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誰のための戦い

~特別攻撃隊の紹介~


【レオンハルト】

辺境の小国、オルドヴィア王国の王子。魔王を討つため、特別攻撃隊を編成した。度が過ぎるほどの生真面目。


【グン】

レオンハルトに育てられたフェンリル(神獣の銀狼)の双子の兄。冷静沈着で自信家。


【カミロ】

騎士。故郷の村を魔族に蹂躙された過去を持つ。陽気で荒っぽい。


【ブリュー】

カミロに育てられたフェンリルの双子の弟。好奇心旺盛で無鉄砲。


【ルカ】

魔法使い。奴隷のように働かされていた採掘場から連れてこられた。温和で仲間思い。


挿絵(By みてみん)


スピードに乗った二頭の神獣にとって、広大な谷など障害にもならない。強靭な脚力による跳躍は重力を無視し、彼らは一条の銀光となって夜の森を疾走していた。

「待て……通り過ぎている……」

レオンハルトの囁き声の号令。グンとブリューが騒音にならぬよう減速しながら大きく円を描いてUターンした。

一同は周囲を警戒し、息を殺して辺りを探る。しかし、そこにはアジトらしき建造物も、地下への入り口も見当たらない。ただ静まり返った森が広がっているだけだ。

グンとブリューが鼻面を低く下げ、地面に残った魔族の微かな残り香を辿り始めた。やがて二人は、苔むした巨大な岩石の前でピタリと足を止める。

ルカがその岩肌にそっと手を翳すと、見つかった。

確信を得て頷くルカに、レオンハルトも沈黙の頷きで応える。

水の中に手を突っ込んだかのように、ルカの前腕がするりと岩肌の中へ滑り込んだ。彼は肩を押し付け、目一杯腕を伸ばして内部を探る。指先に触れたバルブのような突起を力任せに捻った瞬間、網膜を焼くほどの強烈な閃光が弾けた。

一同は瞬時に臨戦態勢を取る。ルカを中心に、グンとブリューが牙を剥いて円を描く。だが、樹冠を揺らす風が吹き抜けるだけ、何も起きる気配はない。

「トラップじゃない……隠匿看破の補助魔法を受けたんだ。二人とも、片目を瞑ってみて」

レオンハルトとカミロが指示通りに片目を閉じると、視界に地下遺跡のような広間の映像が重なった。ルカの背後にある岩石の場所には、古めかしい女神像が立っている。

岩石の上に登り、女神像が掲げた黄金の受け皿を確かめると、その縁には等間隔のボルトと、月光を浴びて妖しく輝く紫色の粉末が残されていた。高い場所から見渡して分かった。周囲一帯の広範囲に、この粉末が飛散している。

「……ここに転移装置があったんだ。でも、破壊されている。転移完了後に自爆する設計だったのかもしれない」

「……魔王城をリバースさせる手段は、もう断たれたということか」

カミロの確認に、ルカは唇を噛み締め、悔しそうに頷いた。

レオンハルトは東の空、王都の上に鎮座する魔王城を冷徹に睨みつける。

(魔王軍は準備を怠っていなかった。リバースが可能なら駐屯兵がいるはず。それがいないということは……)

彼は即座に判断を下した。

「作戦変更だ。オルドヴィアへ帰国する。戦争の真の原因について、フェンリルの女王なら何か知っているかもしれない」

「そうだな。原因が分からなきゃ和睦に向けて動くことは不可能だ」

「僕たちは、この戦争について何も知らなすぎる……」

カミロとルカが賛同し、出発のために手綱を握り直したその時だった。

グンとブリューが、拒絶するようにその場に伏せた。

「もっと詳しく探せと言っているのか? 装置はもう使い物にならんぞ」

跨ったままのレオンハルトが耳元で囁くが、二人は頑として動こうとしない。

ルカが二人を諭そうと、グンの片方の瞼に手を当てて言った。

「こうすれば隠匿魔法が見えるんだ。でも、本当に壊れているんだよ」

続けてブリューの瞼にも触れる。しかし、二対の黄金の瞳はじっとルカの瞳を見つめ返すだけだ。やがてグンがルカの手を優しく甘噛みし、そのままブリューの額へと導いた。

「なになに? どうしたの?」

困惑するルカに、カミロがふと思いついて口を開く。

「……記憶を見ろと言っているんじゃないか?」

ブリューが短く吠えて肯定した。

「分かった。見てみよう」

ルカとブリューが同時に目を閉じる。ルカの脳裏に流れ込んできた映像は……逆光を浴びて輝くカミロの顔……優しい笑顔……その目元にクローズアップする。頭を撫でられたのか、映像が左右に揺れた。『いいかブリュー。お前があの子たちの未来を守るんだ。それがお前の仕事だ』

目を開けると、ルカは言葉を失って天を仰いだ。そして、深く、長い溜息。

「二人とも、グンとブリューを授かった翌日に辿り着いた、あの村を覚えてる?」

「懐かしいな。まだ小さな赤子だったな」

「ミルクがなくて、一晩中かけて下山したっけ……」

当時を思い出した二人に笑みが零れる。

「あの村を出る時、男の子が駆け寄ってきて、縄の玩具をくれたよね」

「あったな、そんなこと」

「ブリューはその時の記憶を僕に見せてきたんだ。カミロ、あの時、自分がなんて言ったか覚えてる?」

カミロは首を傾げ、記憶を探る。そして、その真意に気づいた瞬間、カッと目を見開いた。

「グンとブリューは、人間の子どもたちの未来を守るために……!」

ルカが声を震わせてカミロの言葉を引き継ぐ。

「王都で魔王軍と戦おうと言っているんだ……! 二人は、名前も知らない、自分たちの存在すら知らない人間たちのために……死ぬ気なんだよっ!」

レオンハルトが二対の黄金の瞳と見つめ合う。その瞳は確かにはっきりと『僕たちが子どもたちの未来を守る』と力強く語っていた。

それで彼は腹を括った。

「行こう、王都へ!ただし今回のミッションはあくまでも一人でも多くの人間を救うこと。深い入りは禁物だ。私が退却を命じた時はすみやかに退却せよ」


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