた木材】
【素材:乾いた布切れ】
【素材:錆びた鉄片】
——組み合わせは、頭の中に自然と浮かんでくる。
まるで昔から知っていた手順を、思い出していくみたいに。
「……クラフト」
次の瞬間、手元で淡い光が瞬いた。
木材は細く削られ、布は芯の形に丸められる。
錆びた鉄片は、火打ち金のような形へと変わっていた。
だが——
「っ、失敗……?」
火は、点かなかった。
代わりに残ったのは、不格好な火起こし道具と、じんわりとした疲労感だけだ。
——万能じゃない、か。
俺は短く息を吐き、もう一度手を伸ばした。
「素材が悪いなら……作り直せばいい」
クラフト、とつぶやきより良い方法を探っていく。
布を裂いて繊維をほぐし、木材をさらに乾いた部分だけ選ぶ。
鉄片も、錆の少ない箇所を削り出した。
【クラフト可能:たき火】
表示を確認して、頷く。
「……クラフト」
カチッ。
火花が散り、布切れが燻った。
生じた火が、乾いた木材へと移り炎へと変じる。
数秒後、体を温める光が、確かにそこに生まれていた。
思わず、笑いが漏れる。
「……生きられるな、これなら」
ほっ、と息をついたその時だった。
わずかな安堵を切り裂くように。
廃屋の外、闇の向こうから——
金属が地面を引きずるような、低い音が聞こえたのは。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
評価やブックマークをいただけると、「よし、続きを書こう!」と作者のやる気が跳ね上がります。
応援していただけたら幸いです。




