審判の時
~特別攻撃隊の紹介~
【レオンハルト】
辺境の小国、オルドヴィア王国の王子。魔王を討つため、特別攻撃隊を編成した。度が過ぎるほどの生真面目。
【グン】
レオンハルトに育てられたフェンリル(神獣の銀狼)の双子の兄。冷静沈着で自信家。
【カミロ】
騎士。故郷の村を魔族に蹂躙された過去を持つ。陽気で荒っぽい。
【ブリュー】
カミロに育てられたフェンリルの双子の弟。好奇心旺盛で無鉄砲。
【ルカ】
魔法使い。奴隷のように働かされていた採掘場から連れてこられた。温和で仲間思い。
王都は、瞬く間に阿鼻叫喚の地獄へと変貌していた。
空を埋め尽くすワイバーンの大群が、次々と王都の高層建築を薙ぎ倒し、その隙間を縫うように飛行するガーゴイルの群れが逃げ惑う人々を急襲する。
獰猛な爪に捕らえられた人間は、空中で生きたまま頭部を食いちぎられ、腸を引きずり出される。ガーゴイルたちは、もっとも「美味な部位」だけを貪ると、用済みと言わんばかりに残骸を地上へ投げ棄てた。
上空からゆっくりと下降してくる魔王城。それは王都のシンボル、セレスティア城に無慈悲に衝突し、その上半分を凄まじい轟音と共に削ぎ落とした。
崩落する石壁と砂塵。ドーム型の魔法バリアによって埋没を免れた城の三階――連合軍の司令本部が、剥き出しになった。
近衛兵たちが、豪奢な装いに身を包んだ理事国の首脳たちを守るように覆い被さっている。
「首脳の皆様ッ!直ちに避難をッ!」
脱出しようと扉を開けた近衛兵が一瞬で亡き骸となって床に転がる。代わりに入ってきたのは、山羊のように禍々しく曲がった角を生やした悪魔だった。
「チェックメイト」
山羊角の悪魔は刀身に付着した血を振り払って、不敵な笑みを浮かべる。
相手は一人。そう判断した近衛兵たちが一斉に斬り掛かった。山羊角の悪魔は剣を横に掲げて踊るように回転しながらしゃがみ込み、上段からの斬撃を全ていなす。その勢いのまま床を前転で移動し、まずは一人斬殺。
だが囲まれていることに変わりない。壁を背に、窮地に追い込まれる。片手を翳して正面の近衛兵を宙に拘束した。それを背に左周りに立て続けに二人斬殺。背後からの横一線をダッキングで避けて、振り返りながらさらに斬殺しようとした瞬間――近衛兵たちが全員後方に吹っ飛んで、壁に叩き付けられた。
「ッんだよ!せっかく遊んでたのに……」
山羊角の悪魔が愚痴ると、彼の背後にゆらゆらと半透明の輪郭が浮かび上がり、鳥の頭部に女性の裸体を持つ、歪な長身の天使が現れた。
『我が名はイクタァ……お前たち人間を制裁しに参った……』
脳内に直接響く、形而上の声。首脳の一人が、声を震わせながら叫んだ。
「ぅ、嘘だ!なぜ神が魔族に味方する!」
『私は全ての魔族に味方しているわけではない……クトゥルヒ人の大義に力を貸しているだけだ……罪を認め、首を差し出せ……』
「嘘だ嘘だ!神を名乗る偽物めっ!神が魔族に力を貸すはずがない!」
往生際の悪い叫びを、山羊角の悪魔は鼻で笑う。
「さっきから魔族、魔族って……魔族の意味、分かって使ってんのかよ。お前らも魔族の一種だぞ。なんで自分たちだけ特別だと思ってるんだ?」
「ふざけるなッ!人間が魔族なわけなかろう!それに、罪ってなんだ!人間がどんな罪を冒したというのだ!」
その反論に山羊角の悪魔は心底呆れた深い溜息を吐く。
「お前らの最大の罪は、己の罪に気づいていないこと……」
一斉に人間たちの首から上が木っ端微塵に炸裂した。
「傲慢……お前らのためにある言葉だな」
悪魔は、もはや喋ることもできない肉塊を見下ろし、冷たく吐き捨てた。




