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神々

~特別攻撃隊の紹介~


【レオンハルト】

辺境の小国、オルドヴィア王国の王子。魔王を討つため、特別攻撃隊を編成した。度が過ぎるほどの生真面目。


【グン】

レオンハルトに育てられたフェンリル(神獣の銀狼)の双子の兄。冷静沈着で自信家。


【カミロ】

騎士。故郷の村を魔族に蹂躙された過去を持つ。陽気で荒っぽい。


【ブリュー】

カミロに育てられたフェンリルの双子の弟。好奇心旺盛で無鉄砲。


【ルカ】

魔法使い。奴隷のように働かされていた採掘場から連れてこられた。温和で仲間思い。


挿絵(By みてみん)


翌朝、特別攻撃隊は小高い崖の上で腹ばいになり、獲物を待つ蜘蛛のように息を殺して潜んでいた。

眼下に広がる五万の魔王軍。その中心に座す幹部の姿に、レオンハルトとカミロは戦慄した。銀色の長髪を靡かせる老悪魔。彼が跨っているのは、魔族の獣ではない。聖油の匂いを撒き散らし、機械音を立てて駆動する――人類側の技術の結晶「自動歩兵機」だった。

魔族は既にこちらの技術を奪い、あまつさえそれを凌駕する兵器へと造り替えていたのだ。

殿の軍勢が見え始めた瞬間、レオンハルトが鋭い目配せを送った。

「――行けッ!」

一気に崖を駆け下りた二条の銀光。軍勢から一旦距離を取り、大外から回り込むように円を描いて加速する。

狙いは殿に位置するサイクロプス。

ドォォォォォン!

サイクロプスの巨大な頭部が宙を舞い、遅れて響き渡るソニックブームの轟音。ゴブリンの群れを押し潰しながらその巨体が瓦解した。

まずは一体。

一行は反対側の小山、崖の割れ目に滑り込み、敵の動向を窺う。

(さぁ……どうする?)

不意を突かれた敵軍は、盾を一斉に殿方向へと向けた。だが、次の瞬間には先鋒で轟音が鳴る。突如片脚を吹き飛ばされたサイクロプスがバランスを失って横に倒れ込む。

軍勢はパニックに陥った。盾は全方位へと向けられるが、意味を成さない。轟音が聞こえた時には、既に銀の影は地平の彼方だ。

時間はたっぷりある。レオンハルトは敵の緊張が解けぬよう、不規則に、かつ絶妙のタイミングで奇襲を繰り返した。

正午を周り、夕暮れを越え、戦場が夜闇に溶けてもその地獄は続いた。

全てのサイクロプスを無力化したところで、レオンハルトの矛が中心の自動歩兵機を捉える。

胴体を真っ二つに切り裂かれた機械は、内蔵された聖油に引火し、凄まじい大爆発を起こした。

業火が夜空を焦がし、魔族の兵士たちは恐怖に煽られ、蜘蛛の子を散らすように森の奥へと逃げ去っていく。

崖の上から、レオンハルトは激しく燃え盛る山火事を見つめていた。

勝利を確信したカミロがブリューから降りようとした、その時だった。

「待て! 」

王子の制止が響く。

炎の渦から、突如として人影が上空へと舞い上がった。銀髪の幹部を抱擁するその影には、炎を反射する半透明の巨大な翼があった。

(あんな奴、軍勢にはいなかったはず――)

そう思った瞬間、影が消えた。

違う! 鋭利な「何か」がレオンハルトの頭上を掠める。

グンとブリューが野生の勘で駆け出さなければ、首を飛ばされていただろう。

消えたのではない。奴もまた、音速を超えて飛来したのだ。

遅れて発生する大轟音。

夜の森を疾走する二条の銀光。それを追う半透明の一条の閃光。

(追いつかれる……いや、追い抜かれた!)

気づいた瞬間、四人の体は宙に浮いた状態で静止していた。強力な拘束魔法だ。

炎を背に滞空するその異形には、表情がなかった。目も鼻も口もない、陶器のように艷めく純白ののっぺらぼう。その者に抱きかかえられた老悪魔が、不気味に語りかけてきた。

「どうした……何を驚いている……お前たちだけだと思ったか?神の加護を受けているは……」

(……このままでは……やられる!)

とにかくこの拘束魔法をなんとかしなければならない。

「お前を抱いているそののっぺらぼうが、神だとでも言いたいのか?」

レオンハルトが時間を稼ぐために問い返す。老悪魔は不敵に笑った。

「大天使ニョグダ。名くらいは知っていよう。彼だけではない。イタクァ、ゾスシラ……そして神王アザトース! 神々は全員、我らの味方に付いたのだ。そこに居る汚い山犬以外はなあ!」

「ふざけるな。神が人間を見捨てただと……」

「まだ気づかぬか。これほど窮地に追い込まれ、なぜ神々が誰も救わぬのか。それが答えだ」

「あぁ……分かったよ。分かったから――」

次の瞬間、拘束が解けた! 遥か上空から、ルカが捨て身の魔法槍を放ったのだ。

落下するルカを、地面スレスレでグンの瞬発力とレオンハルトの腕力がキャッチする。

同時にカミロの矛先が、老悪魔の心臓を深々と突き刺した。

再び駆け出す銀色の閃光。だが、もはや余裕などない。

「退却だッ!」

レオンハルトの叫びにカミロも頷く。あの「のっぺらぼう」は次元が違う。

「ルカ、結束魔法を――」

返事がない。

血だ。ルカの腹部から、大量の鮮血が溢れ出していた。

いつ、どちらにやられたのか。そんなことはどうでもいい。

「ルカ……死ぬな! 耐えろ……!」

レオンハルトは意識を失いかけたルカを強く抱き締め、夜の闇を無我夢中で駆け抜けた。


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