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第7話 はじめての決勝!

 相手チームに、白人のどデカい人がいる!

 どこの国の人なんだろう? アメリカ人かな?

 どうしよう! 英語は苦手なんだけど!


 なんてことを考えていたら、谷口さんが「ハーイ!」ときさくに話しかける。

 すると、長身の外国人が「コニチハー」と返事。

 あれっ、日本語で大丈夫な人なのかな?

 谷口さんと外国人が一言二言、話をしていると、隣の日本人っぽい女性が話を始めて、英語、日本語がまざった会話になる。


「ねえねえ、大智さん。谷口さんって英語が話せるの?」

「うん、少し。中学のころ、ホームスティに行ってたりしてたから」

 いや少しってレベルには見えないんだけど。

 すると、谷口さんが驚いた表情になって、相手チームとの挨拶を済ませて戻ってきた。


「決勝の対戦相手、『東流山日本酒LOVE』ってチーム名なんだけど。

 あの背がものすごく高い外国の人が旦那さんで、ユハ・コルホネン(ユハ・タカハシ)さん。

 隣の奥さんが高橋颯さんって名前で、ご両親と東流山で酒店をやってるんだって。

 それで、ユハさんってフィンランド出身なんだって!」


 フィンランド! フィンランドって確かモルック発祥の地だよね!

 えーめっちゃ強そう! 東流山市にフィンランド人が住んでいるんだ……。


 いろいろ聞いてみたいけど、決勝戦が始まる時間になったので、試合を開始する。

 決勝戦は45分で1試合2セットやって、勝敗か合計点で争ったんだけど。

「東流山日本酒LOVE」チームが圧倒的に強くて、僕たちのチームとの力の差は歴然なものだった。2セットとも、僕たちのチームの惨敗で、試合はあっけなく終わってしまった。


 フィンランド人のユハさんの投げ方は、とにかく豪快。モルック棒を投げるスピードが早く、力強い。投げ方は雑に見えるのに、正確にスキットルのピンを倒しまくってた。

 一方、奥さんの颯さんは、とにかく確実に、正確にピンを倒し続けて、チームのブレーンっぽく、ユハさんやご両親に短時間で、どのピンを狙うべきかの指示を出す。

 ご両親は普通のレベルだったけど、それでも足を引っ張るプレーはまったくなく、かなり試合慣れした様子で、僕たちはまったく歯が立たなかった。

 正直、レベルが違いすぎて、終わった直後は悔しい気持ちにもならなかったぐらいだ。


 それで、決勝戦が終わり、優勝者の表彰が行われた後、ご夫婦に話しかけてみる。なぜ、フィンランドの人が東流山にいるんですか? いや、いたっていいんだけど。


「それは、まず『なぜユハが日本に来たか』なんだけど」と楓さん。

「よくある話で、彼が熱烈なアニメオタクだったの(笑)」


 ユハさんは子供の頃から日本のアニメが大好きで、東京の大学に留学したそうだ。楓さんもアニメが大好きで、秋葉原で行われて入り声優イベントなどによく通ってて、ユハさんと知り合いになったそうだ。


「ユハは大きいから目立ってて。ライブとかで前にいると『邪魔だなー』と、思ってたんだけど。日本語が不自由だったから、よくイベント会場で困っていて、それを助けてあげたの。

 それで日本での就活も手伝ってたら、就職が決まったタイミングで告白されて(笑)」


 ユハさんは、大学卒業後はアニメのグッズをつくる会社に就職して、そのグッズの輸出なんかを担当していたそうなんだけど。

 今でもカタコトの日本語なんだけど、言語の壁をアニメが好きな気持ちで乗り越えたらしい。

 長い交際を経て国際結婚して、楓さんの実家がある東流山に移り住んだらしい。東流山から秋葉原までは、電車で一本で行けるしね。


 その後、楓さんの実家が酒屋さんだったこともあって、ユハさんがアニメに負けないぐらい日本酒にどハマりして、ついには楓さんのご両親のお店を継ぐことになり、会社を辞めてお店を継いで「日本酒専門店」にしちゃったそうだ。


 楓さんはファミリー層が多い東流山で日本酒専門店なんて開いて大丈夫かな? と心配だったらしい。

 でも、外国人が好きそうな日本酒をそろえて、元の会社のコネでアニメやゲームのグッズも取り扱って、日本酒好きのアニメオタクの外国人店主がいる、変わったお店として話題らしい。


 隣の市にあるお店なのに、全然知らなかった!

 最近は、秋葉原経由でわざわざお店に訪れる外国人観光客もいて、結構賑わっているらしい。

 ちなみにチームTシャツは「獺祭」という日本酒のお酒のものだった。黒地に白い漢字でかっこいいTシャツだな!


 それで、フィンランド出身だからモルック大会に参加しているんだと思ったんだけど。モルックにハマっているのは、むしろ奥さんとご両親のほうで。

 ユハさんの話だと、フィンランドではモルックは遊び。サウナに入って、ビールを飲みながら家族や友人と楽しむものらしい。

 でも、日本ではモルックはスポーツとして見られていて大会が盛んだ。だから原則、飲酒は禁止。


 ユハさんは、「日本なんだから、サケ(日本酒)を味わいながらモルックを楽しみたい」そうだ。

 大会では無理なので、お店の近くの駐車場などで近所の人と飲みながらモルックをやっているらしい(笑)。

 今度参加しないかと誘われたけど、僕たちまだ未成年なんで、そういうお話はもっと大人になってからお願いします……。


 でも、そのかわりじゃないけど……。

「あの、僕たちに、モルックを教えてもらえませんか」

とコーチをしてもらえないかと、二人にお願いしてみる。

 今日の大会はとても楽しかっただけど、もっと真剣な試合、白熱した、ヒリヒリした勝負ができそうな気がする。

 近所の人とワイワイやってるのも楽しいだろうけど、もっとトレーニングして強いチームと全力で戦ってみたい!

 どうも、僕の心に火が着いたようだ。


「そうねぇ。私たちの時間がある時だったらかまわないけど、あなたたち全員?」

と楓さん。

 確かに! 先走ってたと、後ろを振り返り3人を見る。

 3人とも、真剣な顔で大きくうなずく。

 想いは一緒だ!

「先生、よろしくお願いします!」


 それで、楓さんと連絡先を交換して、お店に練習しに行くことにした。

 ユハさん楓さん夫婦にコーチングを受けるだけじゃなく、自分たちでも、もっとモルックについて詳しくなろう。それぞれで、いろいろと調べて報告することにした。


 こうして、はじめて参加したモルック大会が終わった。

 疲れたー! 楽しかったけど!

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